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教育マルチメディア

New Education Expo 2011 報告
今日的な課題を解決する

授業計画がICTの活用効果を左右する

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来場者数はのべ7,800名と過去最高

 「New Education Expo 2011」が6月2日〜4日に東京会場で、6月15・16日に大阪会場で開催された。「未来の教育を考える」をテーマに教育関係者に向けて開催される同イベントは今年で16回目。来場者数は東京会場のべ4800名、大阪会場3000名と過去最高に上った。東京会場の開催中は札幌と福岡にサテライト会場が設けられ、セミナーの映像と音声の中継上映も行った。6月3・4日は、日本マイクロソフトが協賛する「Japan Innovative Education Forum 2011」と同時開催。

校務の情報化と教育クラウド

Web会議で遠隔授業

クラウド化で情報基板システムが変わる データを分析・活用できる人材が必要

学習者用PCの授業活用

普通教室でのICT活用


教員一人1台PC環境をもっと活用する 校務の情報化と教育クラウド

鳴門教育大学大学院准教授 藤村裕一 氏

  藤村氏は「多くの学校、教育委員会が、校務の情報化を必要であると考えており、その必要性は既に十分認識されている。次の課題は、円滑な活用のための導入」と指摘する。導入の際、第一に必要なことは、「ビジョンの策定」だ。
「ビジョンや専門知識がないままの校務情報化の検討はとても危険。なぜ校務の情報化が必要なのか、根本に立ち返り、国とその関連団体の最新動向を参考にそのあり方を考えなければならない。今あるものを電子化するだけの校務支援体制では駄目」。

  ビジョンとは、何を実現したいのかを考えることだ。これについて、現在校務支援システムに求められる役割のパラダイムシフトが起きている、と指摘する。旧来の校務情報化支援のあり方を白紙撤回し、現在の課題を解決するものであることが重要だ。では、今後、校務の情報化支援システムの満たすべき条件と、進める際の検討課題は何か。

目的は「効率化」から 高機密・高信頼性へ

  これまで、第一の導入目的は「校務の効率化」による「教員の時間の確保」であった。今後は「高機密・高信頼性」、「高付加価値」が求められる、と指摘する。

  「東日本大震災では、各校の書類や指導要録の入った耐火金庫、校務用PCや学校サーバも流失した。今後は災害対応を視野に入れ、ea教育クラウド等データセンター運用型が望まれている。校務用PC1人1台配備に伴って校務情報化支援システムの導入が加速し、指導要録等原本の完全電子化が進むことを考えると、高度な情報セキュリティと卒業後20年間の保存に耐える信頼性、教育情報データの標準化、テレワーク業務が可能な安全確保が必要。小規模市町村でも可能な導入形態も望まれている」。

  文部科学省調査によると、平成22年3月時点で超高速インターネット接続は65・5%。今後、教育クラウドによる校務支援システムを利用するためには、超高速インターネットの敷設が必要だ。

海外の校務情報化

  イギリスでは、学校単位での校務情報化が進んでいたが、2011年3月にクラウド型の導入が始まっている。

  韓国では、トップダウンで校務の情報化が進んでいる。全国教育行政情報システム(NEIS)が整備され、KERISを通して集中的に管理運営している。教育委員会には大規模データセンターが設置され、ヘルプデスクも30名程度教育委員会に常駐している。

日本の政策でも クラウド化を推進

  IT戦略本部で平成22年5月11日発表した「新たな情報通信技術戦略」では、2020年までに「すべての学校に校務支援システムを普及する」こと、「クラウドコンピューティング技術の活用も視野に入れた教職員負担の軽減に資する校務支援システムの普及」、韓国の事例も参考にした「全国ベースの管理運営体制の可能性の検討」を具体的取り組みとして挙げている。

  また、4月に公表された「教育の情報化ビジョン」では、全国すべての学校への普及に向け、管理職は「校務の情報化を学校経営の中核」として位置付けること、「市区町村等の開発部局、保護者、地域住民間でその意義を共有」し、「必要な教育情報の項目やデータ形式等の標準化を推進」することが重要であり、「校務の情報化に関して、クラウドコンピューティング技術を活用することは、時間と費用の削減、学校や設置者の管理運営の負担軽減、データの安全な保管、大量のデータの活用や共有等が可能となる等のメリットがある」と指摘している。クラウドを享受するためには「ネットワークのセキュリティの確保やサービス提供事業者の事業の継続可能性」が課題であり、中長期的には、「全国ベースの総合的な校務の管理運営体制の構築の可能性も含めた検討」が必要だ。

