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【絆プロジェクト】熊本県人吉市

 熊本県人吉市教育委員会では、平成22年度の絆プロジェクト教育情報化事業(総務省)(以下、絆プロジェクト)において、人吉市内全小学校7校の情報教育環境の整備を進めた。10月4日、人吉市立中原小学校で、絆プロジェクトを含めた教育情報環境を活用した公開授業が行われた。

総務省 絆プロジェクト報告

 人吉市では、絆プロジェクト等において、校内LAN(無線LAN接続)を100%構築、電子黒板(デジタルテレビ対応)48台(6・9台/校)、実物投影機66台(9・4台/校)、児童用タブレットPC1122台(1・8台/人)、教職員用PC176台(1台以上/人)を整備している。体育館でも活用できるようアクセスポイントを4か所整備。これら環境の活用を促進するため、人吉市教育研究所視聴覚情報教育部会には全小中学校から各1名が在籍し、情報教育の構築や活用について取り組んでいる。

  デジタル教科書・教材等を集約した「人吉きずなポータル」も構築した。きずなポータルでは、教員用メニューと子ども用メニューがあり、教員用メニューからは自分の教材を登録できる。デジタル教科書については、国語、算数、理科を導入しているほか、ドリル教材、Web共有ボードなどを活用できる。当日は、これらの環境を活用し、国語、社会、理科、算数の授業が公開された。

集中力を高め 興味・関心促す

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実験をWebカメラで撮影する
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全員で動画を視職しても
スムーズな環境を構築
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“わかったこと”の“根拠”を示す
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考え方を書き込み、全員で共有する

  2年国語の授業では、電子黒板、国語デジタル教科書、実物投影機などが活用された。

  授業の最初は「国語デジタル教科書」で、新出漢字の筆順練習を行い、留めや払い等の理解を深めた。

  授業中は、デジタル教科書の本文を電子黒板に提示、書き込みながら説明するなど、重要語句やキーワードの理解を促す。さらにデジタル教科書の動画「獣医の仕事」を見ることで、教材への関心を高めた。

  児童の感想を紹介する際には、児童のワークシートを実物投影機で電子黒板に表示、発表しやすく聞きやすい環境で考えを共有するなどした。

動画をTPCで スムーズに視聴

  4年社会「健康なくらしを守る仕事」本時の目的は、「水をきれいにして自然に返す人々の工夫や努力について考える」こと。「汚水がきれいになるまで」のワークシートには、(1)沈殿池、(2)最初沈殿池、(3)汚水沈殿池、(4)塩素沈殿池 それぞれの役割と、それに対応した動画教材の番号が記載されている。児童は各自のTPCを使い、自分が見たい動画教材にアクセスして視聴。それを見て分かったこと、もっと知りたいことなどをワークシートにまとめていく。

  単元の課題作りやまとめる際には、Web共有ボードを使い、各自の意見や考えを学級間で共有した。この取り組みは市内学校間でも共有。他校の学習の様子を知ることを通して、水道事業について人吉市全体で捉える。さらに水道局の人からのコメントを動画で流し、自分たちの生活を振り返った。

Webカメラで 実験経過を撮影

  6年理科では「地層は、流れる水の働きでできるのかどうかを確かめる」実験を行った。

  実験用具などは電子黒板で大きく提示、堆積実験方法を周知してから実験に進む。実験の様子は、グループごとにTPCのWebカメラで動画撮影。水の流れと共に礫が下に、砂が上に舞い上がる。「決定的な瞬間を撮影できた」と喜ぶ児童もいる。

  撮影した瞬間については、電子黒板に投影し、実験結果を共有する。実験結果から分かった地層のでき方についての発見について発表した。

  6年算数では、等分割した扇型を長方形に変形し、円の公式を考えるという学習内容だ。

  本時では、ペア学習で、8分割した場合と16分割した場合を長方形に変形して比較した。変形した2つのパターンを並べ、TPCのWebカメラで撮影。それをデジタルノート上に貼りつけ、長さや気づき等をペアで協力しながら書き込んでいった。書き込んだものは画面転送システムにより、電子黒板上に拡大提示。全体で共有した。

  もとの円と対応させながら、変わるもの、変わらないものについて発表したり、デジタル教科書のシミュレーションを見ながら、32分割や64分割した場合は限りなく長方形に近づくことを視覚的に理解していくことで、円の公式について理解を深めた。

教育環境は行政の重要な責務
ICT活用はベテランが上手い

■堀秀行教育長
電子黒板、実物投影機、TPCなどそれぞれのメリットが生かされた授業展開であった。

■田中信孝市長
子どもに与える教育環境は行政としての重大な責務。全力で人吉市の教育環境を世界の潮流に乗せて行きたい。

■総務省
安間敏雄氏
絆プロジェクトの成果は各地で濃淡があるが、人吉市の特徴は市長の熱心さ。熱意に応えたい。

■宮本郷美校長
どう使うかのアイデアを具体的に持つベテラン教員はICT活用が上手い。便利なICTをどう授業に使っていくのかが現職教育の肝。

■東京工業大学
清水康敬名誉教授
理科の授業では、児童全員が各自のTPCで一斉に動画を見たが、大変スムーズであった。スムーズに動画を視聴できる工夫を見習いたい。

■宮崎大学
新地辰朗教授
ICTによって学力の質が高まる可能性を見ることができた。

【2011年11月7日号】


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