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協働学習での活用進むデジタル教科書

新体制で方向性合意 ―文科省・総務省連携事業

 11月14日、総務省において、「ICTを活用した先導的な教育の実証研究に関する協議会」の第一回会合が開催された。これは、文部科学省「学びのイノベーション推進協議会」と総務省「フューチャースクール推進研究会」の連携を図るための協議会で、両省副大臣の共同主催。現在全国の小中学校・特別支援学校計20校で実証中だ。当日は、両省副大臣始め担当者らと研究者、学校長、フューチャースクール東日本地区・西日本地区各担当者など計34名が参集し、平成23年度事業の取り組み状況、学習者用デジタル教科書の説明、今後の方向性などが話し合われた。フューチャースクール関連において、新政権組閣後初の会合。

 フューチャースクール推進事業校のひとつ、東京都葛飾区立本田小学校を視察した森文部副大臣は、「文科省・総務省一体となって着実に実証研究を進め、協働学習の輪を広げていきたい」、松崎総務副大臣は「紙の良さ、ICTの良さ両面を活かし、21世紀にふさわしい学びの実現を期待したい」と述べた。会議では、昨年度からスタートしたフューチャースクール推進事業実証校における平成23年度1学期の取り組みが報告された。

  西日本地区の報告者は、「タブレットPC(以下、TPC)には、児童各自の名前を入れて使用している。学習者用デジタル教科書の活用が始まっており、TPC上で図形を動かしながら考えたり、ネイティブの口元を見て発音練習をしたりなど、様々な可能性が見えてきた。ICT支援員の自作教材をIWB(電子黒板)で提示、児童はTPC上で作業するという流れがよく見られる。15分間の朝学習や校外学習などでも、実物投影機やデジタルカメラと連携しながらTPCを活用した学習が進んでいる」と報告した。

  東日本地区では、各種デジタル教材はクラウドから校内サーバに一度格納、そこに各教室からアクセスして活用しており、家庭からもインターネットを通じて利用できる環境を構築している。東日本地区担当者は「授業の始めの『つかみ』でうまく活用している先生が多い。週末などにTPCを持ち帰り、家庭学習等での活用も数校で進めており、児童は楽しみにしている。今後はアクセス記録や学習記録の活用にも着手したい」と報告した。

協働学習場面が 算数ほかで増加

  清水康敬氏(東京工業大学名誉教授)は、フューチャースクール推進事業校における平成23年度1学期の取り組みについて、「協働学習」に関する場面があった授業数を昨年度と比較、分析。

  「昨年度と比較して、1学期間だけで昨年度以上に協働学習と類される活動が行われている」と報告した。増加率が高いのが、算数、総合的な学習の時間、生活科の順。活用場面については、同じ問題について学級全体で話し合う場面、1人が発表したことについて学級全体で考える場面などが増え、学年別では1年生で協働学習場面が最も増えた。

「学びの質」が確実に変わる

  絆プロジェクトで児童用TPCなどを整備している日野市立平山小学校長の五十嵐委員は、「使い勝手など技術的な面にまだ課題はあるものの、学習者用TPC等の活用によって児童の考えやノートを共有しやすくなり、1人ひとりの思考過程も順を追って共有できるなど、確実に学びの質が変わっている。それと共に教師の役割も変わってきた。やりたいと考えている先生はたくさんいる。国を挙げて教育改革の必要性について声を大にしていかなければ自治体は変わらない」、港区立青山小学校長の曽根委員は「21世紀の学び方がどう変わるか、今何が行われているのかについて、校長会などに訴求していく必要がある」と発言した。

【2011年12月5日号】


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