特集:教員養成×ICT アクティブ・ラーニングで授業づくり
「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」最終まとめ案「アクションプラン」では、教員養成課程及び研修の充実が求められている。教職課程では、ICT活用について学ぶ機会の充実を図ること、教職課程を置く大学は、学校・地域でICT活用をリードしていく教員を対象とした研修を行うこと、教職課程認定の際に、「情報機器及び教材の活用」を含む授業科目において活用できる施設・整備の確認をすることなどが明記される予定だ。現在、各大学ではICTを活用できる教員養成についてどのような取組を進めているのか。ICT環境を使いこなしながらアクティブ・ラーニングの視点に立った授業づくりに取り組む各大学・教職大学院の取組を報告する。
3年生対象の「中等教育方法学」では、ICT(電子黒板やタブレット端末など)の活用を含む教育の方法と技術を、知識だけではなく、経験としても学び、学習指導の方法の基礎を実践的に習得することを目標としている。
学生は、どのような教授法や学習形態があるのかを、先行研究や現在の初等中等教育の事例を通して理解。それらを、模擬授業を通して実践する。
模擬授業を進めるにあたり、5〜6名が1つのグループになり、ICTを活用した指導案・教材を作成する。それらは最低2回以上、教員や他のグループから修正コメントをもらい、その後、指導案に基づいて模擬授業を実施する。
模擬授業の導入は、多くの教員養成課程で実施されているであろうが、本講義では、それに加えて「アタマをアクティブ」にするための試みを2つ行っている。
1つは、学習活動の必然性について学生がどう捉えているのかを追求することである。
本講義における評価の方法の1つとして、模擬授業を学生同士がルーブリックを用いて相互評価するという内容を取り入れた。これにより模擬授業の評価基準が明確になると同時に、学生が作成する指導案や模擬授業における具体的な指導方略を検討する指針として用いることができた。
もう1つは、自身の授業を振り返る仕組みの導入である。
模擬授業は1つの学習活動で15分程度の実施とし、それをビデオに撮影してWebにアップロード。学生が学内外のどこにいても自分たちの模擬授業を振り返ることができるような仕組みを設けた。また、授業動画の視聴後に相互評価の入力欄を設けている。
学生が取得しようとしている教員免許の教科は国語・数学・社会・理科・体育など様々である。そのため学生は自身が希望する教科と異なる教科の模擬授業も評価しなければならない。他の教科の授業であったとしても、学習目標の設定の仕方や、ICTを用いた授業展開の仕方などは教育方法・技術として共通の部分は多い。また、それらは自身の授業設計の参考にすることもできる。さらに、相互評価を行うことで、学生自身が設計した授業が、他の学生にはどのように捉えられるのか、改善点は何なのかについて常に振り返りを行わせることができる。
このような2つの方略で知識を得ること、経験すること、振り返ることを通してカラダもアタマもアクティブにして、学習指導の方法の基礎を実践的に習得するような取組を行っている。
【寄稿】今野貴之助教・明星大学教育学部
【2016年9月5日】
教員養成・研修で目標創出型L・A<静岡大学>/教員養成プログラム 効果測定3種で成果<奈良教育大学>
A・L模擬授業でICT実践力育む<鹿児島大学>/教育実習で院生がICT支援員に<信州大学>
全教員と院生に情報端末を貸与<和歌山大学>/アタマとカラダをアクティブにする<明星大学>
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