下着の歴史と技術の発展

技術の発展と下着の大切さを京都で学ぶ―京都・綾部市「グンゼ記念館」「グンゼ博物苑」

グンゼ下着

繭を貯蔵していた蔵を活用したグンゼ博物宛

 ジュニアのブラジャーについて、「下着指導キット」を養護教諭に貸与して、正しい下着の知識に関する啓発活動を行うグンゼ(株)。これまで教育家庭新聞で定期的に下着指導キットについて紹介してきたが、今、改めて下着の大切さを考えるために、京都府綾部市のグンゼ綾部本社にあるグンゼ記念館・グンゼ博物苑内を取材。蚕糸業から下着事業、プラスチックや電子部品に至るまで、技術の発展を追った。

始まりは蚕糸業 地域の一大産業

  今でこそ下着メーカーとして知られているグンゼだが、かつてこの京都府綾部市(当時は京都府何鹿〈いかるが〉郡)一帯は、最盛期に4800軒の蚕糸農家があるほど、蚕糸業の盛んな地域だった。しかし、当時の評価は「京都の生糸は不良」というものだった。

  それを変革させようと、蚕糸業組合が結成され、初代組合長となったのがグンゼ社の創業者・波多野鶴吉氏だった。波多野氏は、各家庭で営んでいた蚕糸業を一つの企業とし、地元の人たちに株主になってもらうことを発案。

グンゼ下着
グンゼ下着

現在の下着(上)と昭和20年代頃の下着

  当時、日本が強くなるためには「国是(こくぜ)」が必要と謳われていたこともあり、郡には「郡是(ぐんぜ)」が必要という意味を込めて社名が命名された(1896年)。地域への貢献として、蚕糸業農家の子どもたちが通う学校や講習所を作り、若者への十分な教育も施していった。これら歴史の詳細は、グンゼ記念館で公開されている。

  昭和に入り蚕糸業は低迷期へ。そこで同社では、戦後になってから肌着の製造に着手していった。

グンゼの技術は下着以外へも

  記念館向かいのグンゼ博物苑内は、繭を貯蔵していた蔵を展示施設にしている。蚕糸業の歴史からファッションの変遷、同社の技術を生かした下着事業以外の事業も紹介。同社では、パソコンのタッチパネルやペットボトルの包装フィルムなど様々な製品の製造にも携わっている。

  「歴史蔵」では、蚕が吐糸し繭を作る過程がわかりやすく説明され、「尊いいのちをいただいて生糸ができている」ことが、子どもから大人まで学習できる。

  ストッキング一つをとても、興味深い展示が並ぶ。かつてストッキングは、太ももまでの長さで作られていたが、ミニスカートの流行と共に、パンティストッキングに変化し、多くの女性に愛用されている。

女児ブラジャーは下着を知る第一歩

グンゼ下着

養護教諭対象にモニターを募集している
「下着指導キット」。 成長段階に応じた
ジュニア用ブラジャーの仕組みや大切さがわかる。

  また、女性の下着として必需品であるブラジャーは、かつて「乳押さえ」と呼ばれていた。今よりもカップが小さく、ワイヤーも以前は入っておらず、同社では昭和40年頃にはワイヤー入りが製造されていた。

  それが、21年前からはジュニアブラジャー(Pied Clair)の製造も行っており、成長段階に応じた3ステージのブラジャーが販売されるまでに発展している。

  同社は教育家庭新聞社と共に、「下着指導キット」を養護教諭に貸与し、胸の健やかな成長がいかに大切かを紹介している。子どもたちにとって、気恥ずかしい部分であるからこそ、保護者、学校が連携して教えていくことが大切になる。

  「下着指導キット」は、3ステージのブラジャーと、指導用の資料をセットにしたもので、養護教諭モニターを募集中(モニターの申し込みは教育家庭新聞HPへ http://www.kknews.co.jp/monitor/gunzeindex.html)。

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■グンゼ記念館=開館日・金曜日、入館無料
■グンゼ博物苑=開館日・木〜日の4日間、入苑料・大人300円、中学生〜大学生200円、小学生100円
※共に午前10時〜午後4時まで
http://www.gunze.co.jp/gunzehakubutu/

【2012年8月20日号】

 

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