連載

iPadの教育活用(3)―文教大学教育学部准教授 今田晃一

iPadの教育活用

「iBooks Author」で主体的な学びと安心感

 学習指導要領には校種、教科を問わず「児童(生徒)が主体的に〜」という記述が頻繁に出てくるが、学習者全員が前向きに取り組む学習を実現することはなかなか困難である。ところが2012年1月19日にApple社が発表した「iBooks Author(iPad対応のマルチタッチ教科書作成用オーサリングソフト)」によって、この課題が部分的にせよ克服された授業場面を目にするようになった。

美しく仕上がる楽しさを共有

  iBooks Authorは、パワーポイントのスライドを作成する感覚で、テキスト、HTML、静止画(3Dを含む)、動画の挿入はもちろん、インタラクティブな選択問題(2択〜6択)等を含む電子書籍が簡単に美しく作成することができる魅力的なソフトである。特にフォントは、別格の美しさである。

iBooks Author
 
iBooks Author
生徒がlBooksで作成した電子書籍
「日本文化紹介」(写真上)は
ニュージーランドの小学生に大好評

  立命館守山中学校の木村慶太教諭は、ニュージーランド・ホームステイのお土産としてiBooks Authorを用いた電子書籍「日本文化紹介」を作成した。1学期の技術科と英語科との連携による班単位での協働学習である(写真)。この学習の過程で、1人の例外もなくクラス全員が真剣に課題に取り組む奇跡のような時間を、何度となく生徒と共有できたという。前提として学習者が課題に取り組む必然性、学ぶ意義を実感できるテーマおよび状況の設定は不可欠である。その上で木村先生によると全員が主体的に学習に取り組むための条件には、(1)技能面でやるべきことがわかっていること、(2)取り組む過程で作品が美しく仕上がっていくことが実感できること、の2つがあるという。特別なスキル習得の時間が不要であり、誰もが美しい電子書籍を作成できるiBooks Authorからは、教育にとって最も重要な「下に手厚く」の志を感じることができる。しかも恩着せがましくなく。理解や技能の習得が遅い、意欲やデザイン的なセンスがやや劣る学習者に対しても、決して恥をかかせることなく、達成感を与えてくれる。安心感は教員への信頼へとつながる。

 

◆iPadの教育活用―文教大学教育学部准教授 今田晃一

(1)協働学習につながるグループ学習に活用(120702)
(2)授業デザインの要は「スキル」から「感性」へ(120806)
(3)「iBooks Author」で主体的な学びと安心感(120903)
(4)アナログとデジタル 不易と流行をつなぐ(121008)
(5)Facebookを活用して 進路指導・キャリア教育(121105)
(6)教育方法の質的な転換の兆候を実感(121203)
(7)感性を活かす授業づくりを(130204)
(最終回)登校刺激としての iPad in 相談室(130304)

 

【2012年9月3日号】

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