成長期の子どもたちの“気になる”胸のふくらみ
「下着指導キット」の活用と肌着の大切さを学ぶ

 薄着の季節になり、女子児童・生徒の膨らみ始めた胸が気になり、体育や運動会などのタイミングで養護教諭や保健体育教諭がブラジャーの着用について声をかけることもあるだろう。だが、思春期の女子への声のかけかたは難しいと聞く。グンゼ(株)は、ジュニアブラジャーの大切さを伝える指導の助けになってほしいと、養護教諭を対象に「下着指導キット」(以下:キット)のモニターを実施している。活用中の養護教諭とグンゼの快適工房担当者から話を聞き、指導のポイントを探った。

学校からの発信も大切 気軽に試せるものに

■横浜市立中村特別支援学校 宇宿扶美子養護教諭

下着キット

宇宿養護教諭が重宝した
「リーフレット」。
ブラジャーと共に役立てた

 キットのモニターは小学校の応募が圧倒的に多いが、近年、特別支援学校からの希望も増えている。横浜市立中村特別支援学校の宇宿扶美子養護教諭は、今年5月に初めて活用した。

  きっかけは市の養護教諭部会で研究した性教育。保護者向けに生理の手当てについて指導を行っている他校の事例などを聞き、自校の保健指導で何ができるかを考えた時「重い障がいのある肢体不自由の子が通う特別支援学校なので、車イスに座った時の胸の膨らみが気になったことを思い出しました」。

ボタンタイプで痛くなりにくい

  その頃、全国大会でキットのモニターを知った。キットに入っているステージ1から3のブラジャー(ステージについては後述)を見てみると、ステージ3は着脱がホックではなくボタンになっていることに気づいた。

  「横になって過ごすことが多い子は前開きがベストですが、後ろでもボタンタイプは痛くなりにくいようです。希望する家庭に貸し出しましたが、リーフレットのチャートも見ながら、サイズ感がわかったようです」。しめつけず・優しく胸を守るというジュニアブラジャーの特徴も、特別支援の子どもたちにとっては重要なことだった。

女の子から女性へ 意識する大切さを

  重い障がいのある肢体不自由の子どもたちは、兄弟姉妹など多くの家族が介護に関わる。ブラジャーをつけていることに気づいた兄弟が、驚いたということもあるそうだ。実年齢と生活年齢に差があるため、気づきにくいこともあるのだろう。だからこそ、家族の理解が必要になる。

  キットを保護者に提示し互いに話したことで、「女の子から女性へ」という時期を意識する大切さを宇宿教諭も改めて確認でき、「下着について学校から発信できることもあると感じました。見本があるので、あの子にもどうだろうか、など考えるようになりました」。

  誰しもが、年齢相応の身体の発達を遂げる。「保護者に少しずつ知ってもらい、気軽に試すことができたらと思っています。どれが自分に合うか合わないかを体験できるものですので、活用しながらその子らしさを出していけるのではないでしょうか」。

身体の成長を感じ自信を持てる子に

■グンゼ快適工房 上田琴美氏

  実際にキットをどのように児童・生徒や保護者に説明したら良いのだろうか。ジュニアブラジャーの重要性、また、肌着を着用する意味について、グンゼ快適工房の上田琴美さんに聞いた。

‐ブラジャーの役目について、指導のポイントを教えてください

  主にジュニアブラジャーは、「胸を守る」役目があります。成長途中の胸は敏感で痛みや違和感があります。そのため、ブラジャーが柔らかくクッションの役割を果たし、外部の刺激から守ってくれるのです。

  また、ブラジャーは大人の女性への変化を認識するものでもありますので、ジュニアブラジャーは、身体の成長を感じ、大人の女性へ変化する喜びを感じるきっかけになるのではないでしょうか。お気に入りのブラジャーを着けることも、喜びとなるでしょう。

  さらに、ブラジャーを着用することで丸みを帯び、凹凸のあるラインにすることができますし、胸は女性の象徴でもあるので、形作ることで女性らしさがアップして自分に自信が持てることもあるでしょう。

‐肌着を着用した方が良いのでしょうか

  肌着は、春から夏は衣服内の蒸れを軽減し、汗を吸ってくれますので、快適性がアップし「過ごしやすくなる」と考えられます。着用せずに暑い屋外と冷房の効いた涼しい屋内を行き来すると、衣服内の温度や湿度が調整されず、身体に負担がかかり、夏風邪や夏バテの原因になる可能性もあります。秋から冬の寒い時期には、適度にフィットする肌着を着用することで、効率的に身体を暖めることができます。

‐季節的な役割以外にも何かありますか

  身体からは不感蒸泄といって、24時間気づかないうちに水分が蒸発したり皮脂が分泌されています。それらを肌着で吸収し、毎日着替え、洗濯することで、肌が清潔に保たれます。

  また、肌着を着用せずアウターに汗が染み出ていたり、汗でシャツが身体に貼りついている人を見たことはありませんか。美しくない光景ですよね。さらに男性でも胸(乳首)が見えたり、女性ではブラジャーが透けると恥ずかしいですし、周囲も目のやり場に困ります。周りの人に不快感を与えないエチケットでもあります。特に女の子は男性から見られる、狙われる可能性もありますので注意が必要です。

ジュニアブラジャー「pied clair」 成長に応じた3段階

 グンゼの「pied clair」では、キャミソール、タンクトップタイプの『ステージ1』は、胸の部分が二重の生地になっているものや不職布やパッドが入っており、乳頭がピンクになり痛みを伴う時期におすすめ。

  『ステージ2』は胸の発達が著しい時期に。肩紐が伸縮しアンダーバストがきつくないことが特徴。そこからさらに胸の膨らみの下にバージスラインが描かれた時期には『ステージ3』へ。大人のブラジャーに近いが、発達途中なので大人とは異なった浅いカーブを描いたもの。

グンゼ「下着指導キット」モニターについてはこちら>>

【2012年7月16日号】

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