ペーパーレス会議システムとiPadで協同学習―リコー

 奈良女子大学附属中等教育学校(小林毅校長)では、平成24年4月からペーパーレス会議システム「RICOH TAMAGO Presenter」とiPadを利用した、協同的学習の取り組みを行っている。同校の二田貴広教諭(国語科)に授業活用の目的と計画を聞いた。

RICOH TAMAGO Presenter

  「RICOH TAMAGO Presenter」は、iPad上で動作するペーパーレス会議・プレゼンテーション用アプリ(無料)だ。資料ファイルをネットワーク上で共有、同時に書き込みもできる。

教育IT
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iPad上で資料を共有、同時に書き込んだり
プレゼンができる

  「TAMAGO Presenter」活用のきっかけについて二田教諭は、「従来の教育方法にICTを取り入れることで、学習に発展性を生じさせやすくなることや、分かりやすさの向上につながることを明らかにしたかった。さらに、教育実習生もこの学習活動に参加することで、教員のICT活用能力を育成するための方法を構築したい」と話す。

  学習活動場面としては、2場面を用意した。

  1つは、OECD東北スクールプロジェクトによる協同学習だ。これは、新しい東北をこれから作っていく中高生の探求力・発信力を育成する目的でOECD(経済協力開発機構)が2012年3月から開始した活動だ。2014年、パリのOECD本部で東北と日本の魅力と創造的復興をアピールする予定で、それに向けて被災地の中高生が2年間かけて学習を重ねていく。同校の生徒は、約20名(後期課程4年生=高校1年生と前期課程3年生=中学3年生)が参加しており、OECD東北スクールにおいて「明確なメッセージを込めたビデオレターを編集する」ことを目的に学習を進めている。

  今年度は、5年生が制作したビデオレターと、編集前のインタビュー画像を比較視聴し、その編集意図についてグループに分かれて考えたり、各人が編集したビデオを視聴し合い、編集意図とビデオ内容が合致しているかを検証したり、より良い編集アイデアについて、話し合いを重ねながら「情報発信」について学んでいく。

  その話し合いの過程で「TAMAGO Presenter」とiPadが活躍する。グループで考えをまとめ、iPad上にメモしたり、他のグループの発表を聞きながら、発表内容に修正点や気づいたことをメモに加えたりすることができる。他グループの発表や意見を随時取り込みやすくなったことから、生徒の考えが厚みを増し、重層的に発展していくことが期待できるという。

ホワイトボードとの違いも検証

  2つめの学習場面は「情報と表現」(前期課程2年生・125名)での協同的学習だ。情報の受信・発信に関わるリテラシー育成が目標。学習の素材は、新聞の「コラム」と「記事」、テレビの報道番組など。

  新聞の「コラム」と「記事」の違いについての話し合い活動や、報道番組の編集意図を考える活動の中で、グループでの話し合い、発表、意見や考えの練り直しを展開していく道具として「TAMAGO Presenter」とiPadを活用している。

  さらに本授業においては、小型ホワイトボードとiPadを使うグループに分け、それぞれのメリットとデメリットについて、生徒自身で検証していく予定だ。

  二田教諭は、「発表する生徒と発表を聞く生徒との間に双方向性の意見交流がアクティブになり、より理解が深まりやすくなる。視覚的に提示できるので、話を聞くよりも文字を読むことのほうがより容易に内容を理解できる特性を持っている子どもにとっても、話し合い形式の授業に参加することができる」と考えている。

  教職課程を履修している大学生も参加、生徒と同様の活動を行っており、ICT活用指導力を身に付ける方法の構築を目指す。

ビジネスアプリの卵が教育現場で大きく育つ

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リコー田中氏

「TAMAGO Presenter」は、リコーが進めている「TAMAGOタスクフォースプロジェクト」から生まれたもの。ユーザーの意見、要望を聞きながら、「卵」を孵化し成長させていくことを目指しており、EDIXでは「TAMAGO Labs.」で公開中のアプリが展示される。「TAMAGO Presenter」はその第一弾で、Wifiルーターがあれば、このアプリがインストールされたiPadで、従来紙に印刷して参加者に配布していた資料のファイルをネットワーク上で共有できる。

  「発表者」モードと「参加者」モードがあり、発表者が手元のiPadを操作して資料をめくると、他の参加者のiPad上に表示されている資料も同調して頁がめくられる。画面上の資料に発表者が書いたメモは、参加者のiPadで表示されている資料にも反映される。「参加者」モードでは、自分のiPad上の資料にメモをすることができ、書き込んだメモはそれぞれ保存ができる。リコー製のプロジェクター*をネットワークに接続することで、共有した資料をプロジェクターで投影することもできる。

*対応機種=IPSiO PJ
WX4130N/WX3231N/X3241N(2012年4月現在)

もう1つのTAMAGO

  「TAMAGO Clicker」は、事前にサーバーへ登録した紙媒体をiPhoneやiPadで撮影すると、リコー独自の画像認識技術でどの紙媒体のどのページのどの部分を撮影したかを識別し、撮影した部分にリンクされているWeb情報にアクセスすることができるというアプリだ。紙媒体とWeb情報をリンクさせる技術には2次元バーコード(QRコードなど)があるが、印刷前の設定が必要だ。「TAMAGO Clicker」はサーバーへのリンク情報の登録は印刷終了後にすることができるという自由度が新しい。子どもが模造紙に書いた資料にも後からリンク情報を設定することができる。

  リコーの田中高信氏は「TAMAGO Labs.で公開中のアプリがどのように成長するかは、実際に利用するユーザー次第。EDIXでは、2つのTAMAGOをたくさんの先生に体験してもらいたい。元はビジネスユースのアプリが教育現場でどのように成長する可能性があるのか、ご意見をうかがうのが楽しみです」と話す。ブースでは、世界最小・最軽量の超至近投影プロジェクター「IPSio PJWX4130」や遠隔映像コミュニケーションシステムも紹介している。               


■EDIX 注目ブース紹介

 

【2012年5月7日号】

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