1人1台のTPCで「つながる」授業―湘南ゼミナール

 教育プラットフォーム「FLENS〜つながる、学習」(以下、FLENS)は、ネットワークと子ども1人1台端末の現実的なメリットを示唆する試みだ。4月18日、湘南ゼミナールあざみ野教室(神奈川県)で、FLENSを活用した「算数特訓」の授業が公開された。

FLENS 湘南ゼミナール

教育IT
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校舎をまたがって競い合い、
リアルタイムに順位もわかる。
筆算もTPC上でできる

  6年生の児童全員(20人)にタブレット端末(以下、TPC)が配布されると、児童は1人ひとりログイン。今日の体調や“やる気”などに答えたら、まずは百マス計算でウォーミングアップだ。スピードが重要である百マス計算は解答を書き込むペンの動きも早いが、誤認識はほとんどない。

  その後、「分数どうしの計算」や「小数点のある計算」など、その日のテーマに沿った計算問題(6分間×4回)に取り組む。一斉に問題をスタート、正解も不正解もその場でわかるので、間違えた場合はすぐに解き直しができる。筆算はTPC上の空きスペースにすることができる。

  他校舎の生徒もFLENSで同時に同じ問題に取り組んでおり、テスト終了後は、クラス内での順位はもちろん、グループ内での自分の順位、校舎ごとの対戦成績がすぐに分かる。当日FLENSにログインしている子どもは、これまでの成績を基準に自動的にグループ分けされている。この仕組みについて教育IT湘南ゼミナールでは、「同じ校舎内だと順位が固定されがちだが、校舎をまたいでグループ分けすることで、同程度のレベルの子どもと競うことができる。事前にその日のテスト内容も発表されているので、家庭学習のモチベーションもアップしやすい。解答時間などのデータも蓄積でき、1人ひとりのわずかな成長を見逃すことなく指導に活かすことができる」とそのメリットを話す。

  終了時間になるとTPCは反応しなくなり、見直しタイムだ。それぞれの問題で何分時間がかかったのかもひと目で分かる。間違った問題をクリックすると、筆算の記録がそのまま残っており、短時間で効率的に見直し学習ができる。

学習者用端末 JL‐T100

  神奈川県の進学塾である湘南ゼミナールは、塾の激戦区と言われる神奈川県において後発組ならではのスタンスで新しい試みに取り組んでおり、「FLENS」もその1つ。子ども用のTPCは手書きしやすく使いやすい大きさにこだわり、シャープの協力で開発されたワイド液晶10・1型学習者用端末「JL‐T100」だ。

  現在稼働しているものは「FLENS算数特訓」と保護者用アンケートサービスだが、今後は英単語や理科、社会、国語の知識問題など、基礎学力を向上させる分野を開発・提供するほか、双方向なライブ授業を展開できる遠隔授業システム、家庭学習との連動コンテンツの配信などを予定している。また、保護者がネットワークに参加することで、塾での取り組みが分かるようにする。

  現在2000人のネットワークで展開しているが、今後は他塾や学校、さらには時差の少ないアジア地域と展開し、対戦型学習サービスや遠隔地補習サービスなどを展開していく考えだ。

  文部科学省と総務省によって、生徒1人1台の個人端末とネットワークを活用した学習の可能性が検証されている。ネットワークを活用した協働学習に期待されていることは、児童生徒同士の「学び合い」や「意見・情報交換」がグローバルに展開されることによって、今日的な課題を解決の方向に導いていく、という学習スタイルの構築だ。「FLENS」はその前段階として、「つながる」ことの「実感」や「喜び」、デジタルデータの蓄積によるメリットや効果をすぐに実感できる現実的な取り組みと言えそうだ。               


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【2012年5月7日号】

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