校務の情報化 今後の推進方策

  これらの政策的な方向について藤村氏は「今後、学校や教育センターの脆弱なサーバーは、自然災害や火災・停電対策、定期的なバックアップなどの体制が整備されたデータセンターへの移行が必要。設置・運用コスト削減のためにも、クラウド化技術を活用したい。教育委員会でデータセンターを整備する際、民間事業者への委託を安心して推進できるガイドラインが重要。2020年までには携帯端末の活用と、家庭端末との連携も視野に入れるべき」という。

  APPLIC(全国地域情報化推進協会)のアプリケーション委員会教育ワーキングでは、指導要録等の原本完全電子化方針を打ち出し、指導要録や健康診断票、在学証明書、入学通知書、教科用図書給与証明書などの教育情報データ連携標準に取り組んでおり、平成23年3月に「教育クラウド整備ガイドブックVer.0・1」を発表している。


Web会議で遠隔授業

「メディアリテラシー」テーマに

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Web会議システムで遠隔授業を行った

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美加の台小学校の教室のようす
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教室で実際に見えている画面

  遠隔会議システムが飛躍的に進化した。リアルタイムでスムーズにやりとりができるようになり、セッティングも手軽になった。東京会場NEE当日は、大阪府河内長野市に導入されているWeb会議システムを活用し、市内の学校と会場をつないだ遠隔授業の様子が公開された。授業を受けるのは、河内長野市立美加の台小学校の5年生。授業は「メディアリテラシーを身につける」がテーマ。

  東京NEE会場の宮本洋介首席教諭(河内長野市立高向小学校)はWeb会議を使って河内長野市立美加の台小学校5年生に授業を行った。会場には、子どもたちが学校で見ている画面と教室の様子が映された(写真)。

  この日の授業は、大阪をテーマに取り上げたテレビ番組「ひみつのケンミンショー」を視聴し、「テレビで放映された大阪のイメージと実際の大阪の違い」について考えることをきっかけに、メディアの特性について知るという内容だ。

  Web会議画面には、事前に行われた「大阪のイメージ」が正しいか否かについてのアンケート結果が表示された。宮本教諭が操作する資料や書き込みはリアルタイムに美加の台小の教室に投影される。授業者のファイルを投影しながらやり取りできるのがWeb会議の特長だ。

  宮本教諭は子どもたちとのやりとりの中で、各自が持つ大阪のイメージとテレビで放映されたイメージとの違いについて具体的に検証していった。子どもたちへの質問や、子どもたちの発言、発表する場面でも音声や画像に遅延はなく、やりとりはスムーズだ。教室にいる子どもたちの詳細な様子については、美加の台小学校の田中誠治教諭がフォローした。

環境を活かす 授業の創造を

  河内長野市では、平成14年より教育メディアセンターを設置し、学校の授業支援やグローバルコミュニケーションなどの国際交流に力を入れている。平成21年度のスクール・ニューディール政策によって、校内LANや全普通教室への天吊りプロジェクター、電子黒板配備などが実現している。また、昨年度よりWeb会議を利用して市内の人材を有効に活用し、教員の指導力を上げる試みにも取り組んでいる。

  河内長野市立教育メディアセンター主任研究員である梅田昌二教諭は、「河内長野では10年前からテレビ会議やWeb会議を活用している。当時と比較すると遅延も切断もなく、多くの情報量を長時間にわたってスムーズに安定してやり取りすることができるようになり、実用的なものになった。この環境を生かす授業の創造が求められている。海外交流を通した外国語活動も含め、Web会議の活用によって学校が抱える様々な課題解決の可能性をさらに検証したい。環境が整ってもそれを活用しなくては意味がない」と述べた。


クラウド化で情報基盤システムが変わる データを分析・活用できる人材が必要

東京大学大学院情報学環 須藤修教授

IT投資60%削減 処理能力が速く安全

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  東日本大震災における被害を受け、クラウド化ニーズが高まっている。クラウドコンピューティングとは何か。クラウドを基盤にした情報基盤でシステムはどう変わり、これからの教育の在り方はどうあるべきなのか。総務省「電子自治体の推進に関する懇談会」座長を務めた須藤教授(東京大学大学院情報学環)が講演した。

