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iPadの教育活用(最終回)―文教大学教育学部准教授 今田晃一

登校刺激としての iPad in 相談室

iPadの教育活用  説明型の授業を前もってオンライン教材で学び、教室ではワークショップや応用的な課題を対話的に学ぶという反転学習(Flipped Classroom)が、新しい授業スタイルとして注目されている。大学だけでなく、アメリカでは数年前から小・中・高等学校にも広がり始めている。個人で学べることはICTを活用して習得し、「学校はみんなで学ぶことを学ぶ場である」という反転学習的な発想を、わが国の学校教育になじむ形で活かしていきたい。

反転学習につながる授業動画配信

  大袋中学校(埼玉県越谷市・校長大西久雄)では、50分の授業の中で、エキスとなる10分程度の内容を抜粋して動画に記録し、Webサイトで視聴できる学校独自の「授業動画配信システム」を利用者と使用時期を限定して試行している。(写真1)

iPadの教育活用
【写真1】大袋中学校授業動画配信
Webサイト「なまぼ〜画」の表紙画面
iPadの教育活用
【写真2】相談室において授業動画
配信をiPadで視聴

  同校はこの3年間、地域の様々な人や機関と連携し、授業でのICT活用、生徒指導、キャリア教育の研究に精力的に取り組んできた。不登校生徒が30名から3名にまで減少したこともその成果のひとつである。大西校長は、「授業配信システムによって、先生方の授業改善への意識がさらに高まっています。生徒の学習意欲、学力向上をめざし、学びの機会の多様化が大きなねらいです。一部の不登校生徒が学びに意欲を持ち始めています。ただ、授業全部を録画することはしません。学校に来る必要がなくなってしまいますので。実際の授業に出てみたいという登校刺激につながるように内容を吟味し、『学校では相談室でiPadでの視聴のみ』という状況の設定にとことんこだわっています」と語る。(写真2)

  本連載ではiPadの活用を中心に教育におけるデジタルの有用性を検討してきたが、動画(作成・配信・視聴)を核としたグループ学習が現時点でのキーワードだと実感している。今後もデジタルで授業そのものは大きく変わらないであろうが、協働的な学びの方法と技術を常にアップデートしていくこと。これがデジタル時代の授業者に求められる新しい課題となろう。

 

 

◆iPadの教育活用―文教大学教育学部准教授 今田晃一

(1)協働学習につながるグループ学習に活用(120702)
(2)授業デザインの要は「スキル」から「感性」へ(120806)
(3)「iBooks Author」で主体的な学びと安心感(120903)
(4)アナログとデジタル 不易と流行をつなぐ(121008)
(5)Facebookを活用して 進路指導・キャリア教育(121105)
(6)教育方法の質的な転換の兆候を実感(121203)
(7)感性を活かす授業づくりを(130204)
(最終回)登校刺激としての iPad in 相談室(130304)

【2013年3月4日号】

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