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JAET上越大会報告

全教室に電子情報ボード「教師」「児童」双方で活用―春日小学校
学校独自整備でICT活用を模索―上越教育大付属小学校
上越市の成果は推進体制から

全教室に電子情報ボード「教師」「児童」双方で活用 【春日小学校】

 上越市立春日小学校は、児童数が市内で2番目に多い大規模校だ。研究テーマは「自分を見つめ、豊かにかかわり合う子どもの育成」で、11の授業が公開された。同校では昨年度末に全教室に電子情報ボードが常設され、その活用方法を検証中だ。

デジタル教材
▲ 教科書を大きく提示することで
共通理解が進む(国語)
デジタル教材

▲ 「町のすてき」に
ついて発表しあう

■国語科
 1年1組では国語の授業「こえにだしてよもう『くじらぐも』」が行われた。授業者は堀川邦夫教諭。
 本時では、「国語デジタル教科書」(光村図書)を教室常設の電子情報ボード上に提示して授業が展開された。
 「くじらがどんな声をかけたのか」、「くじらぐもが行った場所はどこか」などについて教科書に線を引かせ、どこに線を引いたのかについて発表し合う。教室前方に大きく教科書画面が提示されているので、スムーズに共通理解が進む。
 教科書内容を読み取った後は、くじらぐもに乗った子どもたちがどんな会話をしたのか、自分がくじらぐもに乗ったらどんな気持ちがするかなどについて想像、どうしてそのように想像したのか教科書から根拠を示させた。
 子どもたちが考えた内容は電子情報ボードに記入し、共有、想像を膨らませていく授業が展開された。

■生活科
 2年2組の生活科の授業では「春日だい好き町探検パート2」が行われた。授業者は上原希教諭。
この授業では、自分たちが暮らす町を探検し、調べた内容を整理し、表現を工夫しながら分かりやすく伝え合う活動が展開された。
 探検で見つけた「町のすてき」を、それぞれのグループが考えた方法で伝え合う試みで、クイズ、かるたなどを使い発表するグループや、電子情報ボードを活用し写真を提示しながら発表するグループも見られた。

デジタル教材
▲ 「流れる水の動き」について
仮説を発表する(理科)
デジタル教材

▲ KBを用いて互いの
考えを共有し合う(総合)

■理 科

 5年1組の理科の授業「流れる水のはたらき」は理科室で行われた。授業者は黒田隆夫教諭。
授業では、「水が曲がっているところの内側と外側で地面がどのように変化するのか」について、電子情報ボードを利用して、子どもたちは前時までに考えた仮説を発表した。
流水実験器は、防水ビデオカメラを設置し、水中の様子を観察できるようになっている。電子情報ボードで実験の様子を映像で確認し、視覚的な理解を促した。次の時間には、実際の川へ観察に行き、実際に観察を行う。

■総合科
 図書室で行われた6年1組の総合的な学習は「あなたにとって『謙信公スピリット』とは?」。授業者は、樋口英樹教諭。
 一人ひとりの子どもの学びをKneadingBoard(以下、KB※)上で共有することで、子どもたちがこれまで交流した人々の生き方について理解を深め、今後の生活に活かしたいことを整理することが目的だ。
KB上にはこれまでに交流した人から自分は何を学んだのかを前時までにキーワードにして整理してあり、そのキーワードをグループ毎にPC上に書き込んでいく。疑問に感じたことや、新たに思い浮かんだことを子どもたちは次々にKB上に付け加えていくことにより、個々の学習では思い浮かばなかった新たな学びの視点に気付くことが狙いだ。
 KBを活用することにより、大きな模造紙に数人が一緒に書き込むような環境が実現でき、お互いの文章の内容が影響しあい、相互作用や気付きが起こる授業が展開された。

 

※KneadingBoard=独立行政法人メディア教育開発センターが開発した協働学習支援ソフト。KBにログインすると、書き込み情報に至るまで、お互いの様子を把握することができる。 http://kb.code.ouj.ac.jp/


学校独自整備でICT活用を模索―上越教育大付属小学校

 上越教育大学附属小学校の研究テーマは「学習内容と深くかかわるためのICT活用の工夫」。教科や単元の目標を明確にし、その目標を達成するための手立てとしてICTを活用する。今年度は算数科・外国語活動を中心にしながらICT活用を図っている。附属小学校という性質上、その整備は上越市の一斉整備には入っておらず学校独自の整備内容となっている。

