教育委員会対象セミナー・福岡 ICT機器の整備計画/校務の情報化

教育委員会や学校の整備担当者を対象に実施している「教育委員会対象セミナー〜ICT機器の整備と活用・研修」が、1月29日福岡で、2月16日に名古屋で開催された。次回は3月31日に岡山で開催される。
詳細=www.kknews.co.jp/semireport

年間平均98.2時間の軽減効果 北海道教育委員会総務政策局教育政策課・中山 諭氏

北海道教育委員会総務政策局教育政策課 中山諭氏
北海道教育委員会
総務政策局教育政策
中山諭氏

共同利用で全国展開
4自治体28校で検証

中山氏は「全道で統一の共同利用型校務支援システムをクラウドで運用することは新たな挑戦。様々な苦労があったが『踏襲は後退。挑戦は前進』を合言葉にチームで取り組むことで大きな動きができた」と語る。「共同利用型校務支援システム」導入の目的は、九州の約2倍と広大な北海道の約4割を占める小規模校でもクラウド型システムが運用できるようにすること。市町村単独で実施するよりも短期間かつ安価にシステムを活用でき、市町村間での児童生徒情報や教職員情報も共有できるようになる。これは広域な道内において、帳票などの標準化を進めるきっかけにもなり、校務負担の軽減の加速化を図ることができると語る。

道では平成24年度から校務支援システムを導入しており、当初は委託契約による独自開発で活用を進めていたが、市町村からの要望を受け、汎用性、柔軟性、将来性の観点から民間システムを活用。平成26年度から統一帳票の検討やサービス規約の作成、円滑なシステム移行策の検討などを始め、平成27年度は4自治体28校を指定してモデル事業を実施。平成28年度からの全道展開に向けて準備を進めている。

小規模校を含む28校のモデル校では、プライベートクラウドを基盤として、グループウェアと校務支援システムを活用しており、当初のシステムからのスムーズな移行支援や運用の検証、効果測定を行っている。

効果測定の基礎データとして実施したアンケートによると、校務が多忙と答えた教員は全体の94%。その原因は、1位通知表の作成、2位指導要録の作成、3位学校行事の準備、4位所見の記入、5位会議等への参加であった。

道教委では「ほぼすべての項目が校務支援システムを活用することにより負担を減らすことができ、それにより生み出された時間を子供と向き合う時間にあてたり、学校行事の準備や教材研究などにあてることで、教職員の多忙感を解消するとともに、教育の質の向上を図ることができる」と考え、様々な機能がある中、どの学校でも必要で校務の負担軽減が最も期待できる出席簿と通知表、指導要録の機能の活用を必須とし、その他は各市町村や各校の実情に合わせて活用するスタイルとして推進した。

中間アンケートによると、教員1人当たり年間平均で98・2時間、日に24・5分間の軽減効果が見られた。セキュリティも保たれており、教員の精神的な負担軽減にも繋がっている。各校からは、掲示板機能の利用で朝の打ち合わせ時間が短縮され、その時間を読書活動の指導などに当てることができた、児童生徒の転出入時における各種名簿作成の効率化が図られた、児童生徒の顔写真を登録することで打ち合わせ内容が深化した、不登校傾向がある児童生徒を把握しやすくなった、教職員同士の学び合いや人材育成につながったなど様々な効果が報告されている。

学校体制・活用度
 の差で軽減効果に
 大きな違い

一方、モデル実践校では軽減された時間に差もある。その原因の一つが学校体制だ。中山氏は「学校全体での経営ビジョンの共有や管理職の状況判断力・洞察力を含むリーダーシップ、ミドルリーダーの存在が活用を高めるポイント。例えば、システム運用担当者、通知表運用担当者のほか、各学年1名のミドルリーダーを配置して教職員全体で取り組む学校が大きな成果を挙げている」と説明。教育委員会・学校・事業者の連携・協力も重要だ。学校管理規則の改正や研修会の実施、学校環境整備、導入アプローチのサポート、ICT支援員などの専門スタッフの派遣など、各自の連携が重要であり、とりわけ、「共に力を合わせて進めていくうえで事業者の豊富な運用実績や積極的な取組姿勢は特に重要」と強調した。

次年度は、現場の最新ニーズを常に把握して「成長し続けていく校務支援システム」を目指す。「チーム学校」「学校の業務改善」「マネジメント強化」をキーワードに各種教育施策と連携して全道に共同利用型校務支援システムを広めていく考えだ。【講師】北海道教育委員会総務政策局教育政策課 中山諭氏

 

【第28回教育委員会対象セミナー・福岡:2016年1月29日】

【2016年3月7日】

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