“反転授業”で学習課題を解決する

小学校算数で反転授業―富谷町立東向陽台小学校 佐藤靖泰教諭

  昨年度、小学校算数でタブレット型PCを使って反転授業に挑戦した佐藤靖泰教諭(宮城県黒川郡富谷町立東向陽台小学校・教育情報化コーディネータ2級)。その結果「約94%の子どもたちが『反転授業』は役立つと感じ、家庭での学習時間が約1・5倍になる」などの成果を挙げた。

タブレット持ち帰りでノート作り  “次の日の授業がわかる” “意見が言える”

‐‐反転授業に取り組んだ理由は。

  教職について以来、教育の情報化に興味を持ち実践・研究に取り組んできた。教科指導での電子黒板活用など、県内では先導的な内容も多く、その都度、東北学院大学の稲垣忠准教授からご指導・ご協力をいただいていた。

  宮城教育大学教職大学院では、インストラクショナルデザインの考えを基に、ICTを活用した授業設計と教師の授業力量形成に着目して研究した。ICT活用をきっかけに、45分間をどのようにデザインするか再考することで教師の力量形成を促進するというものだ。実践する中で、なかなか解決できないジレンマがあった。「40名近い子どもたちの学習の前提を整え、少人数グループで協働的に課題解決させ、7〜8つのグループが発表し検討してまとめ、適用問題に取り組ませるには、45分では不足」なのだ。子どもたちが「そうか!分かった!」となるまでの時間が十分に確保できなかった。

  同時期に考えていたことは、授業と宿題(家庭学習)の連動・一体化だ。これまでの宿題は習熟や補てんが中心だったが、明日の授業に直結するものにできないか、ということである。教室で協働的な学びを構成するには、子どもたちが課題解決のための道具(学習の前提となる知識)を持っている必要がある。いわゆる予習だ。しかし、小学生にただ「予習しなさい」といっても十分な効果は期待できない。

  情報を集めていたところに「反転授業」という文字が目に入った。面白いと感じるのと軌を一にして、稲垣准教授から「反転授業をイメージした授業をやってみませんか?」とのお誘いを受けた。

‐‐手応えと成果は。

  大学・企業のご協力により、児童1人1台のタブレット端末環境が整うことになった。電子黒板とデジタル教科書を使って、教科書問題の解説をビデオ化し、全ての端末に取り込んだ。家庭のインターネット接続環境はほぼ整っていたが「無線環境が必須となる」「個別の環境設定に干渉するのは困難」などの理由から、ビデオのオンライン化は行わなかった。

  子どもたちはタブレット端末を家庭に持ち帰り、ビデオを見ながらノートを作った。分かったこと、分からなかったことをノートに整理する。授業ではその確認をして、できるだけ早いタイミングでビデオの内容を使った課題に協働で取り組ませるようにした。タブレット端末に考えや答えを書き込み、電子黒板を通して共有、検討するような授業を行った。

  結果、評価テストの平均点が96・6点だった。子どもたちの約94%がタブレットを使った家庭学習(=反転授業)が授業に役立つと感じ、家庭での学習時間が約1・5倍になるという結果を得た。また「他の人の考えにつられず自分の意見を言えるようになった」「家で明日の勉強ができるので、次の日は必ず分かるので楽だった」等の感想が聞かれた。保護者の約80%が「反転授業という学習スタイルは有効だ」と感じており「何度も見直せるので復習にも活用できて良い」「予習の手段として、直接先生の解説を聞ける」「保護者も授業を見られるので、今の授業の進め方が分かり、子どもに教えるのに活用できる」など肯定的な反応が得られた。

‐‐本年度の取り組みと今後の予定について。

  本年は昨年度のビデオを活用し、算数科で反転授業に取り組む。昨年度の比例の学習に加え、反比例の内容をビデオ化し単元全体を反転授業化する。動画教材作成ソフトを導入し、ビデオもタブレット端末で作成することに挑戦する。

  JAET宮城・仙台大会での公開授業は反比例のグラフの学習である。児童のタブレットを活用する姿とともに、算数的活動や協働学習の時間の充実を期待しているので、その部分にも注目していただきたい。

【2013年10月7日】

関連記事

↑pagetop