リーダーに学ぶ 経営観/教育観

【第2回】<前編>子育てが楽しいと思える社会の実現を 放課後に育む子どもの"人間力"―株式会社キッズベースキャンプ 島根 太郎 代表取締役社長

株式会社キッズベースキャンプ 島根 太郎 代表取締役社長

株式会社キッズベースキャンプ
島根 太郎 代表取締役社長

1965年東京都生まれ。中央大学商学部貿易学科を卒業し、クリスマス輸入雑貨事業、自然食事業等を経て2003年(株)エムアウトに入社。05年よりキッズベースキャンプ事業に携わり、06年5月より同事業部長に就任、07年9月より、分社化により現職。

小1の壁と向き合い 06年に桜新町に誕生

 ワーキングマザーがようやく保育園を見つけ、保育園に子どもを預けながら働き、ようやくその生活に親子共に慣れてきた頃、「小1の壁」が訪れる。1600時間ある小学生の放課後の時間(長期休みを含む)、どのように子どもの安全を守るのか。公的な学童保育は存在しているが、その数や質が不足していることもまた現状だ。

   それら社会問題の解決に向けて、2006年に民間学童保育事業としてキッズベースキャンプ(以下=KBC)が、東京都世田谷区桜新町に誕生した。

   この事業を立ち上げたのは、自身も2児の父として子育てに奮闘中だった島根太郎代表取締役社長だ。自身の息子が「学童保育に行きたくない」と言い出したことも、事業発案のきっかけだったという。当時は、エムアウトという企業に属していた島根社長。そこでは、社員一人ひとりが何かを生み出す仕事を考えていた。それを事業化し、起業家として巣立っていく。

柱は"子育て支援"

 島根社長は大学を卒業してからエムアウトに入るまで4つの会社で働いた。「総じて、子どもと女性に喜んでもらう、BtoC(企業から個人へのビジネス形態)の仕事でした。ですので、新規事業をと思った時は、"教育事業"と"子育て支援"どちらを柱にするか考えました」。

 そして「子育てが楽しいと思える社会の実現」をミッションに、「未来社会を支えるユニークな人材を輩出する」をビジョンに掲げ、KBCを運営していく。「子どもはいろんな人に関わって、その中で知恵を得ていくのが一番です。社会につながる人間力を育てることが目標です」。

 1日平均約10名のコミュニティから始まったKBC。「こんなサービスを待ってました」という保護者が子どもと来てくれた。「桜新町の駅がある東急電鉄の沿線には、新しい物を受け入れていく素地があるような気がしました」。プラス、自身の母の実家がこの桜新町だったことから、土地勘もあった。その2つが桜新町を選んだ理由だという。

東急の子会社として 美しい時代を作る

 その「東急電鉄沿線」であったことが功を奏し、08年には新生KBCとなった。その年の9月にエムアウトから分社、そして12月に東急グループの100%子会社となったのだ。東急中堅社員のワーキンググループとのつながりから、この子会社化に発展した。

 KBCの理念を理解してくれた東急の子会社化は、東急沿線上にKBCを増やす原動力ともなった。「東急グループは"美しい時代へ"と掲げ事業を展開しています。とても紳士的な会社で、沿線の価値を向上させることを深く考えている企業でした」。

  今や東急沿線中心に、20か所に広がるKBC。子どもたちの人間力を育むことだけではなく、そこで働く人材の育成にも力を入れている。

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【2013年8月19日号】

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