連載

iPadの教育活用(5)―文教大学教育学部准教授 今田晃一

Facebookを活用して 進路指導・キャリア教育

iPadの教育活用 東日本大震災時、大袋中学校(埼玉県越谷市:校長 大西久雄)は、twitterによる学校からの情報発信が、生徒の安全確保及び避難(中学校は保護者の希望で引渡し、集団下校の選択可)に有効であったとして新聞等でも取り上げられた。非常時を経て、SNSを利用した非対面のコミュニケーション能力の重要性が再認識された象徴的な出来事であった。

非対面コミュニケーション能力育む試み

  同校は、全学年で「進路指導・キャリア教育」に取り組んでいる。2年生(総合的な学習の時間)は、昨年度までの専門家の講演、学校訪問等に加えて今年度は、iPadを利用したFacebook(以下、FB)による職業人との交流の場を新たに設定した。iPadは平均2人に1台。学校が独自に開発したキャリア教育専用のFBサイトは、27の職業グループ(「美術に関わる仕事」「研究に関わる仕事」等)、67人の協力者によって構成されている。

iPadの教育

 

iPadの教育
グループで職業人への質問を吟味

  いざ生徒が質問を書き込もうとすると、これがなかなか困難な作業であることを実感する。インタビューや職場訪問と違って非対面ゆえのもどかしさがある。まずはiPadを囲む級友と質問そのものを吟味することから始め、徐々に自己に対する思索、他者意識の涵養へとつなげていくことを上位目標としている(写真右)。生徒が投げかけた適切な質問には、すぐに顔写真入りの回答者からの生の反応がある。FBによるリアルな状況の設定が、学習者に取り組む意義、学ぶ必然性を感じさせていると言えよう。

  本実践は、iPadの貸与、iPadの通信環境、FBのアカウント等を学習者の安全に留意し、期間も限定して取り組んだ実験的な事例である。iPadはそもそも電子書籍リーダーとしてスタートしたツールでもある。大西校長はすでに図書室にiPadを設置する構想を一時的にではあるが示している(写真上)。その際、放課後の図書室における発展的な学びとして、iPadにどのようなコンテンツを用意すべきなのか。これは教育における「デジタルの方がいいものとは何か」を考える上での重要な観点となっていくであろう。

 

◆iPadの教育活用―文教大学教育学部准教授 今田晃一

(1)協働学習につながるグループ学習に活用(120702)
(2)授業デザインの要は「スキル」から「感性」へ(120806)
(3)「iBooks Author」で主体的な学びと安心感(120903)
(4)アナログとデジタル 不易と流行をつなぐ(121008)
(5)Facebookを活用して 進路指導・キャリア教育(121105)
(6)教育方法の質的な転換の兆候を実感(121203)
(7)感性を活かす授業づくりを(130204)
(最終回)登校刺激としての iPad in 相談室(130304)

【2012年11月5日号】

関連記事

連載記事