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教育ICT

「統合的な理解」「総合的な発揮」とは~次期学習指導要領検討の現在 堀田龍也教授・東京学芸大学副学長

2026年5月25日

次期学習指導要領の議論が日々、具体化している。堀田龍也教授(東京学芸大学副学長)は現在、中央教育審議会委員、初等中等教育分科会・分科会長代理、デジタル学習基盤特別委員会委員長、教育課程部会委員、教育課程企画特別部会・主査代理を務める。

さらに教育課程部会の下に設置されるワーキンググループ(WG)等において、総則・評価特別部会委員、算数・数学WG委員、情報・技術WG主査を務めている。

加えて、文部科学省においてこの4月に設置された、デジタルな形態を含む教科書の発行・採択等の指針に関する検討会議の座長にも就任。

教育の情報化に長年関わる堀田教授が次期学習指導要領に関する会議に多方面で関わっていることは、教育の情報化が教育全体に影響を与えるようになった表れでもある。

次期学習指導要領検討の現在について聞いた。

大塚商会

人口減社会に対応した次期学習指導要領へ

統合的な理解・総合的な発揮とは~堀田龍也教授・東京学芸大学副学長

東京学芸大学副学長 堀田龍也教授

人口減社会が日本にも急速に訪れています。

これは生産年齢人口の減少や国力にも影響を与え、近隣諸国との関係にも変化があるかもしれません。人口減のインパクトは大きく、既に大学では対応に真剣に取り組んでいます。次第に高等学校や小・中学校にも影響を与えていくことになるでしょう。

次期学習指導要領は、人口減を前提にどう実効性を高めていくかについても含めて検討しています。校務DXを進めて働き方改革を加速することは有能な人材を呼び込むためにも重要です。

一人ひとりの力を最大限に伸ばすことは、生産年齢人口減になったとしても国力を維持する可能性につながります。

GIGAスクール構想開始以来、自分のペースでさまざまなリソースにアクセスする学習シーンが全国的に増えています。一人ひとりの課題感の違いに対応できる学習スタイルを一層、推進していきます。

次期学習指導要領では生成AI活用も含めて検討しています。

生成AIを使うと子供が考えなくなるという声もありますが「生成AIに聞けば答えがすぐにわかるような授業」であることが問題なのです。

既に日常生活に浸透している生成AIを情報技術として理解したうえで、どのような授業をしたいのか、という点が重要です。

個別学習の量が増えると一斉学習の量が減って教員の仕事が減る、と考える方もいるかもしれません。

しかし一人ひとりの様子をリアルタイムもしくはクラウド、もしくはその両方で確認したうえでの助言が一層、重要になりますから

一斉授業の割合が減ることで教員の仕事が減るということにはならないでしょう。

「高次の資質・能力」の育成・発揮を目指すために

現在、各教科ワーキンググループ(WG)において、それぞれの教科等の専門家を中心に議論が深まっているところです。

議論を追っている人のなかには「仮称」のついた教科・科目名の多さに驚いている方もいるかもしれません(中学校情報・技術科「総合実習(仮称)、中学校数学「数学ガイダンス(仮称)」、小学校理科「理科と日常生活(仮称)」ほか)。

