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今年で20年目 絵本の読み聞かせによる子供の自殺予防教育 作家が小中学校で1300回以上実施

2026年9月10日

夏休み明け、各種メディアでも盛んに取り上げられるように、憂鬱になったり、不安を抱える児童生徒は少なくない。

ただしこの時期に限らず、子供たちの心の健康のための教育はますます求められている。

日本では2025年、小学生から高校生の自殺者は538人で過去最多となり、今年はそれを上回る勢いで増えているという。9月10日WHO「世界自殺予防デー」、日本では9月10~16日の自殺予防週間と定められ、啓発活動が行われているなかで、絵本作家による自殺予防教育(「心の健康のための『命の授業』」)を紹介する。

 

夏休み明けの中学校で「命の授業」

江東区立深川第七中学校(伊藤毅校長)では9月2日、1年生3学級72人を対象に、絵本の読み聞かせを通じた「命の授業」が行われた。

講師に迎えたのは、絵本作家の夢ら丘 実果(むらおか みか)氏と、吉澤 誠(よしざわ まこと)氏。ふたりは今回の授業で読み聞かせを行う絵本『カーくんと森のなかまたち』の著者。夢ら丘氏が絵を、吉澤氏が文章を手掛けた。

 

心の風邪「うつ病」になる前に

授業ではまず、身近な病気である「風邪」を例えに出し、うつ病を「心の風邪」としてわかりやすく解説した。国民の15人のうち1人の割合で生涯にうつ病を経験すると言われ(厚生労働省HPより)、誰でもなる可能性がある。

「風邪をこじらせると命の危険がある。うつ病も同じ。嫌なことや辛いことが原因で食欲がない、眠れないといった“うつ状態”が長く続くと、うつ病を発症してしまう。うつ病になると治るのには長い時間かかることもある。うつ状態のうちに早く治すことが大切」。うつ病は自殺の大きな原因となっている。まずはうつ状態であることに気づき、誰かに相談することが必要だ。

そこで絵本『カーくんと森のなかまたち』の読み聞かせを行った。

ホシガラスのカーくんは、友達と比べて劣等感や疎外感に悩み、心が病気になりかけている。そんな時、カーくんは先生や友達に悩みを打ち明け、話を聞いてもらい、自信と元気を取り戻していく、というストーリーだ。(=写真:生徒たちはスクリーンに映し出された絵本を見つめながら、読み聞かせに聞き入っていた)

 

読み聞かせのようす

相談する相手を諦めないで

本書が誕生した背景には、夢ら丘氏自身の経験があるという。

子供の頃は喘息を患い休みがちだったため、学校でいじめにあったこと、そうした中でも学校の先生が声をかけてくれて元気が出たこと。

画家としてのキャリアが軌道に乗った時期に交通事故に遭い、絵筆を持てなくなり、“自分はいなくなった方がいい”とこぼしたところ、当時小学3年生だった娘に「お母さんがいてくれるだけで嬉しい」と言われ、自分が必要とされていることをとても嬉しく感じたこと。

授業では、夢ら丘氏のこうした体験も語られた。

「必要とされていることで、生きる力が湧いてくる。自分のつらい気持ちを聞いてくれる友達や先生がいることで、心も体も元気になる」。読み聞かせのようす

絵本のストーリーを振り返りながら、辛い気持ちを抱えた時にはどうすれば元気になれるのか、生徒たちと対話を交えながら考える。

自分なら悩み事を誰に相談するか?という問いかけに、生徒からは「先生」「親」「友達」といった声が上がった。

 

夢ら丘氏は「悩みを誰かに相談することは、自立している証拠。悩みが軽くなったり、解決するまで相談していい。

例えば先生に相談しても、先生が忙しくて対応できないこともある。そんな時は他の人に相談すればいい。相談することを諦めないで欲しい」という。

また いのちの電話、チャイルドライン、こどもの人権110番 についても紹介。

(参考サイト https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/)

「自分の身の回りに元気がない人がいたら、話しかけたり、話を聞いてあげることも大切。人は苦しいときに助け合うもの。命はモノと違い、他の人と交換はできない。その命を大切にして欲しい」と語りかけた。

継続的・体系的な取組を

夢ら丘氏と吉澤氏は、全国の小学校や中学校などで、うつ・自殺予防となる「心の健康のための教育『命の授業』」出前授業を実施。これまでに1300回以上の授業を行ってきた。道徳や保健体育、総合的な学習の時間、学活などで、発達段階に応じた内容で実施している。

『カーくんと森のなかまたち』は、日本いのちの電話連盟の創設メンバーである斉藤友紀雄常務理事など自殺対策・予防医学の専門家たちによる監修のもと出版された。

吉澤氏は「うつ・自殺予防や、心の健康の教育は、継続的、体系的に行うことが重要」と話す。「米国の大学の調査では、10人中ほぼ9人が生涯に精神疾患を経験することも分かっており、誰でもかかる可能性がある」。(=写真:右・夢ら丘氏、左・吉澤氏)

右から、夢ら丘氏、吉澤氏

授業を受けた子供たちからは「自分らしく生きていいことがわかりました」「自分だけが悩んでいると思ったが、そうではないと知り心が軽くなった」など、さまざまな感想が寄せられるという。

「抑うつ状態になると、なかなかSOSが出せなくなるが、対処法はある。早めに動くことで良くなる。自分で気づくことができるように学ぶ必要がある」。

深川第七中学校での授業は今年で3回目。前任の校長から引き継いだ伊藤校長は、

「昨年授業を初めて行い、生徒が“悩みを抱えた時どうしたら良いか”について、さまざまな手段や方法を知り、自分たちの考えも深められる授業と感じ、今年も実施した。

今年は9月の実施だったが、夏休み前の7月の実施も検討したい」と話す。 同校の今回の授業には内閣府こども政策担当大臣の黄川田仁志氏が「国の大切な宝物である中学生の皆さんへ」としてメッセージを寄せており、「悩んだ時には、名前を言わなくても、うまく言葉にならなくてもいいから、相談してほしい」と呼び掛けている。

こども家庭庁相談先https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/45ac47b3-ea72-4d89-9b08-010ebb06261e/1712f756/20260706_policies_kodomonojisatsutaisaku_r8kouhoup_03.pdf 

「命の授業」に関する問い合わせ : 夢ら丘 実果氏 メールアドレス artistmika@nifty.com

(2026年9月10日Webニュース)

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