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私立小学校校務情報化【宝仙学園小学校】

独自評価にも柔軟に対応

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佐藤圓教諭

  各自治体で校務支援システム導入の検討が進んでいる。カシオ計算機は昨年秋に校務支援システム「幸曜日(こよみ)」の発売を開始、全国で導入が進んでいる。私立学校の宝仙学園小学校は、本年度から校務支援システム「幸曜日」を活用している。同校の情報教育主任である佐藤教諭に、導入の経緯と使い勝手について聞いた。

  宝仙学園小学校は、高い学力と豊かな情操を目指し、各教科の授業時間数は新学習指導要領の時間数を超える数を確保している。

自由度高い使い勝手

  「特別国語」「理科工作」など独自教科を設けるほか、生活科は公立の約4割増、音楽や図工の時間数も公立学校より多く、中学校受験を目標にした補習にも力を入れている。高学年は全教科が専科教員で、テストの回数も小学生としては多い。そのため、成績処理には時間がかかり、かつ教員の時間の確保も課題となっていた。

  既に校務用PCは全教員分配備されており、成績処理等は主にエクセルを使っていたが、課題はセキュリティにあった。成績データはUSBメモリ上で扱い、USBメモリは金庫で保管するという方式でセキュリティを物理的に確保していたが、成績処理の度にUSBメモリを金庫から出し入れする手間を軽減したいという教員の声が強かった。

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出席簿から成績処理、指導要録
まで一貫して管理できる
小テストごとに傾科立を設定できる

  宝仙学園中学高等学校では既に校務支援システムを導入していたこともあり、小学校においても成績処理から通知表の電子化まで安全かつ効率的に進めることができる統合的な校務支援システム導入を予定していた。

  そこで同小学校情報教育主任である佐藤圓教諭は、学校用の校務支援システムや成績処理システムを昨年7月から検討、いくつかの検討事項をクリアして昨年度末に導入されたのが、「幸曜日」だ。

5段階・9段階 評価混在も対応

  導入の際、第一にクリアしなければならなかった点は、宝仙学園小学校独自の評価方法だった。

  同校では、1年生から3年生までは3段階評価だが、さらにそれぞれに○と△をつけ、「C、C○、B△、B、B○、A△、A」と最終的に7段階評価となる。4年生以上は5段階評価でやはり○と△がつき、最終的に9段階評価となる。

  この独特のシステムに対応できる校務支援ソフトは少なく、あったとしてもカスタマイズ料金が膨大となった。そこをクリアしたのが「幸曜日」と、成績処理に特化したシステムの2社。結果「幸曜日」導入に至った理由は、「本校の要望に対するきめ細かい対応と、相応の金額、使い勝手の自由度の高さ、将来的な発展性」であった。「幸曜日」ならば、基本的なグループウェア機能はもちろん、出席から指導要録印刷まで対応しており、さらに将来的に子どもの健康情報などとの連携も可能になる。

子どもの健康情報と連携も 教員のスキルに応じて活用方法を調整できる

傾斜配点にも対応できる

  「融通のきくシステム」である点も評価された。

  「幸曜日」では、データによる機械的な成績処理だけではなく、子どもの日常の様子を見て微妙な変更ができる。テスト結果の傾斜配点が自由にできる点も使いやすいという。

  「漢字テスト、読解テスト、復習テストなど、学年や科目によって様々な小テストを実施しています。満点も、統一されているわけではありません。それをテストの重要度にしたがって、例えばあるテストは1・5倍に、復習テストは0・3倍にするなど、各教員の評価方法を反映しやすくなっています」と述べる。

教員スキルに合わせて導入

  全員一斉に同じスタンスで活用するのではなく、教員のスキルにあわせた使い方ができる点も良かったという。

  ログイン方法は、職員一覧から選んでパスワードを入れる方法、職員番号とパスワードを直接入力する方法がある。
成績の入力は、「幸曜日」に直接入力することも、エクセル入力したものを流しこむこともできる。

  出欠記録に関しては、毎日入力、一週間ごとに入力、一か月ごとに入力など、選ぶことができる。

  「毎日入力するほうが最終的には手間の軽減になるのかもしれませんが、現在の仕事の流れを大きく変えず、慣れない人にも使いやすいという点を重視し、導入期は1か月に1回の入力から始める予定」と言う。

職員室からは 導入に期待の声

  通知表の電子化については、既に4年前から実施しており、新しい校務支援システムへの移行についても特に反対の声はなかった。以前の独自システムは通知表のみであったが、「幸曜日」は、指導要録まで一貫してできる点で、導入に期待する声が多かった。

  一般にICTシステムや機器の導入や活用について、最も効率的・効果的な活用方法は、導入期において教員の負担になる場合がある。慣れるに従って、教員ニーズが出てから変更を加えていくことができるシステム導入が、短期間・かつ円滑な導入の秘訣といえそうだ。

【2011年6月6日号】


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