新連載

iPadの教育活用(1)―文教大学教育学部准教授 今田晃一

iPadの教育活用

協働学習につながるグループ学習に活用

 文部科学省は、21世紀にふさわしい学びと学校の創造をめざして「教育の情報化ビジョン(平成23年4月28日)」をまとめた。情報化が進展する中で、学校においてはICTの特徴を最大限生かした一斉学習・個別学習に加えて、子どもたちが教え合い学び合う「協働学習」の充実が求められている。自分で考え行動できること、その上で他者と協力して助け合いながら「生きる力」を育むことが、改めて強調されている。

 

「3〜4人に1台」からスタート

フューチャースクール
iPadは対話を促進するツール

  筆者らは、初代iPadが発売された当初(2010年5月)より3〜4人で1台を使用するグループ学習での有用性を検討してきた。従来、デジタル教材およびICTを活用する際の評価の観点としては、「知識・技能の定着」「学び方の補完」「イメージの拡充」の3つが一般的であった。そこにiPad等、タブレット型情報端末の登場によるグループ学習の実現によって、お互いに影響を与えながら高まる「相互啓発」の観点を新たに設定して授業づくりに取り組んだ(右表)。

  写真の実践は、iPadによるグループ学習であり、基本的には静止画と動画の拡大・縮小機能を利用し、対話を促進するためのツールとしての活用である。生徒たちは、通学路の安全学習(中学2年生、特活、埼玉県越谷市立大袋中学校、今西昭博教諭)のために教材としての動画を見ながら、付箋で自分の意見をiPadの周囲に張り付け、互いに意見を交わした。iPadを対話の媒体とすることで話し合いが充実することが明らかになった。他に拡大・縮小機能を活用する必然性のある授業としては、社会科の合戦図屏風等の資料集、理科の動物細胞・植物細胞の違いを理解するための顕微鏡写真等を用いたものが有効であった。iPadは今まで学校教育の中でありそうでなかったグループ学習のための有用なツールとして熱烈に受け入れられた。

 

◆iPadの教育活用―文教大学教育学部准教授 今田晃一

(1)協働学習につながるグループ学習に活用(120702)
(2)授業デザインの要は「スキル」から「感性」へ(120806)
(3)「iBooks Author」で主体的な学びと安心感(120903)
(4)アナログとデジタル 不易と流行をつなぐ(121008)
(5)Facebookを活用して 進路指導・キャリア教育(121105)
(6)教育方法の質的な転換の兆候を実感(121203)
(7)感性を活かす授業づくりを(130204)
(最終回)登校刺激としての iPad in 相談室(130304)

【2012年7月2日号】

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