連載

iPadの教育活用(6)―文教大学教育学部准教授 今田晃一

教育方法の質的な転換の兆候を実感

iPadの教育活用  今までコンピュータ等の機器を使った授業においては、まずその操作方法を説明することから始めなければならなかった。しかし、iPadやiPod touch等は統一的で直観的な操作性の向上が図られ、小学生でも操作方法から学び合うことが可能である。長田朋之教諭(東京都私立光塩女子学院初等科)は、授業に臨むにあたりネットワークや機器の整備等の学習環境を徹底的に整えた上で、吟味した必要最小限の説明・指示を与える。

ツールを相互作用的に活用する

  その後、グループ学習における学習者同士の学び合い、高め合いを促進するための机間指導、定着のための個別指導という授業スタイルの構築に努めている。同校の理科主任でもある長田教諭は、観察・実験においても学習者がツールを相互作用的に活用することをめざしている。小学校3年生にとっては、観察の録画にはiPad touchのサイズ感が、閲覧にはiPadの視認性が、そしてフィールドワークにはiPad mini の軽量感が適していることを、実践を通じて見いだし、iPadファミリーを軸とした新しい授業スタイルを模索中である(写真)。

iPadの教育

フィールドワークにおける
iPadとiPod touchの可能性を検討

iPadの教育

iPod touchは動画撮影にiPadは
ビューアーとして使い分け

  現在「理科ねっとわーく(科学技術振興機構)」等のWeb サイトには、授業や学習に役立つ様々な写真や映像、アニメーション等が豊富に揃っている。長田教諭もデジタル教材を積極的に活用するが、「今は稀有な自然現象なども簡単に視聴することができるが、自然は本来単調で退屈なもの。日常目にしている事象に対して、撮影角度や機器の機能にこだわってじっくりと観察させたい。ただ教科書で絶対に教えるべき必修事項については、今後もっと全国共通のデジタル動画教材が開発されて、教員が説明ではなく個別指導に力を注げたらいいのですが」と語る。本年8月、中央教育審議会(答申)は「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」を示した。学習から主体的な学修へ。教育方法の質的変換の兆候が、大学より早くツールを使いこなす現場の先生の中に芽生えつつあることを実感している。

 

◆iPadの教育活用―文教大学教育学部准教授 今田晃一

(1)協働学習につながるグループ学習に活用(120702)
(2)授業デザインの要は「スキル」から「感性」へ(120806)
(3)「iBooks Author」で主体的な学びと安心感(120903)
(4)アナログとデジタル 不易と流行をつなぐ(121008)
(5)Facebookを活用して 進路指導・キャリア教育(121105)
(6)教育方法の質的な転換の兆候を実感(121203)
(7)感性を活かす授業づくりを(130204)
(最終回)登校刺激としての iPad in 相談室(130304)

 

【2012年12月3日号】

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