スモールステップで無理なく校務を情報化―文京区教育委員会(東京都)

【EDIXブース番号 15-28:学校業務支援ゾーン】

新しいシステムの導入は組織体制変更のきっかけに

 文京区教育委員会(東京都)は2012年度4月より区立の全小学校20校にWebブラウザ対応の校務支援システムの運用をスタート、校務の情報化を進めている。1年を経た導入・活用状況について文京区立根津小学校の田中克昌校長に聞いた。田中校長は「効率化による時間の確保は貴重。校務支援システムを含めたICT環境をバランス良く活用することで、多様な子どもに対応・研修するために必要な時間を確保できる」と話す。

田中克昌校長
文京区立根津小学校
田中克昌校長

  田中校長は、「副校長始め学校教員の事務量の増え方は大変なもの。朝6時から夜9時まで仕事をしていることもある。加えて、多様な子どもに対応するための教材研究や指導に充てるべき時間も増えている。心身ともに疲労が重なり休職者も増えるなどの問題を解決するため、東京都としても校務改善に注力してきた」と校務情報化推進の背景を話す。

  文京区では平成19年に校務用PC1人1台を達成、文書などのファイル共有などから校務の情報化を進めている。昨年度からは、より効率化を進めるために校務支援システムとセキュリティ認証・暗号化USBシンクライアントシステムを導入。さらにこの春から全小学校の印刷機も入れ替え、印刷スピードのアップでさらに効率化が進んだ。そのうち校務支援システムで導入されているのは、グループウェア、成績管理、時間割・週案管理、保健管理システムなどだ。

職員会議を削減 年10回程度に

根津っ子

表紙は文京区出身の画家のペン画

  首長や教育委員会担当者が一気に校務の情報化を進める自治体、各学校ニーズで少しずつ情報化を進めていく自治体とその進め方は様々だ。文京区の場合、全校一斉導入後の活用は各校事情に合わせて、というのが教育委員会方針であった。同校ではこれまで校務用PCでサーバにアクセス、ファイル共有などをしていたこと、エクセル連携で帳票の電子化も一部進めていたこと、学校教職員のOJTが根付いており教え合いが日常的であったことから、システムの移行もごく自然に進んだという。中でも成績管理の活用は早く、通知表や指導要録は導入早々に電子化した。

  「管理職の役割は、システムをどう使えば効率化でき、質の向上につながるのかを考えること。できる部分から始め、不慣れな部分はこれまでのシステムで、と無理なく全員が活用できるように配慮している。新しいシステムの導入は組織体制を変更する良いきっかけとなった」

  決定事項の周知は校務支援システムの回覧板機能などを活用し、職員会議は年に10回程度に削減、実施時間は夕方で、朝は児童と過ごすための時間とした。週2回の職員打ち合わせも夕方に実施。週2回は研修などに充てている。

  さらに1人1主任制とし、毎年役割担当を変更。組織変更により引き継ぎをスムーズにした。

「通知表」の質の向上に

  校務支援システムの導入は「通知表」の質の向上にもつながった。

  例えば担任は、所見に書くべき内容を日頃からPC上でメモしておくことができ、よりきめ細かい所見をまとめることができるようになった。また、各所見は学校長が予めデータ上で確認、修正やアドバイスなどを担任に戻すことがスムーズかつ迅速にできるようになった。

  「システム導入により教育内容がレベルアップしていけば、ICT化の意図や役割が周知されていく。使い勝手や性能が良くなるにつれ活用が進んでいくもの。まだまだできることはたくさんある。今後は他校とのコミュニケーションに力を入れていきたいし、ルーチンワークはさらに工夫して短縮し、クリエイティブな時間をより多く確保できるようバランス良くマネジメントしていきたい」

  カシオの校務支援システムについては、「どのシステムにも一長一短がある」としながらも、「最も重視したいことは、人的サポート。運用まで含めてトータルにサポートを得られること、困った時にすぐに対応できるシステムである点、学校独自の通知表・帳票にもスムーズに対応できる点を評価している」と話す。

  根津小学校の通知表の表紙には同区出身の画家のペン画が掲載されている。それをほぼそのまま校務支援システムで活用することができた。その点の評価も高いようだ。

【カシオの校務支援】 特長は柔軟な 帳票カスタマイズ

  カシオの校務支援システムは、柔軟な帳票カスタマイズが特長だ。印刷直前に校正ミスがあった際も、リモートアクセスにより短時間で修正に対応した。「今日依頼して明日印刷」は難しい場合が多いが、同社システムではプログラム変更をしない帳票カスタマイズ手法により、柔軟な対応が可能だ。エクセルとの連携も強化されており、「昨年度まではエクセルで対応していたデータ」との連携もできる。導入方法も、教育委員会単位でセンターサーバーを構築する一元管理型、各学校単位での導入、パートナー企業との連携によるクラウド型サービスと、様々な形で導入できる。

  カシオ計算機では、「スモールスタートで無理なく校務を情報化」することを学校に提案している。第1ステップは「重要かつ省力化の大きいものからスタート」。第2ステップが「その重要性が認められ始めたものを追加スタート」、第3ステップが「蓄積したデータの有効活用を始めとする分析や組織的な取り組み」。まずは簡単かつ導入効果の大きいものから始め、教職員同士で教え合いながら導入を進めることは全職員の活用につながり、さらには学校の組織力向上につながるという考えのもと、今後も学校をサポートしていく考えだ。

【2013年5月6日】

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