”情報教育課”新設 ―文部科学省生涯学習政策局

豊嶋基暢課長
文部科学省
情報教育課
豊嶋基暢課長

 7月1日、文部科学省生涯学習政策局に「情報教育課」が新設された。8月1日、同課課長に就任した豊嶋基暢氏に、情報教育課新設の理由と今後の取り組みについて聞いた。

推進体制を強化 普及・一般化図る

  学校における情報教育の推進については、これまでは生涯学習政策局参事官の担当でした。「情報教育課」を新設したことにより、情報教育の推進体制の強化を図り、今後の取り組みをより一層推進していく方向性をより明確に示すことができたと考えています。

  学びのイノベーション事業が最終年度を迎えています。この事業は、個別学習や協働学習などの学習形態を推進していく上で、児童生徒が情報端末を活用することが有効である、という考えから、「教える側」だけではなく「学ぶ側」と両方によるイノベーションのためにスタートしたものです。今後、子どもたちが身につけるべき能力を育成するために必要なものは何かと考えたときに、その一つが学習者用情報端末だったのです。

  この背景には、長時間の持ち運びが可能になるなどの軽量化、バッテリーの高性能化、通信環境の整備など情報端末の技術的な進展や、情報をうまく扱えることが必須になっているという社会的な要請もあると思います。

  ここでポイントになるのは、個人からの発信という視点です。教員は、これまでの一斉授業中心の授業の方法とは異なる、児童生徒が発信し、子ども同士で教え合い学び合いながら行う授業に取り組む必要があります。この授業スタイルは一斉授業とは本質的に異なるものです。

  実証校数につきましては、現在小・中学校、特別支援学校あわせて全国47都道府県中20校ですが、今後全国的に普及・浸透させて一般化していくためには、学校数をもっと増やしていくなど、教員や児童生徒にとってICTをより身近なものとする必要があります。

  まさに種を植えて芽が出始めたばかり。これをどう育てていくのかが「情報教育課」に課されていると言えます。

  また、「教育の情報化」についての本来の目的が十分に伝わっていないのではないかと思います。「全てデジタル化するのか、一日中端末をいじっているのか。そうなるとと読み書き能力が疎かになる」といった誤解があるのではないでしょうか。「教育の情報化」の目的について、誰にとっても理解しやすいように説明をさせて頂き、応援してくださる人や、推進していきたいと思う自治体を増やしていくことは、普及・一般化していく際に必要な過程の1つと考えています。

”教育””情報技術の進展”双方のマッチングを図る

 今年度の当初に教育に関する4つの大きな動きがありました。これらの4つの方向性は、いずれも6月14日に閣議決定されたものです。

  「経済財政運営と改革の基本方針〜脱デフレ・経済再生〜」では「教育再生」の中で、「世界トップレベルの学力の達成等に向け、英語教育、理数教育、ICT教育、道徳教育、特別支援教育の強化など社会を生き抜く力の養成を行う」こととしています。

  また、「日本再興戦略‐JAPAN is BACK」では、「ITを活用した21世紀型スキルの修得」の中で、「2010年代中に1人1台の情報端末による教育の本格展開に向けた方策を整理し、推進するとともに、デジタル教材の開発や教員の指導力の向上に関する取組を進め、双方向型の教育やグローバルな遠隔教育など、新しい学びへの授業革新を推進する」こととしています。

  さらに「第二期教育振興基本計画」では、ICTの活用等による新たな学びを推進すること、教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数3・6人、教材整備指針に基づく電子黒板・実物投影機の整備、超高速インターネット接続率及び無線LAN整備率100%、校務用PC教員1人1台の整備を目指すとともに、教育クラウドの導入やICT支援員、学校CIOの配置を促すこととしています。

  最後に、「世界最先端IT国家創造宣言」では、教育環境自体のIT化により、全ての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校で教育環境のIT化を実現するとともに、学校と家庭がシームレスでつながる教育・学習環境を構築することとしています。

  なお、これらに先駆けて、自由民主党の教育再生実行本部では、4月8日に、「グローバル人材育成のための3本の矢」として、「英語教育の抜本的改革」「イノベーションを生む理数教育の刷新」「国家戦略としてのICT教育」を掲げており、さらに、情報化教育促進議員連盟では5月23日に、「教育のICT化に関する決議」が取りまとめられています。

  このような動きを踏まえると、どのような場面で国が支援すると効果的なのか、自治体のポテンシャルを高めるにはどうすれば良いのか、どこにそのポイントがあるのかについてマッチングを図り、最大公約数を鑑みながら効能のある支援していくことが国としての大きな役割であると考えています。

  そのためには、なるべく早い段階で、実証校を始め、自治体主導で進んでいる学校・地域などにお伺いしながら、学校がどのようなことを望んでいるのか、子どもたちはどのような学習を望んでいるのかなどを実際にお聞きし確認してみたいと考えています。

  さらに学校と家庭の連携についても、通信を利用するという面で総務省とも連携が必要な分野でもあります。
ICTそのものの発展とそれにマッチした教育手法の見直しを、どう実現させていくのか。そして2020年までにどう社会に浸透させて推進していくのかが、情報教育課の大きな課題です。

【2013年9月2日】

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