連載:親子で楽しむ日々の新聞活用 35回

夕刊を読む―その役割とは

夕刊は小中学生にお勧め 世界を知る時間帯の新聞

 東京や大阪などの大都市やその周辺に住む人にとっては、夕刊が届けられることは当たり前になっていますが、実際は夕刊のない地域のほうが多いのです。

  また、夕刊を発行している新聞社は全国紙、北海道新聞、河北新報などのブロック紙と新潟日報、静岡新聞、神戸新聞、熊本日日新聞、大分合同新聞など県紙(地方紙)の一部だけです。全国紙の産経新聞は2002年3月末で大阪本社版を除き夕刊を廃止しましたが、ここ数年で夕刊を廃止した新聞がいくつもあります。

  日露戦争が起こった際、新聞各社は戦況速報のため数多くの号外を発行しました。これが、夕刊の発行を活発にさせた要因のようです。夏目漱石が、小説「明暗」(1916年)の中で、「顔の先へ付けられた夕刊を除けて」と書いていることからも、夕刊が一般化していたことが分かるでしょう。

  夕刊の第1面の欄外の左上に「版」が書かれています。それは1〜4版で、朝刊では、11版〜14版ですが現在は1版、11版の地域はほとんどないでしょう。なぜ、夕刊のほうが若い番号なのでしょうか。夕刊の記事は午前0時頃から午後0時頃までのニュースが記事になり、新聞の制作でいうと夕刊のほうを早く作るからです。

  私は、小・中学生にはまず夕刊を読むことを勧めます。その理由は、「政治や経済などの難しい記事があまりないこと」、「ページ数が12〜16ページ程度なので短時間で読める」、「小・中学生にとって朝よりも食事前の夕方のほうが時間的な余裕があり適している」、「グローバルな時代なので、国外の出来事や動きをリアルに知ることが必要」の4つです。

  4つ目についてですが、日本とニューヨークとの時差は14時間、ニューヨークの午後0時は、日本では翌日の午前2時ですので朝刊には載せられません。イギリスの午後3時は日本では真夜中の12時、これ以降に起こった出来事は大事件以外は、朝刊に間に合いませんので、夕刊に載せられることになるのです。

  このように考えると、子どもたちだけではなく大人にとっても夕刊は侮れません。夕刊が消えつつあるのは、新聞離れ等による経費削減のためですが、多くの人が夕刊の必要性を認識してほしいと思っています。 
(全国新聞教育研究協議会顧問・鈴木伸男)

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【2013年11月18日号】

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