特集:教員養成×ICT アクティブ・ラーニングで授業づくり
「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」最終まとめ案「アクションプラン」では、教員養成課程及び研修の充実が求められている。教職課程では、ICT活用について学ぶ機会の充実を図ること、教職課程を置く大学は、学校・地域でICT活用をリードしていく教員を対象とした研修を行うこと、教職課程認定の際に、「情報機器及び教材の活用」を含む授業科目において活用できる施設・整備の確認をすることなどが明記される予定だ。現在、各大学ではICTを活用できる教員養成についてどのような取組を進めているのか。ICT環境を使いこなしながらアクティブ・ラーニングの視点に立った授業づくりに取り組む各大学・教職大学院の取組を報告する。
本年度から開設された和歌山大学教職大学院では、ストレートマスターと現職教員に加えて初任者教員(10名)が加わるのが特徴だ。
本学では全教員と院生に「情報端末(iPad)」を貸与しており、既に日々の教育・研究活動における必須のツールとなっている。まずは自分たちが日常的に活用することで、「学びを支援するツール」として実感することが目的だ。
モバイルルーターの貸し出し体制や情報端末からの印刷環境も準備。また、教職大学院棟には、情報端末と連携して電子書籍を作成できるPC環境を用意。教材開発力の向上も目指している。
この体制は、平成25年度から実施してきた「初任者研修高度化事業」(和歌山県教委との連携)から継続しており、既に4年目の運用実績がある。
「情報端末」は、日々の学習・活動記録のクラウドでの共有化、各種文書のデジタル化等、日々の大学生活において利便性の高い学修ツールとして位置づけた。教育現場の写真や映像情報を元にした「振り返り」の手段としての活用頻度が高い。例えば、初任者の日々の授業記録(板書や児童生徒のワークシート・ノート、作品等)や各院生のインターンシップ実習での活動記録に用いられている。
教員側も同様で、授業記録を元にした客観的・具体的な指導に役立てている。
教職大学院の年度初めには、共通科目「ICT活用と指導技術」を設定している。ここでは情報端末を「教材提示手段」と位置づけ、指導方法の向上に取り組んでいる。一斉授業での活用に加えて、「1人1台体制」や反転授業における活用についても学び、その有効性・可能性のビジョンを持たせている。
その他の講義では、学習指導要領解説や各種答申・報告資料、論文等のPDFの閲覧・蓄積・加工等にも日々利用されている。例えば、「次週の講義では、○○の報告書をiBooksにダウンロードしておくこと」といった指示が出されることもある。
院生・教員全員が共通の情報端末を所持し、共通のSNS・クラウドを利用できる環境によって、カリキュラムの構築や講義での積極的な利用が促されているといえる。
当教職大学院における情報端末活用の真価はこれからである。次年度は、県から派遣される現職教員は勤務校に戻り、原則大学には出てこない。そのため、日々の情報交流・共有に専用のSNSを用いたり、遠隔指導のためのテレビ会議システムの活用・授業映像や研修指導時の映像データの共有などを行う予定だ。
【寄稿】豊田充崇教授・和歌山大学教職大学院
【2016年9月5日】
教員養成・研修で目標創出型L・A<静岡大学>/教員養成プログラム 効果測定3種で成果<奈良教育大学>
A・L模擬授業でICT実践力育む<鹿児島大学>/教育実習で院生がICT支援員に<信州大学>
全教員と院生に情報端末を貸与<和歌山大学>/アタマとカラダをアクティブにする<明星大学>
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