デジタル教材
▲ 書画カメラで提示したブロックに
書き込んで説明(算数)
デジタル教材

▲ 23個のみかんを提示、袋に分けることで
割り算を学ぶ(算数)

■算数
 3年生の算数の授業「数のミカタ‐割り算」が公開された。授業者は、磯野正人教諭。
 本時では、余りのある割り算について電子情報ボードや書画カメラ、デジタル教科書(学校図書)や「スクールプレゼンター」(内田洋行)を活用した授業が展開された。
 磯野教諭は、子どもたちが「20÷4=5」という式を導き出せるよう書画カメラに4×5のブロックを書いた教材を提示。4で割るとどうなるかについて子どもたちに発表させた。
 次に、電子情報ボードに23個のみかんを提示。それを見た子どもたちは「23÷1」と「23÷23」の式しか成立しない、と発表する。それを受け、磯野教諭は「4つずつ袋に分けるとどうなるか」と質問する。子どもたちは「5つに分けられるけれど余りが出る」などと答え、それを式に表現していく。デジタル教材を電子情報ボード上で動かしながら、考え方を学んでいく授業が展開された。

■外国語
5年生の外国語の授業では、「世界を旅しよう!」が公開された。授業者は北原さやか教諭。
テレビ会議システムSkypeでオーストラリアのウェストミンスタースクールとつなぎ、コミュニケーションを図る。オーストラリアの子どもたちは日本地図を見せ、上越がどこにあるかを示すなど、リアルタイムでのやりとりを進めることで、外国語活動の楽しさを体感する。

デジタル教材
▲ ゲーム活動で、今学んだ表現を
楽しく使う活動を展開できる。

  次に、電子情報ボードを用い、「世界を旅しよう!ゲーム」を行った。これは、デジタル教材「わくわく英語タイム」(光村図書)に収録されているゲーム活動だ。世界の都市や方角、数字の英語表現を学んだ児童らは、それらの表現を用いた英文を聞きながら世界の目的地にたどり着く。リオデジャネイロやニューヨーク、モスクワ、バンクーバーなど様々な目的地が設定されており、子どもたちは今学んだ英語表現を使う活動を無理なく展開できる。ゴールにたどり着いた子どもたちからは喜びの声が上がった。

 

 

 


上越市の成果は推進体制から

 上越市では、教員のICT活用指導力は小中学校においてすべての分野で全国平均を上回っている。その理由は、ICT環境や推進体制にある。

■上越市の普通教室
 電子情報ボードは、中学校は移動式で各校1〜2台、小学校は6年生の教室全てにスライド式で設置。黒板上のどこででも活用できる環境だ。
 地デジ放送については、各校に1台ずつブルーレイレコーダーとハイビジョンビデオ再生PCで対応している。

■コンピュータ教室
第1コンピュータ室では、情報リテラシー教育や情報スキルトレーニングを意識した形態。第2コンピュータ室では、協働教育など様々な学習活用を意識したレイアウトになっている。

■ICT支援員
 上越市で「学習情報指導員」と呼ばれているICT支援員は、市立の小中学校、幼稚園を巡回訪問している。現在は嘱託職員として直接雇用しており、継続は最大5年までで、処遇は月13万3500円だ。
 ICTを活用した授業サポートやICTを活用した授業のための準備のサポート、校内環境整備の補助的サポートにあたっている。
 支援員の日報内容はNPO法人学習支援センター長が共有、適宜指導や助言を行っており、4月には集中的に育成トレーニングを実施している。

■上越市の校務支援
 「先生の心と時間を子どもたちに返す」ことを目標に定め、学校事務の負担軽減と本来あるべき授業の姿を追求したカリキュラム作成に取り組んでいる。
 学校、市教委、大学、NPO法人、地域など、学校教育に関わるすべてのスタッフをネットワーク化、情報を蓄積・共有し、モチベーション向上につなげる。
 校務支援システムでは、行政系、校務系、学習系、情報管理系を整理して情報を共有する。
 今後は義務教育9年間を通して見守ることができるようにし、指導の継続性の向上を目指す。

■ICT研修
 平成21年度実績では、悉皆研修として「情報セキュリティ及び情報化研修会」、「情報教育担当研修会」を実施。希望者に「教育支援システム基本操作研修会」、「学習者情報データベース・成績管理システム」基本操作研修会、電子情報ボード活用研修会を実施している。
 このほか、機器更新時に担当指導主事が訪問して全職員にICT活用支援研修を実施した。

【2010年12月4日号】


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