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チンパンジーの子どもの記憶力は、人間のおとなよりかなり優れている (2007年12月17日)

京都大学の霊長類研究所の研究によって、チンパンジーの子どもの記憶能力は人間のおとなよりはるかに優れていることがわかりました。

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記憶課題に取り組むチンパンジーのアユムくん(5歳半)

今回の研究結果は、世界で初めて、「チンパンジーにおける数字の作業記憶」で「チンパンジーの子どもの記憶能力が、チンパンジーのおとなよりも、さらには人間のおとなよりも優れている」ということを示しました。

まず、チンパンジーには、数字の知識を与えるために1から9の数字の系列を学習させました。チンパンジーの子どもが4歳のときにはじめたこの学習は、毎日25分続けられ、6か月後の4歳半ころには、子ども3頭は、みんな数字を1・2・3・・・8・9と順番に選べるようになりました。また、同じときに勉強を開始した母親たち3頭も1から9までの数字の順番を学びました。

そこで、数字の系列を知っているというその知識を利用して、瞬間的な記憶能力をチンパンジーと人間で比較して調べてみました。コンピュータ画面に出てくる数字のうち最少のものに触れると他の数字が白い四角形で置き換わります。もとの数字の順番に白い四角形に触れることができれば正解です。

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パターンで隠された数字を当てるアユムくん(5歳半)

結果的には、チンパンジーの子どもの方が、人間のおとなよりもすばやく正解できました。チンパンジーの子どもは3頭とも一瞬みただけで、どの数字が、画面のどこにでてきたか記憶できたのです。いちばん成績の良かったアユムは、9個の数字を約0.7秒でほぼ正確に記憶できました。人間のおとな(大学生)は、だれもできませんでした。

次は「時間制限課題」という記憶課題を実験してみました。数字が一瞬だけ画面に出てくるので、それを記憶する課題です。画面に出てくる時間は、650、450、210ミリ秒の3条件です。最短の210ミリ秒だとサッケードと呼ばれる眼球運動が起こらない時間です。つまり、眼を動かして数字の位置を確認することはできません。

「時間制限課題」の結果は、チンパンジーの子ども3頭は、ほぼ一瞬でどの数字がどの場所にあったかを記憶しました。人間のおとなは、結局チンパンジーの子どもには全くかないませんでした。特に、一番成績の良かった5歳のチンパンジー(アユム)は、9個の数字を約0.7秒で記憶することに成功しました。

今回の研究結果から、チンパンジーの子どもの能力は人間の子どもで知られている「直観像記憶」にきわめて似ていてることが判明しました。人間でも、一瞬見ただけの複雑なパターンの細部を正確に記憶できる子どもたちがごくまれにいます。また、年齢があがるとその能力が減退することも研究によってわかっています。

おとなより子どもの方が瞬間的記憶力が高いことを利用して、これからは家庭で何かを一瞬記憶するとき(だれかの電話番号を覚えたいときなど)は、あえて子どもたちに覚えてもらうのが良いかもしれませんね。

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Working memory of numerals in chimpanzees
チンパンジーにおける数字の記憶



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投稿者 kksblog : 2007年12月17日 20:29


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