  クラウドコンピューティングとは、データサービスやソフトウェアなどを、ネットワークを介して地球上のどこかにあるデータセンターのサーバ群にアクセスし、利用者は自分の利用したいソフトやデータがどこにあるかを意識することなくどこからでも必要な時に利用できるというシステムだ。代表的なものに、GoogleやAmazon等のサービスがある。iPhoneに搭載された様々な機能は、クラウドコンピューティングによって実現されているといえる。

  ソフト不要、使用料のみで利用できることから、IT投資に関して60%のコスト削減につながると言われている。

  クラウドは大きく、「パブリック・クラウド」、「コミュニティ・クラウド」、「プライベート・クラウド」、「ハイブリッド・クラウド」に分けられる。制御ソフトであるミドルウェアを最も多く作っているのがアメリカ合衆国だ。日本には少なくこの点で競争力が不足しているといえる。これは、日本のクラウド化が遅れているために利益が出にくいという構造からきている。

  このうち自治体などの利用を想定できるものが「コミュニティ・クラウド」だ。クラウド化することで巨大なデータセンターを利用できるため、処理能力は速く、安全性も高まる。高速データ処理が可能で安全な場所にあり、空調も完備され、CO2の排出量も最低限であるデータセンターの利用には、大きなメリットがある。

  サンフランシスコでは住民の苦情を整理、可視化してクラウド化における予算を要求した。今後は日本でもそうあるべきだ。

  クラウド化が進むことによる大きな変化は、データ共有が簡単になること。今後ビジネスを発展させるためには、コンピュータそのものの開発以上に、膨大なデータを分析、提供できる仕組みが必要になる。

  いまや最先端の論文を書くには、コンピュータサイエンスによる分析は必須。今後は、数学の好き嫌いで文系、理系にカテゴリ分けする方式では世界に立ち遅れる。

  現在、研究室の学生は、各世帯の家計費分析に取り組んでいる。このデータは、医療や健康診断などのサービスに活用することができる。これらのデータ処理には高速演算能力を持つスーパーコンピュータが必要だ。事業仕分の際、蓮舫議員がスーパーコンピュータの開発費について「一番じゃなければ駄目なのか」と質問したことは有名だが、スーパーコンピュータなどの機械は、借りることもできる。

  しかしデータを分析し、コンピュータやネットワーク、データを使って何をサービスするかについて考えるのは人材であり、これは借りることはできないもの。この人材が今の日本で圧倒的に不足している。データを分析し、活用できる人材の育成が急務といえる。


学習者用PCの授業活用

思考力・表現力育む 授業計画を支援する

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和歌山県では昨年度から放送大学やインテル(株)と共同で公立小学校における21世紀型スキルの育成を踏まえた「思考力・表現力の育成につながる情報端末1人1台の活用」をテーマに研究事業に取り組んでいる。その経過報告と有効性について報告した。

児童の学び合い・教え合いを支援するツールとして活用を

  本プロジェクトでは、和歌山県山間部のへき地校で思考支援とコミュニケーション支援を実現する授業や基礎学習に取り組んだ。児童生徒の活用を促進するには支援体制や教員研修が必要なことから、対象校全校に指導担当を1人配置、ICT支援員はリモート操作できる環境とした。学習者用情報端末(以下、学習者用PC)として活用したのは、子ども向けにインテルが開発した低価格PC「クラスメイトPC」。対象校は、那智勝浦町立色川小学校、有田川町立修理川小学校、有田川町立西ケ峯小学校、北山村立北山小学校。

思考過程を共有 考えを深める

  同プロジェクトに参加していた本岡朋教諭は、本年度から和歌山市立藤戸台小学校に勤務しており、前任校から現在までの実践を発表した。

  同校は新設校で、全教員及び全5、6年生児童に1人1台のタブレットPC、全教室に52インチの液晶デジタルテレビ、電子黒板、実物投影機3台、デジタルカメラ、デジタルビデオ等を整備。タブレットPCは「考えを共有し深める」新しいツールとして活用した。

