特集:教員養成×ICT  アクティブ・ラーニングで授業づくり

「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」最終まとめ案「アクションプラン」では、教員養成課程及び研修の充実が求められている。教職課程では、ICT活用について学ぶ機会の充実を図ること、教職課程を置く大学は、学校・地域でICT活用をリードしていく教員を対象とした研修を行うこと、教職課程認定の際に、「情報機器及び教材の活用」を含む授業科目において活用できる施設・整備の確認をすることなどが明記される予定だ。現在、各大学ではICTを活用できる教員養成についてどのような取組を進めているのか。ICT環境を使いこなしながらアクティブ・ラーニングの視点に立った授業づくりに取り組む各大学・教職大学院の取組を報告する。

教員養成プログラム 効果測定3種で成果<奈良教育大学教職大学院>

奈良教育大学教職大学院では、「アクティブ・ラーニング(A・L)」「学習者中心の学習」について、その専門知識を培うため、富士通の協力を得て、20台のタブレットPCを活用して教員養成プログラムを開発している。

プログラムは、教職大学院の講義「授業方法と学習形態の工夫(ICT活用を含む)」で、次のように展開している。

▼授業での様々な学習活動について既知と未知を見つめる演習(学習カード分類)を通じてA・Lの特徴をつかむ ▼ICTを活用した授業イメージを豊かにする講義と演習 ▼A・LにICTは必要条件か、十分条件かを検討する演習 ▼1人1台のタブレットPCを活用した環境下の模擬授業(一斉学習で「マーナビケーション」を活用) ▼デジタルコンテンツとデジタル教科書の活用方法をみつめる演習(デジタル教科書の比較分析等) ▼学習形態に関する既知と未知を見つめる演習 ▼1人1台のタブレットPCを活用した環境下の模擬授業(協働学習で「デジタル模造紙」を活用) ▼A・Lの課題設定と学習環境の関係を考える演習 ▼A・Lの評価方法を見つめる演習(パフォーマンス評価、ルーブリック評価、ポートフォリオ評価等) ▼目的に応じたテストの作成に関する演習 ▼1人1台のタブレットPCを活用した定着支援・習熟支援、テストの作成に関する演習(Fujitsu手書き電子ドリルを活用) ▼デジタルポートフォリオを活用した授業に関する演習(「知恵たま」を活用) ▼1人1台のタブレットPCを活用した家庭学習支援に関する演習(「Shu-Chu-Train」を活用)

この授業プログラムの効果測定に関しては、次の3つのアプローチで進めている。

▼プログラム開始時とプログラム終了時に、ICT活用指導力に関する質問紙を用いて意識調査。その変化を比較 ▼プログラムの半分終了時と全終了時の2地点で、受講者が本プログラムに参加して獲得したと思われる専門知識についてマインドマップを描いてもらい、その2つを受講者ごとに比較(技術と関わる教育的内容知識〈=Technological Pedagogical Content Knowledge〉フレームワークを用いてその変容をカウント) ▼毎回プログラム終了時点に記載されたポートフォリオに書かれた受講者の振り返り記述の分析を定性的に行い、その変容を比較。

その結果、プログラム受講後はICTを用いた授業設計、学習環境について肯定的になり、不安も減少していることが明らかになった。

【寄稿】小柳和喜雄教授・奈良教育大学教職大学院

【2016年9月5日】

教員養成・研修で目標創出型L・A<静岡大学>/教員養成プログラム 効果測定3種で成果<奈良教育大学>
A・L模擬授業でICT実践力育む<鹿児島大学>教育実習で院生がICT支援員に<信州大学>
全教員と院生に情報端末を貸与<和歌山大学>アタマとカラダをアクティブにする<明星大学>

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