教育委員会対象セミナー福岡 ICT機器の整備計画/校務の情報化

1人1台タブレットの整備、反転授業の取り組みに向けて―武雄市教育委員会 学校教育課指導主事・竹内智道氏

市バスをチャーター、 希望者募り先進校視察

  武雄市(小学校11校・分校3校、児童数約2850人/中学校5校、生徒数約1400人)ではこれまで、電子黒板、デジタル教科書、iPadの1人1台活用などの実証を行ってきた。ICT整備は「わかる授業の推進」「校務の効率化」を目的としており、その実現のためには4つの柱(▼機器整備▼人的支援▼職員研修▼校内体制)が必要であると考えている。

  電子黒板と書画カメラはセットで配備。中学生や学級人数の多い学校にはプロジェクター型を、20名以下の学級には65インチのTV型を配備した。平成25年度に36セットを整備し、これまでの整備と合わせると学級数にして約80%の配備になっている。

  指導者用デジタル教科書は、小学校では国語を全学年、算数を小学校2年生に、中学校は国語、数学、理科、英語を市教委予算で、それ以外は学校予算で配備。学校予算では現在、小学校8校が算数を、3校が理科を導入した。小学校国語を最初に全学年に導入したことが、デジタル教科書の有用性を広げることに寄与したと感じている。

  「黒板のない職員室」をスローガンに、職員室にPCを整備したところ、学校によっては、校務支援システムのトップページをプロジェクターで投写、職員室の黒板代わりとして情報を共有している。

  ICT支援員は市予算で3名、緊急雇用創出基金で6名。当初は学級に入って支援していたが、今は研修会の支援や教材作成・登録支援などが中心だ。

  研修についてはICTスキルアップセミナーを第2水曜日に実施しており、電子黒板の使い方から始まり、反転授業の方法なども行っている。回を重ねるごとに参加者が増え、現在、会員数は100名を超えた。また、先進校視察の要望に応えるため、市のバスをチャーターして各学校へ希望者を募り、視察を行った。多くの参加者があり、バスの中で情報交換が進むなど、予想外の効果もあった。

  校内体制については、各校に1名のICT推進リーダーがおり、リーダーが中心になってICT研修を行っている。今年度は、市内2小学校(武内小・山内東小)で電子黒板やiPadなどICT機器を利活用して公開授業を行った。電子黒板で情報共有や双方向でのやりとりができる、自分の考えを伝えやすくなるなどコミュニケーションツールとしての活用が定着しつつあるようだ。これらの取り組みによって平成24年度には、武雄市の教員のICT活用スキルが90%を超えた。

  反転授業の実施校では、「自宅で動画を見て授業に出るのでわかりやすい」「予習が充実することで授業に深みが出る」と、可能性を感じる声が多い。

  反転授業の際は必ず小テストを行って理解状況の確認を授業前に行っている。この小テストはiPad上で簡単に行えるようにした。

  すべての授業を反転授業にするつもりはなく、「1人調べ」をどこまで行うべきかを現場教員とともに議論をしている。児童の反応は、「やりがいがある」「じっくりと取り組める」「難しくて分からない」とそれぞれ異なることから、個別学習に生かせると感じている。

  反転授業のコンテンツは、市内教員で手分けをして単元を分担、協力企業に依頼して作成を進めており、サーバ上で互いに各校が進捗状況を確認するなどして作業を進めている。動画上でのチェックは時間がかかることから、概要のPPT画像で行っている。

  次年度以降、全小学校に整備・導入する端末は7インチのAndroid端末に決まった。プリント配布や動画作成・反転授業など実現したいことに活用できるという判断だ。懸念材料を少なくするため、現状では家庭の無線LANには接続できない設定とし、必要な教材を端末に入れて持ち帰るようにする。

  タブレット端末導入に際して、保護者からは紛失や破損の際の対応についての質問が多い。破損の場合は市負担とする予定。健康面への影響についても質問が多いが、反転授業用のコンテンツも5〜10分程度であり、書く活動もこれまでどおり取り組んでいく。授業参観をすることでその点については安心していただいている。

  教員スキルの育成には時間が必要だが、今後も「わかる授業」実現に向けた取り組みを進めていく。(講師=武雄市教育委員会学校教育課・竹内智道指導主事)

【教育委員会対象セミナー・福岡:2014年1月31日】

【2014年3月3日】

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