  国語科の授業では、他者の思考プロセスが良く分かるように学習者用PC上で「共有ノート」(Microsoft OneNoteを利用)として活用。これにより他の児童との考えがより明確になり、子ども自身の考えや疑問が明確化・深化したという。本岡教諭は、「共有ノートを通じ、子ども一人ひとりの思考のプロセスが見えるようになった。普段発言の少ない児童も自由に意見を書き込むことができる。学習者用PCは『考える』『考えをまとめる』一助として活用する道具として位置付け、考えがまとまらない、うまく伝えられないという段階の子どもに対しても、考えのプロセスを可視化できることなどから、有効なツールとなる。教師にとっても良い影響があった。電子黒板等の活用でも子どもに『見せたい資料』をより厳選・吟味するようになった」と話す。

  中井章博氏(和歌山県教育庁学校教育局学校指導課 指導主事)は、「指導担当である大学教員による訪問指導や模擬授業、ICT活用研修や思考力を高める授業づくりの研修の実施、協働学習の事例を共有することにも取り組んでいる。思考力や表現力を高める授業改善は一朝一夕には難しい。思考支援型授業を意識した新しい教材の活用なども有効」と述べた。

  今後の課題もある。教員が真っ先に挙げるデメリットは、機器トラブルへの対応だ。それについて和歌山市では、ヘルプデスクを設置、リモートアクセスでトラブルに対応している。

学習者用PCの 多様な可能性

  中橋雄教授(武蔵大学)は、「学習者用PCには教材利用、ドリル学習、映像記録、コラボレーションほか様々な活用法があるが、それだけに、21世紀型スキルや新学習指導要領を踏まえ、どのように思考力・表現力などを育むのか、学力観・授業観についての議論が重要」と述べ、「学習者用PCは、個に応じた学習のツールとしてだけでなく、社会的相互作用を促す協働学習をサポート・実現するツールとして活用できるという共通認識を持つべき」と強調。思考共有型につながる実践事例を紹介・分析した。

  和歌山県北山村立北山小学校では、わり算の学習に「クラスメイトPC」とドリル学習用ソフトを活用。児童は、自動採点機能によって個別に学習を進める。教師は適宜、机間指導を行い、つまずいている児童を個別にフォローしていた。
愛知県岡崎市立羽根小学校では、6年生理科「水溶液の性質」の単元で「思考共有型学習」を展開。実験の予想を「クラスメイトPC」に記入、ネットワーク経由で電子黒板に転送。ほかにもグループごとの実験を記録した動画を転送、全体で共有した。

  和歌市立有功東小学校では、校区の環境問題を携帯端末のカメラ機能で記録、電子ペンでメモを書き込むとともにネットワークで共有、グループでの協働作業を通じてデジタルマップを制作した。

  新しいツールをスムーズに授業活用するためには、ステップを踏む必要がある。最初のステップとして個別学習から始め、次第に子ども同士が関わり合う授業へと展開。協働学習については、具体的なイメージを教員間で共有するために、授業の見せ合いや事例を共有する必要がある。

  山本朋弘氏(熊本県教育庁教育政策課指導主事)は、「思考力・表現力の育成、21世紀型スキルなど、これまでの学力観に変化が起きている。新しい学力観の中で、1人1台の学習者用PCをどのように生かしていくかが重要。その活用を広げるためのポイントは、まず子どもからスタートし、学習の楽しさを体感させること。そこから学び合い・教え合いの中で対話が生まれ、学校外・海外との交流授業にも発展していく」と述べた。


普通教室でのICT活用

佐野市教育委員会・谷直人副主幹 ―研究指定校や調査研究は継続する

  佐野市は小学校28校、中学校12校(うち県立1、私立1)、高校7校(うち県立4、私立3)の全47校の小中高等学校がある。同市の平成23年度3月時点でのICT環境の整備状況は、校務用PC整備率112%、超高速インターネット接続率100%、電子黒板136台(70人/台)。ここに至るまでの経緯が報告された。

  同市では平成18年から普通教室でのICT活用において調査研究に取り組んでおり、電子黒板(IWB)の利活用について検証を進めていた。写真や図表、身近な教材を大きく提示できること、インターネットを活用できることなどによる教育効果は見られたものの、準備に時間がかかる、ICT機材の移動が大変、提示装置が高価であるなどの課題があった。これらの成果を踏まえ平成20年度、3小学校に各1台電子黒板(一体型)を設置(リサイクル物件)。教科書準拠のフラッシュ型コンテンツや実物投影機の活用と共に一体型のメリットを検証。準備時間が短縮されるなど一定の成果が上がったという。

