学校図書館特集

コミュニケーション能力とプレゼン能力が育まれる―ビブリオバトル

始まりは大学研究室 簡潔な「公式ルール」

 近年注目が集まっている読書活動として挙げられるのが「ビブリオバトル」。もともと京都大学の研究室で、勉強会の本選びの方法として考え出された。

 ゲーム性があり、そのシンプルなルールと楽しみながら気軽に取り組めることから、大人から高校生、さらには小学校高学年まで、全国的に活動が広がっている。教育現場の他、図書館や書店などでも開催され、今月末には東京で大学生の全国大会とも言える「首都決戦2013」が開催されるほどだ。「首都決戦」の開催は今年で4回目になる。

 具体的な活動方法は、4つの「公式ルール」に基づく。(1)発表参加者が読んで面白いと思った本を持って集まる、(2)順番に一人5分間で本を紹介する、(3)それぞれの発表の後に参加者全員でその発表に関するディスカッションを2〜3分行う、(4)全ての発表が終了した後に「どの本が一番読みたくなったか」を基準とした投票を参加者全員一票で行い、最多票を集めたものを「チャンプ本」とする。

 発表時に原稿やレジュメ、スライドを用意しない(メモ書きや本への付箋などは可)ことが原則で、5〜6人から大人数まで開催が可能だ。

チャンプ本投票で育む コミュニケーション能力

 本を読むことに加え、公式ルール(2)で「プレゼンテーション能力」を伸ばすことができる。

 さらに注目したいのは、(4)の「チャンプ本」を投票で決める、という点。この要素があるため、まず発表者が本を選ぶ段階で、自分が好きな本というだけでなく、紹介相手となる参加者(=投票する人)を意識して本を選ぶことができる。ごく自然に"他者の価値感"を推しはかろうとする視点をもつようになるのだ。

 そして、発表者は参加者に伝わるように「語る」努力をし、参加者も投票のため熱心に発表者の話を聞く。それぞれの表情などを注意深く観察、相手の反応を読みとろうとするようになり、プレゼンテーション能力と共にコミュニケーション能力を育むことにつながる。

取り組む際の注意点 読んで"理解"が一歩

 「チャンプ本」を決めることを楽しむには、競うことに夢中になりすぎないように、配慮や指導が必要、と全国SLAの森田盛行理事長は話す。「特に小学生では、勝ち負けにこだわってしまう場合がある。まずは本を読んで、きちんと理解することができる力や読書を純粋に楽しめる力を育むことを視野に入れた指導が大切」。

 全国SLAが発行する壁新聞「としょかん通信」9月号では、小学生と中・高校生版で「ビブリオバトル」を取り上げている。小学生版では取り組みやすいよう、公式ルール(2)の「本の紹介」を3分間とする"ミニ・ビブリオバトル"を掲載。(3)の質問のコツや、(4)の投票の際に小物を使う演出も紹介した。

普及委員会がサイトで 詳細な情報を提供

 ビブリオバトルについての情報発信や開催に協力している、ビブリオバトル普及委員会には、中学・高校での活用について質問が寄せられているという。

 実施している他校ではどのような授業時間に取り組んでいるのか、という質問に対して同委員会は、「国語科や総合的な学習の時間、図書委員会活動など学校によってさまざま。各校のカリキュラムや学校活動の特色に応じて、最も当てはまりやすいところを探されるとよいのでは」と回答している。

 発表やディスカッションの時間についても相談を受けるそうだ。"5分は長い"という意見も届くというが「最初は5分ともたなくても中高生であれば、2回、3回と繰り返すうちに5分間のプレゼンができるようになってくる。あらすじだけでなく、なぜその本をみんなに勧めるのか、ということまで話すためには、5分が必要」という。

  なお公式ルールなどについては、同委員会公式サイト(http://www.bibliobattle.jp/)や、「ビブリオバトル 本を知り人を知る書評ゲーム」(谷口忠大/著 文春新書)などの書籍も発刊されている。

ビブリオバトル公式ルール
(1)発表参加者が読んで面白いと思った本を持って集まる
(2)順番に一人5分間で本を紹介する
(3)各発表の後に参加者全員で2〜3分のディスカッションを行う
(4)最後に参加者全員一票で「一番読みたくなった本」を基準に投票し、「チャンプ本」を決める
ビブリオバトル普及委員会公式ウェブサイトより

【2013年11月18日号】

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