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学習者用デジタル教材でアクセシビリティを向上

 知的能力に異常はないものの、印刷された文字であることそのものが学習の妨げとなる場合がある。ページ上の文字や画像が見えない、ページをめくることが難しい、文字や構文の理解ができない、紙に書かれた単語に集中できないなど通常の印刷物を読むことが難しいという障害がある場合だ。

  その場合、「DAISY」などのデジタル教材は有用性を発揮する。

  「みんなのデジタル教科書教育研究会(デジ教研)」は11月13日、「Open meeting 06 in Saitama」を開催。通常の印刷物を読むことが困難な人(プリント・ディスアビリティ)向けに制作された「デジタル録音図書」を利用する効果と課題を報告した。

“DAISY”もっと活用を

■DAISYとは

  視覚障害、発達障害、上肢障害など様々な理由により通常の印刷物を読むことが難しい人のためのデジタル録音図書の国際標準規格がDAISY(Digital Accessible Information System)だ。DAISYでは(1)数式の自動読み上げ、(2)ナビゲーションシステム、(3)テキストの音声による読み上げ、(4)読み上げ箇所のハイライト表示、(5)文字の拡大、色の反転等が容易になるなど、通常の印刷物を読むことが困難な人のアクセシビリティを保つことができる。
日本では、これまでに2500を超えるDAISY録音図書が全国の中学校以上の学校、公共図書館、福祉関連団体へ提供されている。

  開発やメンテナンス、普及等を行う国際非営利法人「DAISYコンソーシアム」(本部・スイス)の河村宏会長は、DAISYなどデジタル教材の有用性について「一般教育課程の欠点の1つは、印刷教材が広く使われている点。障害がある児童生徒の多くにとって、印刷技術の限界がアクセス障害となり、結果、学習への障害となっている」と指摘する。

■高い活用効果

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印刷教材の限界がアクセス障害になる場合も

  野村美佐子氏(日本障害者リハビリテーション協会情報センター長=DINF)は、DAISY利用の成果について、「通級指導教室と連携した在籍級において活用したところ、対象児童の自尊意識の回復と学習意欲の向上及びクラスへの参加が促進された。家庭学習での予習・復習も進み、読書を楽しむ等教育上の効果が得られた」と話す。

  現在、DAISY教科書の利用者は888名(11月9日現在)。特別支援学級・学校、普通学級などで利用されている。利用者の障害は、学習障害やADHD、広汎性自閉症、上肢障害、難聴、視覚障害、眼球運動の障害など様々だ。対応教科は小学校で、国語、算数、理科、社会。中学校では、国語、英語、歴史、地理、公民、理科、音楽。

  利用者へのアンケートからは「読むことへの抵抗感、苦手感、心理的負担が減った」、「読むことに関心・興味が出てきた」、「自分から本を読むようになった」、「授業に自信を持って取り組むようになった」などが報告されている。

■先行する欧米 周知遅れる日本

  米国では、個別障害者教育法(IDEA)が制定され、公的機関に無償かつ適切な教育の提供が義務付けられている。全国指導教材アクセシビリティ標準規格NIMAS(National Instructional Materials Accessibility Standard)は、そのIDEAに沿ったもので、出版社に対して教科書や教材の出版の段階で電子化されたものを提供する義務を課している。

  日本の現状について野村氏は「まだまだ対象児童・生徒に届いていない。また、学校で個別にインストールしようとすると教育委員会からの制限がかかっていて簡単には利用できない場合も多い。今後は、無償提供に向けたシステムを確立するための法・制度の整備、教育委員会による教員研修、学校での好事例の収集、図書館の学校支援等が必要」と述べる。

  「DAISYコンソーシアム」では、現在、デジタル書籍などで広く使われる電子書籍の国際規格EPUBを展開するIDPF(International Digital Publishing Forum)と共にEPUBの改定作業に参画している。DINFのHPでは、活用事例を掲載。http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/

 

【2011年12月5日号】


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