教育委員会対象セミナー福岡 ICT機器の整備計画/校務の情報化

児童の思考力・表現力向上のためのICT活用による授業改善―山江村立山田小学校 藤本誠一校長

電子黒板と1人1台のタブレットPCの効果的な活用を通し
数の「関心」「考える力」は顕著に伸び

  山江村立山田小学校では、電子黒板と1人1台のタブレットPCの効果的な活用を通して児童の思考力・表現力向上のためのICT活用による授業改善に取り組んだ。

  山江村(小学校2校、中学校1校)は人口3700人だが1人の母親が子どもを産む数は全国8位、熊本県では1位。住宅政策や教育環境整備の成果もあり、出生率とともに転入希望も多い。

  ICT活用には平成23年度文部科学省の「ICT教育活用好事例」調査研究事業の委託を受けたことをきっかけに着手。情報関係は苦手ではあったものの、ICT教育をうまく進めることができれば生きる力の基となる確かな学力を身につけさせることができるのではないか、それには校長がビジョンを持つことが重要であると考え、自分で良さを実感するためにICTを活用した授業やプレゼンなども行いながら教育長と相談しつつ学校経営に取り組んだ。

  ICT活用率はそれまでほとんどなく、スタート当初、電子黒板は1台のみ、デジタル教科書もなく苦労は多かったが、まずは環境整備と人的環境の整備を進めることが授業改善のための一歩であると考え、一丸となって取り組んだ。1年目は夏休みの半分を操作研修に費やすなど試行錯誤であったが、現在研究3年目を迎え、協働学習支援ソフトなど新しい教材の研修や授業改善のためのKJ法を取り入れた模擬授業、自作教材作りなどを研修で取り上げつつ教員のICT活用能力の向上を図っている。

  今年度は「ICTを活用した未来の学校創造プロジェクト推進事業」(熊本県教育委員会指定)研究校として、現在、教育用PC20台、校務用PC1人1台(23台)、タブレット端末は5、6年に1人1台、4年以下は4人に1台(計約120台)、電子黒板用PC8台、実物投影機8台。無線LAN環境も構築。デジタル教科書(国語、算数、理科、社会)は全学級で活用。ICT支援員は週1回の巡回だ。既に教員はICT環境を「使いこなす」ようになっており、使い方に向上が見られている。また、校務支援システムの導入による効果は、月約6時間の事務時間が軽減されているという調査結果が出ている。

  教員のICT活用については「なぜここでICT機器を使うのかを明確にし、発問や板書、ノート指導とどのように組み合わせれば効果的なのかを考えること」「ICT活用指導力の向上によって学力向上につなげるために授業改善に直結したICT活用を進めること」、児童生徒のICT活用については、「体験活動との関連付けを図る」「子どもの思考ツール、コミュニケーションツールとして活用する」「言語活動の充実に資するよう伝え合い活動を意識して展開する」ことなど、いくつか共通理解を図っている。

  ICT教育の良さを保護者や地域に発信することも校長の役割であると考え、毎年実施している「親子ふれあい学習会」でICTを活用した授業参観を全学級で実施。保護者には大変感動していただいた。毎月15日の学校開放デーには、授業参観者も多い。授業の様子はケーブルテレビで各家庭でも視聴できるようにした。

  研究発表会には、村長、教育委員、議員なども招待し、その効果のアピールも行うことで、学校環境の整備を進めて頂くことができた。

  タブレット端末は、主に「児童同士の関わり合い」の中で自力解決の後のペア解決やグループ解決、全体解決など伝え合いや学び合いのツールとして活用されている。3年間の研究によって、児童が自分でデジタルとアナログを使い分けるようになってきている。その傾向は特に高学年で顕著だ。

  熊本県では独自に3年生以上を対象にした学力調査を行っているが、ICT活用前と導入1年目を比較すると明らかに伸びが見られている。特に算数の「関心」「考える力」は顕著に伸びた。さらに2年目では、全ての教科・観点で県平均を大きく上回っており、ICT教育が授業改善に果たす役割の大きさを実感した。

  全国学力学習状況調査と比較すると、その差はさらに大きく、A・B問題ともに「全国学力一」の県の平均点を大きく上回っていることが分かった。今後は小中連携を図り、教育長曰く、「シリコンバレー」ならぬ「ヤマエバレー」の構築に寄与できるよう、学校CIOとしての役割を果たしていきたいと考えている。(講師=山江村立山田小学校 藤本誠一校長)

【教育委員会対象セミナー・福岡:2014年1月31日】

【2014年3月3日】

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