連載:管理職と学校経営 校内で上手く関わる術(すべ)

校内の課題と向き合う(下)―大阪青凌中学校・高等学校入試広報部 前田勉

「着眼大局 着手小局」で活動の継続を

前田 勉 校長 義務教育のミッションを突き詰めれば、文化的な格差をなくすことにつきる。学校が目指すべき役割は、社会資源を活用し、地域社会の教育力を高め、子どもたちの格差を是正する仕掛けや特色ある取り組みを発達段階に応じて創造することだ。

  校長として9年の間に2つの中学校に勤務した。校区の実態は異なるが共通課題は類似しており、いずれも過去より様々な課題が山積。学力面や生徒指導面での課題に加え、学校に勢いがなく意欲に欠ける印象で、保護者・地域の教育力にも脆弱さが見られた。

教員のスキルUP

  セオリー通りに現状から課題を明確にすると、「型ハメと評価の拙さ」「全校生徒を対象とする積極的な生徒指導の不足」「学校づくりに対する仕掛け不足」「クラス集団づくりの弱さ」、などが浮かび上がってくる。多分にこれらは指導側、すなわち教職員に返される課題であり、授業力とともに「教師力」のスキルアップも求められた。

  校長として校内の課題を示しながら、教職員の意識改革を促すため、新たな学校づくりの枠組みを提唱するとともに、課題解決に向けて次のような具体策を明示した。

(1)最初が肝心、望ましい型ハメと評価の徹底
(2)生徒指導における共通理解と統一した指導(見る努力、気づく鋭さ、指導の速さ)
(3)生徒会活動の活性化
(4)年間を通じて登校指導時のあいさつ運動と集団生活上のルール徹底
(5)副担任の支援役割の明確化
(6)授業研究の充実と工夫
(7)PTAと連携した家庭学習の定着キャンペーン「マイ学」(※)の実施

校内世論を高め 社会資源を活用

  また、校内世論を高めるために、反社会的な問題行動には毅然とした指導を徹底し、加害者特定と責任の明確化を盛り込み再発防止につなげた。カウンセリングマインドに徹しながら、関係諸機関やSC、SSWなどの社会資源も活用。

  保護者・地域へは丁寧な説明責任を果たしながら、学力・生活面でのボトムアップを図り、クレーマーに関しては複数対応を心掛け、教育は信頼関係で成り立つことを前提に、無理難題に対し安易な妥協はしないことを校区の共通理解とした。

生徒会を活性化

  初任校では生徒会活動を活性化することで、「ジャスミン運動」(※)へとつながり大きな成果が得られた。

  課題解決の要諦は「着眼大局 着手小局」、着眼点は全体像を捉えながらも、着手は些末で確実にやりきれることからスタートし、継続性を大切にした。日頃から双方向のコミュニケーションを重視し、機会を設けては勤務時間外の赤提灯セラピーも、若手とともに盛り上げ努力を行った。

  教育のみならず全ての組織で改革や成功を収める必要条件は、一人ひとりのベクトルの向きを一致させることである。

(※)クリックすると説明PDFが開きます。「マイ学」(4MB)・「ジャスミン運動」(3MB)

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前田 勉
前:大阪府高槻市校長会会長  現:大阪青凌中学校・高等学校入試広報部

【2013年7月15日号】

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