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iPadの教育活用(2)―文教大学教育学部准教授 今田晃一

iPadの教育活用授業デザインの要は「スキル」から「感性」へ

 体育の学習では自身の演技をグループで振り返り、次につなげるための思考場面の時間を大事にしている。従来ビデオカメラ等で撮影した演技の動画は、PCやデジタルテレビで閲覧し振り返る方法が一般的であったが、その際ICT機器の準備およびデータ転送の手間、タイムラグが常に課題であった。ところが2011年春にiPad2が、動画・静止画をフロントカメラおよびバックカメラで撮影できる機能を備えて登場した。これにより従来のICTの組み合わせによる振り返りの活動が、iPadだけで可能となった。

 

「撮影機能」活かして振り返り

 
著作権教育
フロントカメラの機能を使って自分の
フォームの改善につなげる

  その後iPadの撮影機能を生かした、アイデアにあふれた心温まる実践が積み重ねられている。とかく性差による学習意欲の差が課題であった技術科におけるロボットづくりの題材では、リンク機構の工夫では男子が、iPadによる撮影およびグループでの振り返りの場面では女子がリーダーシップを執るなど、iPadが媒体となってチームワーク力が高まった事例も見られた(写真右・奈良教育大学附属中学校・葉山泰三教諭実践)。

  また体育のマット・鉄棒の授業を中心に、iPadのバックカメラ機能を生かした思考場面の充実に取り組んできた市河大教諭(埼玉県越谷市立栄進中学校)は、ハンドボール部の生徒の上達のためにiPadを鏡のように使用する(フロントカメラの動画撮影機能を活用)ことで、生徒が少しでも楽しく向上できるように日々工夫を凝らしている(写真下)。

  これまで学校でPCが堪能な教員は、どこか自慢げで機器を専門的に使いこなすも、学習者や同僚の先生方と微妙に距離があった。しかし、iPadは「すごい」「楽しい」「きれい」等の前向きな感覚を他者と共有しやすく、その状況の設定が授業デザインの要となる。これからのICT活用は、スキルに優れた先生から感性に優れた先生が中心となるであろうし、その時デジタルの授業はさらに楽しいものになるであろう。

 

 

 

 

◆iPadの教育活用―文教大学教育学部准教授 今田晃一

(1)協働学習につながるグループ学習に活用(120702)
(2)授業デザインの要は「スキル」から「感性」へ(120806)
(3)「iBooks Author」で主体的な学びと安心感(120903)
(4)アナログとデジタル 不易と流行をつなぐ(121008)
(5)Facebookを活用して 進路指導・キャリア教育(121105)
(6)教育方法の質的な転換の兆候を実感(121203)
(7)感性を活かす授業づくりを(130204)
(最終回)登校刺激としての iPad in 相談室(130304)

 

【2012年8月6日号】

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