これは、次期学習指導要領の核心の1つが「高次の資質・能力」にあることと関係しています。

高次の資質・能力とは、各教科の学びを「統合的に理解」して「総合的に発揮」すること。

シンプルに言い換えると、「具体的なゴールのイメージをもてること」です。昨年秋頃までは、「中核的な概念」として表現されていたものです。

この高次の資質・能力とは各教科においてどのようなものか。

この力を発揮しつつ重層的に育成する舞台をどう用意するか。

これを、それぞれの教科で検討しているのです。

例えば社会科で地理や歴史を学ぶことや、国語で登場人物や情景描写を読み取ることが、生活のどこに、何につながるのかをイメージできるようにする。

このような経験を積み重ねることによって、当該の教科等の見方・考え方を鍛え、解像度を高めていく、という流れを想定しています。

次期学習指導要領においては、ゴールのイメージをもつことを重視しています。

そのためにもデジタル化して、教員のみならず保護者も子供も含めて、誰でもいつでも確認できる学習指導要領とする必要があります。

中教審から次期学習指導要領決定まで

初等中等教育分科会は、教育課程や学びの在り方、教員養成、幼保小連携や地域連携、安全対策など、初等中等教育におけるこれからの学びの環境を包括的に検討する場です。

この分科会下には、より具体的な議論を行うために多くの部会が設置されています。

教育課程企画特別部会は、次期学習指導要領の大きな方向感を検討する場です。

昨年9月に論点整理をまとめた後、部会の下に各教科のWGを設置して専門的な内容を討議しているところです。

総則・評価特別部会では、学習指導要領の総則全体や、目標や評価の在り方について検討しています。情報活用能力を始めとする学習の基盤となる資質・能力についても、デジタル学習基盤が整うという前提から再整理しています。

情報・技術WGでは、小学校の総合的な学習の時間に付加される情報の領域(仮称)や、中学校で新設される情報・技術科(仮称)と、高等学校・情報における学習内容の高度化について審議しています。

算数・数学WGでは、AIやデータサイエンスの取り扱いや高等学校・情報との接続、これらの学びの基礎になるような数学の学習内容の扱いについて検討しています。

データ時代に向かう今だからこその内容です。さらに、数と式や図形、関数や統計など、数学にはそもそもどのような領域があり、どう実社会で使われているのかについてのガイダンス科目を設置し、数学の重要性を再度見直すことになっています。理科でも同様の教科が検討されています。

報道で大きく取り上げられた「ローマ字入力は小学校2年生から」も、現時点では決定ではなく、国語WGで示された提案の一つです。

国語に関しては、高等学校に大きな変化がありそうです

「論理国語」の見直しを図ったり、話すこと・聞くことの領域に加え「話し合うこと」を新規領域と設定することが検討されています。国語として話し合いの技術を取り扱うことで、他教科や特別活動、探究での話し合いの質の向上につながるであろうという方向性です。

「探究」については探究の範囲をさらに広げることが考えられています。

小学校から個人探究を重視すること、課題探究に加えてものづくりなどの創造・創作領域も含めること、さらには各教科等でも探究的な学びに取り組むようにするなどを討議しています。情報収集のサイクルを回すことだけに傾きがちだったこれまでと比較すると、大きな変化です。

教育課程企画特別部会では、これらWGの討議内容を審議して全体最適を図っていきます。

そのためWGでの審議内容がそのまま反映されるとは限りません。結果は「審議のまとめ」として本年夏以降に公開され、次期学習指導要領の方向性がいよいよ明確になります。

教科名などもここで一定の結論が出るでしょう。

この審議のまとめについてパブコメを実施した後に「答申」として公表され、文部科学省は、答申に沿った形で学習指導要領を実際に作成するという流れになります。

デジタル学習基盤特別委員会では、ネットワーク環境や情報端末の更新、教育データ利活用や校務DXなど、デジタル学習基盤に関係する会議体を全体的に把握して整備状況を調整する役割です。

各設置者は、このデジタル学習基盤を円滑に利用できるような環境を整備する責任があります。

2026年度の全国学力・学習状況調査において実施されたCBT調査ではうまく実施できなかった学校がありました。2025年度よりもその数は減ったものの、引き続きネットワーク環境の検証と見直し、不具合を解消する必要があります。

統合的な理解・総合的な発揮とは~堀田龍也教授・東京学芸大学副学長

各教科等WGでは「高次の資質・能力」の設定の趣旨や授業改善に向けたねらいをまとめているところだ。図は小学校・情報の領域(仮称)について(文科省資料より)