  そこで平成21年度文部科学省「電子黒板を活用した教育に関する調査研究事業」に応募。電子黒板をモデル校である界小学校に導入し、その利用頻度と活動内容に関する調査を毎月実施した。実践記録シートも提出。3か月間の実践で事例は450にも上った。

  モデル校では活用促進のために、スキルアップのためのプチ研修会やWeb活用による情報共有、D‐BOOKを活用しての教科書のデジタル化などを進めた。

  さらに平成22年度のスクール・ニューディールにおいて校務用サーバや校務支援システム(グループウェア機能、指導要録作成機能)、セキュリティ対応USBメモリ、スキャナカメラ付き電子黒板110台(地デジ対応)、児童用タブレットPC(小学校のみ)、全小学校にデジタル教科書(国・算・地図帳)、教育用サーバなどを整備した。

  谷氏は、同市のICT活用及び導入成功の理由として、研究指定の継続により、メリット・デメリットの検証やミドルリーダーの育成が可能になったこと、研修会の継続的な開催やタブレットPCや校務支援システムなどを中心とした課題解決に向けた調査研究の実施を挙げた。

甲府市立舞鶴小・齊藤宗市教諭 ―デジタル教材は各校で選択する

 甲府市ではスクール・ニューディールによって電子黒板や校務用PCなど情報教育環境が画期的に進歩したという。教育用コンテンツについては、デジタルコンテンツ配信システム「EduMall」を導入。予算に制約はあるものの、学校毎に自由に選択できるようになった。現在は、学校で選択したソフトを実際の授業で活用する方法について研究に取り組んでいるという。

  齊藤教諭によると、「電子黒板は学校に1台あるが、階をまたいでの移動が大変なことから、活用頻度が高いとは言えない。普通教室でのICT機器の活用を考えると瞬時に使える環境を整える事が大切」と話す。そこで大型デジタルテレビをPCと接続した環境を整備し、各教室での活用が始まっている。電子黒板の代わりに液晶タブレットやワイヤレスマウスを活用する方法も試行している。

  デジタル教材を「EduMall」で活用する点については、新しいコンテンツをいつでも安価にインストール不要で活用できる点をメリットとして挙げた。

  甲府市では各小中学校年間15万円の予算が認められており、前年度末に情報教育主任を中心に使用コンテンツを選定、学校長が決定する。現在舞鶴小で活用しているのは、「わかる!算数パック」、「国語デジタル教科書」、「電子黒板&プロジェクター小学理科」、「ミラクルネット小学算数」など。

 「わかる!算数パック」はPC教室で使う。ストーリー立てになっており、単元毎の振り返りがあるなど、比較的個別学習向きであるという。

  また、「国語デジタル教科書」については、教科書と同じレイアウトを電子黒板上に拡大表示でき、視覚的に大変わかりやすく、新出漢字の書き順表示(アニメーション)は一斉授業時に正確に指導できるなど導入メリットが大きいと述べた。

  これらの成果と課題について、「テレビやデジタルコンテンツを活用することで児童の興味関心を高めることができ、学習内容を、よりわかりやすく伝えることができるようになった。デジタル教材は、従来の教材準備にかけた時間を考えると手軽に準備ができ、その学習効果も大きい。教材が指導者の意図に適合しない場合は『dbook』を活用しデジタル教材の自作も進めている」という。これらを授業のどのような場面で使えば効果的に活用できるのかを考えていくことが次の課題であると述べた。

上三川町立明治小学校 鷺嶋優一教諭 ―デジタル教材は 活用場面により 効果が変わる

  同校の鷺嶋優一教諭は、6年理科「ものが燃えるとき」と「植物のつくりとはたらき」でデジタル教科書・教材を活用。3学級においてそれぞれ授業の異なる段階で視聴させ、アンケート調査をしたところ、直近の活動との組合せによって視聴効果に違いが見られ、3学級ともにまとめの時間やテスト前に振り返りとしてデジタル教材を見たいとの回答が多かったと報告した。「田原総一朗氏の著書『デジタル教育は日本を滅ぼす』(ポプラ社)から「デジタルがいけないのではなく、デジタルによる自己完結がよくない」、「他者と討論することが大切」という指摘を引用し、「多忙だからデジタル教科書・教材を活用するのではなく、新学習指導要領の目標に迫る活用を考えていかなければならない」と述べた。

【2011年7月4日号】


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