特集:教員養成×ICT  アクティブ・ラーニングで授業づくり

「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」最終まとめ案「アクションプラン」では、教員養成課程及び研修の充実が求められている。教職課程では、ICT活用について学ぶ機会の充実を図ること、教職課程を置く大学は、学校・地域でICT活用をリードしていく教員を対象とした研修を行うこと、教職課程認定の際に、「情報機器及び教材の活用」を含む授業科目において活用できる施設・整備の確認をすることなどが明記される予定だ。現在、各大学ではICTを活用できる教員養成についてどのような取組を進めているのか。ICT環境を使いこなしながらアクティブ・ラーニングの視点に立った授業づくりに取り組む各大学・教職大学院の取組を報告する。

A・L模擬授業でICT実践力育む<鹿児島大学教育学部>

鹿児島大学教育学部に平成27年7月に完成したアクティブ・ラーニングプラザには、電子黒板やタブレット端末、無線LAN環境を整備。学生のグループ・ワークやディベート等のアクティブ・ラーニングの推進に取り組んでいる。中でも「教育工学」の授業では、学生のICTを活用した授業力を高める取組を展開。教育活動での高度な専門的技能やコミュニケーション力の育成を目指している。

実践ではICT活用を深めていくにあたり、学生が4人チームを編成。アクティブ・ラーニングの視点を取り入れ、電子黒板やタブレット端末等を協働的な学びの中でどのように活用すればよいかをチームで話し合い、模擬授業を設計するようにした。お互いにアイディアを出し合いながら授業設計での課題を協働で解決しようというものである。

まず、チームの協働性を高めるために、チームを紹介するデジタル新聞を分担して制作。デジタル共有ボードを活用して授業外でも作成できるようにした。

次に各チームで、授業づくりの第1歩として、ICTを活用した授業事例を収集・整理。デジタル共有ボード上でマトリックス(表)にまとめ、ICT活用の特徴や課題を自分たちなりに考察。電子黒板やタブレット端末の操作方法についてはeラーニング上にあるマニュアルで事前に学習できるようにした。

模擬授業でICT活用
模擬授業でICT活用

学生の申し出に応じてICT教室も開放。電子黒板やタブレット端末を活用したリハーサルを計画して主体的な学びが展開できるようにした。

模擬授業の指導案を各自が完成した段階で、eラーニングシステムで指導案を共有。相互評価で意見交換を行いながら、電子黒板やタブレット端末を活用した模擬授業をICT教室で行う。教員役の学生は授業者となり、電子黒板に拡大提示した画像に書き込みながら説明したり、学習課題や授業のまとめを板書したりする等、授業づくりの基礎を学ぶ。子供役の学生は、配付されたタブレットに書き込みながら学習を展開。タブレット端末活用のポイントを学ぶことができた。

模擬授業の様子はビデオ映像として記録。eラーニングシステム上で省察できるようにし、授業改善のポイントをお互いに出し合いながらICT活用のポイントを整理した。

ICTを活用した授業力は今後不可欠な能力であり、ICTを活用した模擬授業を通じて、板書や発問等の従来の指導も身につけ、学校現場に必要な実践的な指導力の育成が期待できる。

【寄稿】山本朋弘氏・鹿児島大学教育学系講師

【2016年9月5日】

教員養成・研修で目標創出型L・A<静岡大学>教員養成プログラム 効果測定3種で成果<奈良教育大学>
A・L模擬授業でICT実践力育む<鹿児島大学>/教育実習で院生がICT支援員に<信州大学>
全教員と院生に情報端末を貸与<和歌山大学>アタマとカラダをアクティブにする<明星大学>

<<ひとつ前にもどる

関連記事

↑pagetop