小中高大の英語教育にCEFRもっと活用を―大学英語教育学会

 大学英語教育学会(JACET)は3月11日、 CEFRの英語教育への活用を推奨する春季セミナー「小中高大連携の英語教育を目指す『英語共通枠』活用の試み(発展編)」を開催した。セミナーでは、中学高校、大学において英語教育にCEFRを応用した事例報告やCEFRを用いて教材作成を行うワークショップが行われた。CEFRは欧州評議会が約10年の歳月をかけて開発した外国語のレベル別達成指標。

教材作成やクラス分けにも活用

  目白研心中学校・高等学校(東京都)は独自のACE(エース)プログラムにより、4技能(Listening,Speaking,Reading,Writing)の向上を目指している。ネィティブ教員による海外テキストを使用した授業、日本人教員による教科書を使用した授業とカナダ研修旅行、スピーチコンテストなどの体験型イベントを組み合わせ、実践的コミュニケーションスキルを養成している。

  こうした中、森本治子教諭はJACETで受けたCEFRの研修をきっかけに、中学3年生の授業にCEFRの評価基準及び言語ポートフォリオ(ELP)ツールを使用した。イギリスの教育機関CiLT(The National Centre for Language)作成のELPジュニア版を応用し、4技能について国際基準に基づく自己評価に取り組んだ。生徒は、個人学習記録(My Language Biography)に学習内容を記録、個人作品集(My Dossier)に自分の作品や課題を入れ、個人言語記録(My Language Passport)に4技能の到達度や異文化体験を記入している。

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  大阪市立大学の笠巻知子特任講師は、昨年後期から教科書をCEFRに準拠したEnglish Unlimitedに変更した。その結果、学生の学習意欲が大幅に向上した。「English UnlimitedはトピックごとにCan do statement(学習のゴール)が掲載され実践的。学生が目安を持ち、最後までモチベーションを維持できた」と語る。

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  慶應義塾普通部(神奈川県横浜市)では、CEFRに基づく慶應ヨーロッパ言語ポートフォリオの開発・利用や英語スピーキングテストの開発をしている。小学校から大学まで一貫英語教育を目指し取り組んでいるもので、2011年には英語だけでなく、他言語での展開も始めた。その内容について同校の跡部智教諭が報告した。

  2006年から開始した5年間の研究「行動中心複言語学習(AOP)プロジェクト」の中で塾生を調査後、慶應版ポートフォリオ「わたしの言語ポートフォリオ」(小冊子)を作成し利用している。スピーキングテストは、CEFRの参照レベルに基づき4レベルを設定。試験者と生徒が1対1で対話する。

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  早稲田大学では学生の英語運用力向上を目指し、CEFRの参照レベルを教材作成、クラス分け、目標設定などに利用している。1999年から1クラス4人制の「Tutorial English」コースを開設、CEFRに対応し6段階にレベル分けしている。「英語で議論できる力を持つ学生の育成を目指している」と中野美知子教授。C1レベル(熟達レベル)の学生が8%から14%に増えているという。

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  NHKは学習の一貫性を強めるため、ラジオ/テレビ語学講座のレベル表示を今年4月に従来の学校種から世界指標のCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠組み)によるものへ変えている。

■CEFR(=Common European Framework of Reference
for Languages)

ヨーロッパで活用されている外国語教育の指標。欧州評議会が人と人とが言語の壁を越えてコミュニケーションを図れる能力の発展を目指して開発、2001年に完成した。基礎レベルのA1からネィティブレベルのC2まで6段階、リスニング、リーディング、スピーキング、ライティングのそれぞれのレベルの具体的な到達リストが設定されている。
詳細 http://www.eaje.eu/cefrproject.html

 


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【2012年5月7日号】

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