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【デジタル教科書】小学校向指導者用 全国で導入開始<本社調査>

 教育家庭新聞では9月、全市区町村教育委員会に、平成23年度版の指導者用デジタル教科書(小学校)の導入についてアンケートを実施した。返答があったのは399自治体。そのうち今年度または昨年度予算で平成23年度版の小学校向けデジタル教科書を導入しているのは130自治体であった。なお、引き続き導入を検討中なのは32自治体。中学校版を含め来年度以降導入を予定しているのは45自治体であった。検討中も多い。

 教育の情報化実態調査結果(文部科学省)によると、平成23年3月1日現在、デジタル教科書の整備状況は、小学校2万1105校中3264校(15・5%)、中学校では全9778校中1374校(14・1%)であった(英語ノートはカウントせず)。

  小学校では今年度より新学習指導要領がスタートしており、平成23年度版の小学校向けデジタル教科書が各社から提供されている。小学校において今年度から使用する教科書に準拠した「デジタル教科書」を整備した自治体は現在どれくらいあるのか。

  弊社調査によると、今年度または昨年度予算で平成23年度版の小学校向けデジタル教科書を導入しているのは、回答を得た399自治体のうち、130自治体であった。

  「デジタル教科書」導入理由については、「教育の情報化を推進する」、「子どもたちにとってわかる授業を展開する」、「学力向上」に加え、学校からの要望が多い。検証のために一部学校・一部教科で導入している教委もある。

  導入教科は、主要4教科を中心としながら、国語や算数などが多い。

  回答を得た自治体のうち、国語は76自治体(一部学年・一部学校を含む。以下同様)が導入。算数は61自治体、理科41自治体、社会41自治体、書写16自治体、地図帳11自治体、その他13自治体(家庭科、保健体育、図工、情報、英語ほか)。

  前回指導要領時からデジタル教科書が提供されている教科に関して、その効果が認められたと判断した自治体は、引き続き導入している傾向にある。社会や理科は、その教科特性から導入効果が期待されている傾向だ。

  なお今回デジタル教科書を導入しなかった理由で多かったものは、「予算がない」、「検証が不十分」、「費用対効果を検証中」、「デジタル教科書を活用できる環境にない」、「活用できる教員が少ない」など、準備不足あるいは予算不足を理由とするものが多い。「学校からの要望がない」という自治体もかなりあり、学校からの要望があれば導入に至ることができた可能性もありそうだ。

  中には、積極的な理由で今回は導入しなかったという自治体もある。その理由として、「デジタル教科書を使いこなすスキルがない。現状としては、実物投影機などで教科書を拡大提示して使う方が現場で広く使われると判断した」という津市教育委員会では、実物投影機の導入を先行した。また、「デジタル教材作成ソフト(dbook)で教科書をデジタル化して活用する予定」という安曇野市教育委員会のような回答もあった。

本格導入スタート 教育効果に期待 ―H23年度版小学校向・指導者用デジタル教科書

導入数の多い教科は 1位 国語 2位 算数

 なお今年度導入していない場合も、来年度予算でデジタル教科書を導入する計画を立てている自治体も複数ある。検討中も多く、今後の導入は増えていくことが予想される。

  以下市町村ごとに導入教科と、導入理由を記載する。なお掲載は市町村名掲載の承諾を頂いた教委のみ。回答の中には教育委員会による一括導入だけではなく、学校教材予算による導入としている自治体も「導入」に含めた。

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デジタル教科書 導入・活用しています

埼玉県・ふじみ野市教育委員会

 市の教育の情報化施策のひとつとして配備。平成23年度版小学校向けデジタル教科書は、国語・算数・理科・社会・地図帳・家庭科を導入。来年度は中学校向けに、国語、社会、数学、理科、英語などのデジタル教科書の導入を検討している。これまで購入していた指導書購入予算の一部をデジタル教科書に充当するなどして予算を確保した。このほか、児童生徒学習用のドリル教材なども配備している。

  デジタル教科書について、教員からの反応はとても良い。「今まで見せることができなかった鮮明な動画を見せることができる。インターネットよりもずっときれい」、「ポイントを拡大して説明できる。特にこの機能は理科や社会で役立つ」と好評だ。

■ ICT環境

  ICTコーディネータを1名、ICT支援員を全小学校13校に各1名配置。ICT支援員は各学校において、学校HP更新作業の補助のほか、授業準備や授業支援、教材・資料作成の補助などを行っている。

  全教職員分の校務用PCや全学級分の教育用PC、書画カメラ(各学年1台×19校)、プロジェクター(3台×19校)、電子黒板(4台×19校)、46型・大型TV(各学年1台×19校)を配備。デジタル教科書は、普通教室から無線LANで学校の教材サーバにアクセスして活用している。

神奈川県・綾瀬市教育委員会

  デジタル教科書は、平成21〜22年度に小学校高学年に国語、中学校全学年に現代国語・古典、中学校2・3年に英語を導入済。新学習指導要領完全実施にあたり、市として学力の向上をめざし、平成23年度版小学校デジタル教科書は、国語、書写、社会、算数、理科で導入。来年度は中学校でも国語、社会、数学、理科、英語での導入を予定している。

■ ICT環境

  小中学校全普通教室に天吊り型プロジェクターを整備。リモコン操作で簡単に投影できるようにしたため、デジタル教科書の活用率も上がっている。教室からは、PC室のサーバにアクセスしてデジタル教科書を活用。デジタル教科書は、他学年の内容も振り返りですぐに参照できる点が便利。

  教員の自作コンテンツ作成も支援。毎年DVD‐ROMを作成、小中学校全校へ配布。総計500タイトル以上になる。

三重県・四日市市教育委員会

  小学校は平成20年度から国語を始めデジタル教科書・教材を導入しており、平成23年度には全教科への導入が完了した。中学校でも多くの教科にデジタル教科書・教材を導入している。小学校と大きく違うところは、ネットワークを活用した配信型の活用だ。市教育委員会担当者は、ネットワークを活用したデジタル配信の導入経緯について、「中学校では教科数が増え、多くの領域に対応した教材が必要。多くのソフトウエアをPCにインストールする作業を考えると、PCにソフトウエアをインストールする必要がないネットワーク配信型を活用する方が合理的だと考えた。バージョンアップやコンテンツの追加があった場合、メンテナンス等も簡単」と述べる。

  「現在利用しているデジタル教科書・教材の多くはFLASHで作られており音読やアニメーション、シミュレーション機能が充実している。どれも課題を視覚的にとらえる工夫がされており、教員は授業の目的に応じて電子黒板等に映しながら活用している」と言う。

東京都・狛江市教育委員会

  よりよく分かる、魅力ある授業、電子黒板の有効活用が目的で導入。小学校向けデジタル教科書は書写を全校に、国語、算数、理科、社会のうち1教科を教委予算で学校の希望により導入している。来年度についても学校の希望する教科について導入を検討中。デジタル教科書は導入し始めたばかりで、使う人と使わない人の差がある。

  教室で使えるICT機器がまだ少なく、書画カメラ(実物投影機)の全教室導入や電子黒板ユニット機能を活用できるプロジェクターの導入が今後の課題。あわせて、DSを活用するシステムの導入も検討中。1人ひとりの学習状況を把握でき、弱点のケアができる。

【2011年10月3日号】


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