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【JAET全国大会】表現活動をICTで支援

 第37回全日本教育工学研究協議会全国大会(丹波大会)が10月21‐22日開催され、全国から教育関係者が参集した。大会テーマは「"わかる・できる・のびる"学びを保障する授業の創造‐授業にさりげなく活躍するICT」。初日は小学校4校、中学校1校、高等学校1校で授業が公開された。

市内全中学校の成果 8教科9科目で公開

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マクドナルドのロゴを隠して中国語
読み方をあてる(社会)
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教科書の資料を提示して説明 (社会)
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デジタル教科書でポイントを確認 (英語)
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友人の作品(俳句)に感想や アドバイス を
書き込む(国語)
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実物投影機で次の実験作業を説明
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イカの動画で生態を確認(理科)

 丹波市内全7中学校では、教科科目別に研究を進めている。公開授業では丹波市立氷上中学校(兵庫県)に一同が集まり、8教科9科目の研究成果が公開された。活用されていたICT機器は、プロジェクターと実物投影機が中心で、教科書や実物、写真素材や動画などを投影し、生徒の理解を深めた。

理科 氷上中2年 イカの解剖実験

  理科の授業公開は、氷上中学校2年2組だ。授業者は岡田豊基教諭。

  「無せきつい動物を調べてみよう」で、軟体動物の代表として「イカ」を取り上げ、実物投影機でイカを投影、「この黒い部分をピンセットで取りだして」、「ここからここまで切断して」など説明しながらイカの解剖を進め、各臓器の確認や説明を行った。また、イカの泳いでいる様子やえさを捉える様子は動画を見せて説明した。この動画は岡田教諭がYouTubeからピックアップしたもので、インパクトのある映像が選ばれている。実物投影機は教師の指示を的確に伝え、正確な作業を進めることに役立っていた。

社会 山南中1年 中国成長の秘密

  社会では、丹波市立山南中学校1年1組の授業が公開された。授業者は伊藤正道教諭。
「世界の工場」と言われるようになった中国について、「中国が短期間でGDP世界2位となった理由」を課題として学ぶ内容だ。

  例えば自動車を作るためには「材料、人、土地、工場、技術、資金」が必要だが、そのうち中国に不足していた「技術・資金」が集まるようになったのは、「経済特区」を設け、海外の人や技術が集まる地区を設けたことが理由だ。伊藤教諭は、中国のGDPの伸びを示したグラフから中国の急激な成長ぶりを説明したり、多くの原材料が中国にあることを示すグラフを示したり、中国の写真をクイズ形式でスクリーンに投影し、多くの企業が中国に進出している様子を生徒に説明し、理解を深めた。

国語 市島中3年 俳句を味わう

  国語の授業はPC教室で行われた。授業を公開したのは、丹波市立市島中学校3年3組。授業者は荻野圭裕教諭。俳句学習を通して言語感覚を育むことがねらい。

  これまで生徒たちは、インターネット上から画像をピックアップし、それについての俳句を作成している。本時では、生徒それぞれの俳句について鑑賞し、自分の意見や感想を書き込んでいく。書き込みに活用したのはスタディノート。

  書き込みに先立ち、荻野教諭は、前時に行った「扉絵から選択した俳句についての感想」について何人かを発表させ、「分かりやすく伝えるには、具体的に書いていくことが重要。例えば、温かい感じがした、と言う感想だけではなく、どの表現から温かい感じがしたのかを書いていくこと」と、いくつか感想を書くポイントを示した。

  その後生徒たちは10人以上の作品に意見を書き込んだ。「流れ星をドラゴンと表現しているところが良い」、「字余りが不自然」、「性別や年齢関係なく共感できる俳句」など、鋭い意見も多い。その後各自で、自分の俳句についての意見を参考に推敲、俳句を完成させていった。

美術 青垣中2年 てん刻を制作する

  美術は、丹波市立青垣中学校2年1組の授業を公開した。

  授業者は足立進教諭。本時では、陽刻と陰刻の違いの理解や、修正可能な掘り方の理解をし、てん刻の作業を進める。

  てん刻は実物が小さいため、実物投影機で大きく表示して説明することで理解を深めやすい。足立教諭は、実物投影機を使って実際のてん刻を押したものを表示し、「線の太さが一定ではないのであわせるために修正する必要がある」、「ここに小さなキズがあるので、修正する」など、修正のポイントを説明した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丹波市和田小学校

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自分の演技をチェックする
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校内にはデジタル教材を自由に
使えるコーナーも
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「説明文の表現の工夫」について説明
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自分の作業過程を実物投影機で説明

 丹波市立和田小学校では平成19年度から「ICTを活用した授業づくり」に取り組んでおり、現在、実物投影機は全普通教室に設置されている。電子黒板は一体型が2台、分離型6台が導入済だ。

【ICT活用】基礎・基本の定着 ポイントは論理的な表現活動

  当日の公開授業では、同校の研究方針である「電子黒板や実物投影機などのICT機器をさりげなく活用し、基礎基本の定着を図る」、「児童が論理的な表現活動を展開できるようICT機器を取り入れる」の2点を意識した活動が各教科で展開されていた。

6年・国語

  6年A組の国語の授業「説明文のワザを読み比べよう」(授業者=松田亜矢教諭)では、筆者が読者を説得するための工夫について、2つの教材「森林のおくりもの」「未来に生かす自然エネルギー」を読み比べながら学習した。児童は、文章から見つけた「対比表現」などの説明の工夫を電子黒板に映し出されたデジタル教科書上のどの部分にあるか線を引いたり、付箋機能を使って示しながら説明、話し合うなど積極的な言語活動が展開された。

3年・算数

  3年A組の算数の授業「三角形」(授業者=足立紀子教諭、由良太郎教諭)では、辺の長さの違いを視覚的にとらえられるように色紙テープを使い、児童に自由に三角形を作らせた。「ぼくは黄色1本と緑1本と青1本で作りました」等、各自が手元のホワイトボード上で作った三角形を実物投影機で電子黒板上に映し、説明した。その後、作成した三角形を分類して学習をまとめた。

5年・体育

  5年B組の体育の授業「首はね跳びに挑戦」(授業者=足立浩基教諭)では、見本となる動画を見せ、技のポイントとして「膝の伸び」に注目させ、「首はね跳び」に挑戦。自身の空中での動きを振り返ることができるようにビデオカメラとHDDレコーダーを活用し、実技中の自分の動き、フォームを確認できるようにした。技のポイントである膝の伸びを確認したり、「もう少し斜め前に足を伸ばしたほうが良いよ」など、互いにアドバイスする姿もあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

【2011年11月7日号】


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