「デジタル教科書」から「デジタルな形態を含む教科書」へ

「デジタルな形態を含む教科書の発行・採択等の指針に関する検討会議」がこの4月に文部科学省により設置されました。

本会議より、これまでの検討会等で使用されていた「デジタル教科書」という文言が「デジタルな形態を含む教科書」になりました。

これは、教科書としての選択肢を「すべて紙」もしくは「すべてデジタル」の二者択一とするのではなく、両者の良さを活かしうまく使い分けていきたいという意見を尊重して検討していこう、という方針の表れです。

デジタルを利用しつつも文学作品は紙で読みたい、低学年のうちは手書きを重視したいなどの現在の世の中のニーズと大きくかけ離れたことはしない、ということです。

現在国会で審議中(※)である法律が改正されれば、無償給与や検定の対象は、紙の教科書だけではなく、デジタルな形態を含む教科書に拡大され、学校や子供にとっての選択肢が拡大します。

そうなると「デジタル教科書を使いたいが予算がないので導入されていない」という課題は解消することになります(※5月1日時点)。

座長として断言はできませんが、教育の情報化に長く関わってきた研究者としては、3つの選択肢のうち、デジタルな形態を含む教科書を多くの自治体が選択するであろうと予想しています。

そして活用に慣れるにしたがって、学校によっては、もしくは校種や学年、教科によっては「すべてデジタルでもよい」と感じる場面が増え、徐々に移行していく可能性はあると考えています。

デジタルな形態を含む教科書の無償給与が実現すると、制度としてさまざまな制約が残ります。

例えば現状、教科書は各設置者が採択する点も、その制約の一つです。

一人ひとりの多様性に対応するという観点から考えると、難しいことですが、学校や子供自身が選択できるようにする方法も検討する可能性があります。

制度に合わせて運用が変わり、現場はどう反応するのか。現場や教科書会社の声、そして技術の進展も踏まえつつ、より良い運用とするためのガイドラインを本会議では検討します。

今後は一部の学年や教科で紙を一切制作しない教科書会社が現れてくる可能性もあり、これまでとは異なる競争が生じる可能性もありますね。

学校現場や制作現場の声が反映されながら次第にちょうどよい形に落ちついていくでしょう。

デジタル化の波は教科書だけではありません。全国学力・学習状況調査は「紙が良い」という声もありますが、宅配業界の人手不足や配送コストの面もあります。司法試験も医師国家試験もCBTが行われている今、教育業界もそれに倣わざるを得ないのではないでしょうか。

次世代校務DX環境は柔軟な共同調達を

次世代校務DX環境は、デジタル学習基盤の円滑な活用を支えるためにも重要な役割を果たします。

国はこちらの調達について、県域での共同調達を求めています。

その理由は、小規模自治体や詳しい人材や指導主事がいない自治体が次世代校務環境を整備できるようにするためです。

同時に多くの台数を調達するスケールメリットでコストが落ちるほか、各自治体の負荷が分散される可能性があります。

ただし義務教育段階の学校設置者の多くは市区町村等です。県に決定権があるわけではありませんが、必要な環境を円滑に整備するための音頭を取る役割を担っていただきたいのです。

県と管轄下の市町村が協力し合うことで、ダイナミックで特徴的な調達を実現した自治体もあります。

市町村の思いを受け止めて頑張る県教委がさらに増えることを期待しています。

一方で、明確な意思をもって整備を進めたいと考えている自治体独自の動きも可能とし、オプトアウトできるようにすることも重要です。

世の中が複雑化している今、自らの力で切り開くことができる資質・能力をいかに育むか。それを目的にさまざまな改革が同時に進んでいますので、引き続きご注目下さい。

 

教育家庭新聞 教育マルチメディア 2026年5月25日号掲載


【堀田龍也教授の過去のインタビュー記事】

◎2025年5月19日
◎2024年6月3日
◎2023年6月5日

 

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