特集

南九州教育旅行現地視察視察会

教育旅行の学びを広げた九州新幹線 

 九州新幹線が全線開通してからまもなく丸4年。新大阪から鹿児島中央駅までを最速で3時間42分で走り、南九州は今や関西方面から近い存在となっており、修学旅行の数も増加している。(一社)九州観光推進機構は、関西中国エリアの教員を対象に、「南九州教育旅行現地視察会」を実施。温暖で自然豊か、そして日本の歴史・文化を大きく発展させたともいえる南九州の学習素材を体験し、今後の修学旅行のあり方を考えた。

南九州に足を伸ばす
歴史の舞台を実感 豊富な学びの素材<熊本>

 宮崎を後にし、天草諸島を目指す。天草諸島は大きく上島(上天草市)と下島(天草市)に分かれており、宇土市より「天草五橋」を経て、陸路で渡った。

イルカクルーズ
人間とイルカの共存を実感するク
ルージング
イルカが暮らす豊かな海をクルーズで実感

 4号橋「前島橋」のたもとのマリンスポーツエリアから、(株)シークルーズが実施している、イルカクルージングに乗船。同社のクルーザーの最大は88名乗り。穏やかな海域で揺れも少なく、トイレも完備しているので、安心して乗船できる。

 早崎海峡(島原半島と天草諸島の間)には、約300頭のバンドウイルカが生息し、1年を通じて約98%の確率で遭遇できる。この海域は昔から素潜り漁が中心で人間とイルカが共存できている上に、エサとなる魚介類が豊富。サメなどの外敵も少ない。

 イルカウォッチングの他、天草五橋クルージング、シーカヤック、ペーロン体験なども可能。中国に由来するボート「ペーロン」は長崎や沖縄(ハーリー)で体験する修学旅行生も多いが、熊本県でも盛んだ。1艇に16名が乗船し、太鼓と銅鑼のリズムに合わせてオールを漕ぐ。クラスやグループの対抗戦を通して友情や団結が深まる、教育旅行ならではの体験。天草青年の家の指導を、年間75校以上が受けている。

熊本城
籠城戦の経験から清正公は場内に
120以上の井戸を掘った。ここも
その一つ
天草の歴史をひも解き道徳のアプローチも

 「天草」と聞いてまず思い浮かぶのが、天草四郎時貞が総大将として幕府と戦った、天草・島原の乱だろう。天草諸島には四郎やキリスト教にまつわる資料館などがあり、歴史の学びを深め、歴史の舞台を実感することができる。

  「天草四郎メモリアルホール」では、キリスト教伝来から天草・島原の乱までを紹介。キリシタンの反乱と捉えられている節があるが、幕藩体制下の悪政と重い年貢に対する農民一揆でもあった。館内の映像ではその概要をわかりやすく紹介し、歴史学習はもちろん自由と平等という観点で、道徳からのアプローチも考えられる。小規模だが中身が濃く、「想像以上にわかりやすかった」との声も聞かれた。

熊本城の歴史を施設・人から学ぶ

 天草から熊本城へ約1時間半。まずは、熊本城の下にある「桜の馬場 城彩苑」内にある歴史文化体験施設「湧々座」で、熊本城と熊本の歴史を学んだ。ここは九州新幹線の全線開通と共にオープンした新しい施設で、最新の技術を駆使した素材が豊富だ。

 ともすれば「見て終わり」になってしまいがちな城の見学だが、子供たちが興味を持って見学できるように「見て・聞いて・触って」事前学習として活用できる場所。2階は120人が収容可能な映像展示室で、映像に合わせてキャラクターと役者が演じる。

 城内は、ボランティアガイド「くまもとよかとこ案内人」の朝永清寿さんが案内してくれた。城内の見所や歴史的な場所を、滞在時間に合わせて案内してくれる。加藤清正公が苦心して作った堅牢で美しい石垣、細川家の栄華、西南戦争時の籠城など様々な歴史の足跡が残る。

 荘厳で華麗な雄姿が再現された本丸御殿も、必見だ。全国にもあまり例がないといわれている御殿への正式な入口である地下の「闇り(くらがり) 通路」、付書院を備え正面床には中国宮中の物語を描いた障壁画を備える最高格式のしつらえがなされた「昭君之間」、100畳を超える大広間など、歴史の面影を垣間見ることができた。

 復路は15時半に熊本駅を出発し、岡山18時、新神戸18時30分、新大阪18時45分に到着。南九州がグッと近くなった。

 

【2015年2月16日号】

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