特集:教員養成×ICT アクティブ・ラーニングで授業づくり
「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」最終まとめ案「アクションプラン」では、教員養成課程及び研修の充実が求められている。教職課程では、ICT活用について学ぶ機会の充実を図ること、教職課程を置く大学は、学校・地域でICT活用をリードしていく教員を対象とした研修を行うこと、教職課程認定の際に、「情報機器及び教材の活用」を含む授業科目において活用できる施設・整備の確認をすることなどが明記される予定だ。現在、各大学ではICTを活用できる教員養成についてどのような取組を進めているのか。ICT環境を使いこなしながらアクティブ・ラーニングの視点に立った授業づくりに取り組む各大学・教職大学院の取組を報告する。
信州大学教育学部では、学生のICT活用指導力を高めるため、教育実習にICT活用授業の実践を義務づけている(本紙2014年9月1日号を参照)。昨年度の教育実習生によるICT活用授業の実施率は94・9%。しかし、その前年度は56・6%だった。この1年間で実施率が大きく向上した理由は、「教育でICTを活用する意義を考えること」「自分のPCを外部モニタに接続することに自信を持つこと」「教育実習のためのICT支援員を配置すること」にある。
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学生は「ICT活用リーフレット」で、教育実習でICTを活用した授業を行うための方法を学ぶ。ICT活用リーフレットとは、教育実習でのICT活用を学ぶためのA3用紙を2つ折大の教材だ。このリーフレットにある先輩実習生のICT活用授業の写真をもとに、先輩が授業でICTを活用した目的を少人数グループで話し合った。多くの学生はICTを拡大提示の道具と考え、児童生徒の興味・関心をひくことばかりに捉われてしまう。そこで、先輩実習生が「あえてICTを使った理由」に議論を焦点化させる。すると「学習過程を記録・再生できる」「児童生徒全員の考えを瞬時に集めて分類できる」など、多様かつ大量の情報の蓄積・共有・分析できるというICTの特徴に学生自らが気づいていく。あえてICTを活用する理由を話し合うことで、その意義を学んだ。
ICT活用リーフレットでは、先輩実習生が実際にあったトラブルやその対策も解説している。最も多かったトラブルは、自分のPCを外部モニタにうまく接続できないことだ。
そこで、リーフレットをもとにHDMIやVGAなどの接続端子の種類と特性を学び、全員が自分のPCを外部モニタに接続する演習が課された。少人数グループで、学生同士が試行錯誤しながら演習に取り組むなかで外部モニタへの出力方法に複製と拡張があることを学び、演習が終わる頃にはすべての学生が自信を持って自分のPCを外部モニタに接続できるようになった。
本学教育学部では教育実習期間中、各学校にICT支援員を配置しており、約6割の実習生は授業のなかで支援を希望している。支援員は実習生のICT活用授業や実習生が使うICT機器の事前準備・教材作成を支援しており、その存在が実習生のICT活用の大きな支えとなっている。
ICT支援員は、将来、学校教員になることを目指す大学院生だ。実習生のICT活用を支援するなかで、教員や児童生徒が授業中にどのようなことにつまずきやすいのかを学ぶことができ、自身のICT活用授業に活かされていく。
【寄稿】森下孟助教・信州大学教育学部
【2016年9月5日】
教員養成・研修で目標創出型L・A<静岡大学>/教員養成プログラム 効果測定3種で成果<奈良教育大学>
A・L模擬授業でICT実践力育む<鹿児島大学>/教育実習で院生がICT支援員に<信州大学>
全教員と院生に情報端末を貸与<和歌山大学>/アタマとカラダをアクティブにする<明星大学>
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