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【ICT活用】ICT活用はベテランが上手い―港区立青山小学校

“読み取り”深め“語い力”増やすICT活用

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 「ICT活用はベテランが上手い」とはしばしば聞く。授業力があれば、ICT機器の適切な「活用どころ」が分かるからだ。10月27日、港区立青山小学校(曽根節子校長・東京都)では、「ICT活用はベテランが上手い」を立証する授業が展開された。

 港区立青山小学校では、平成22年度から「港区研究パイロット校」として「言語活動の充実」に取り組んでいる。その重要な手立てのひとつが、電子黒板やデジタル教科書、デジタルペンなどのICT活用だ。「デジタル教科書と電子黒板の活用促進プロジェクト」(社団法人日本教育工学振興会・JAPET)の企画で10月27日、同校の授業を視察した。当日はICT機器によって児童の発言や発表の場が増え、互いの意見を比較、思考を深める授業が展開されていた。

5年 国語

思いを込めて 朗読するには

  同校の国語科では習熟度と本人の希望を生かし、クラスを2分した「コース別学習」を展開している。5年生の国語でコース別授業を担当している渡辺教諭は港区の教員退職後も同校で加配教員として教鞭をとっており、ICT機器を活用することで読解教材に長年取り組んできた実績をさらに活かした授業を展開した。

  この日は「大造じいさんとガン」で、本時の目的は、読み取りを深め、「自分なりに感じたことを音読に反映させ、朗読する」こと。

  授業の終わり、児童は文章から読みたい一節を選んだ。「あわてないでね。あわてると気持ちが入らないから」という渡辺教諭のゆったりとした言葉に児童は呼吸を整える。

  「『ぱっ』と白い羽毛が暁の空に光って散りました」、「大造じいさんは、『強く』心をうたれて、ただの鳥に対しているような気がしませんでした」

  児童は登場人物の心の動きや情景が感じられるよう、「ぱっと」や「強く」、語尾などに思いを込め、丁寧に朗読した。

読み取り深める ICT活用とは

  朗読に思いを込めるためには、深い読み取りが必要だ。

  渡辺教諭が電子黒板に提示した国語のデジタル教科書の本文には、赤や青の線が引かれている。これは前時までの読み取りの記録で、「大造じいさんの気持ちが表れている表現」には赤、「残雪のようす」には青い線が引かれている。「読む人の心をぐっと引きつける情景」は緑だ。

  発問に対する児童のつぶやきを拾いながら言葉の読みを深めていく手法は、ベテラン教員にはお手の物。そのやりとりは、線が引かれたデジタル教科書を大きく前面に提示しておくことで児童の思考が継続しやすくなり、児童と教師が視線を合わせやすくなったことで、よりスムーズに展開した。

  黒板には、大造じいさんの心情変化をまとめた短冊が並ぶ。これまでの「読み取りの成果」がひと目で分かる。

  「大造じいさんが残雪を撃とうと一度銃を構えたのに、なぜ銃を下したのか」という発問に、多くの児童が発言する。その中で、「おとりのガンを助けるために自分の命を犠牲にして守ろうとしたハヤブサに感動して銃を下したのだと思います」という発言に、クラスから拍手が起こった。自分たちも感じていたことを的確に表現した仲間に対する称賛の拍手だ。

「語い」増やす 活動を意識する

  学習についての振り返りは、デジタルペンで専用シートに記入していく。ペンで書くだけで教師用PCに児童が書いた内容がリアルタイムに転送されるため、1人ひとりの児童の進捗状況がひと目で分かる。渡辺教諭はPC画面を見て全員書き終えたことを確認し、記入内容をマグネットシートに提示しながら発表させた。

  渡辺教諭はICT機器について、「デジタル教科書や電子黒板を使うと、すぐに振り返ることができ、思考を継続しやすくなった。その結果、児童の考える時間、話し合う時間が増えた。黒板には子どもから出た言葉を書きとめ、短冊にまとめている。デジタルペンは児童の進行がひと目で分かる。また、1つひとつの意見についてじっくり検討し、何人かの意見をまとめて提示して比較するなどで語彙を増やしている」と述べた。

  竹村副校長は、「コース別授業に参加して成長していく児童の様子を見ることは、学級担任にとって良い刺激になり、さらなる成長のきっかけとなる」と述べた。

 2年 算数

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児童が作成した問題文を全員で解く
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デジタルペン「Open NOTE」で書いた
内容がリアルタイムに転送され、
児童の進捗状況がひと目でわかる

デジタルペンで 問題文を作成

  算数の授業では、既習事項であるかけ算の問題作りにT・Tで取り組んだ。授業者は小澤卓拓教諭・前原文江教諭。活用したICT機器は電子黒板とデジタルペン。

  小澤教諭が文章題作成のポイントを示した後、児童はデジタルペンを使って専用シートに式と答えを書き、その式に合った問題文と絵を考えた。児童の進捗状況は教師用PCですぐに確認できる。小澤教諭はそこから選択して、何人かの児童の文章題カードから「問題」と「絵」の部分を電子黒板に提示した。

  「ひとつのお皿にトマトが3個あります。お皿は3枚です。トマトは全部で何個ですか」

  皆でその問題を解き、式を導き出す考え方について繰り返し確認する。クラスの仲間が作成した問題であることが一層集中力を高めているようだ。小澤教諭はICT活用について、「授業の主体が教師から児童にシフトし、児童主体の活動が増えた。どの部分にどうICT機器を活用していけば効果的か、授業案を練る中でさらに検証していきたい」と述べた。

 

 

◇  ◇

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デジタル教科書を使い、
各自「戦争中のくらし」について発表

  3年の「総合的な学習の時間」では、電子黒板を2台活用し、近所の店を調査して発見したことについて児童が2人ずつ発表。2人の意見の違いを比較・検討して考えを深める活動を展開した。

  6年社会の授業では、社会デジタル教科書の豊富な資料を活用し、「長く続いた戦争と人々の暮らし」について各自が発表する活動を展開した。

 

 

 

【2011年11月7日号】


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