GIGAスクール構想により高等学校でも1人1台端末の配備が進んでいる。高等学校段階の端末整備状況(2024年度当初)によると公立高等学校においてBYODもしくはBYADなど保護者負担として整備された端末は約5割であった。
家電量販店であるヤマダデンキは、公立高等学校のBYOD端末等について全国に店舗を持つというメリットを活かした販売を行っている。また、BYODによる配備を選択している27県のうち16県でASUSの端末が選択されているという。
高等学校のBYOD端末配備の現在とGIGA1期からの進化について、ヤマダデンキ法人営業部理事の鵜沼氏とASUSのシニアビジネスデベロップメントマネージャーである鈴木氏が対談した。
端末の実機を見比べて選択できるように展示している
――高等学校におけるBYOD端末は、ECサイトで教育委員会や学校が指定もしくは推奨している端末から選択して購入する形が一般的です。ヤマダデンキでは現在、どのような体制で提供しており、ASUSはどのように関わっていますか
鵜沼 智路氏・ヤマダデンキ法人事業部法人営業部理事
■鵜沼 2025年度は群馬県教育委員会が推奨する端末6種類について、法人営業部を設置している県内4か所の弊社店舗とECサイトの双方で購入できるようにしています。
店舗には専用コーナーを設けて対象の端末をすべて展示し、実際に見て触って選択することができます。学校により端末の推奨OSが異なるため、それに関する資料も展示しました。
そのまま店舗で購入手続きもでき、クレジットカードやバーコード決済、電子マネー(交通系)、商品券のほか分割払いなど多様な決済が可能で、商品も店舗で受け渡しができます。
特別保証や初期設定サポートもリーズナブルに提供しており、ご家庭の判断で追加することができます。特別保証は、水没や破損、自然故障のほか盗難や紛失に対応しており、契約期間中は何度でも利用でき、かつ修理申請は店頭でも受け付けています。
今年度は群馬県のほかに茨城県、埼玉県、富山県、神奈川県などにも同様に展開しており、店頭・ECサイトでの販売比率は概ね半々となっています。今回ご紹介している6製品のうち4製品がASUS社のChromebookとWindowsPCです。
鈴木 真二氏・ASUS JAPANシニアビジネスデベロップメントマネージャー
■鈴木 かつては「端末は県が整備するもの」という考え方が一般的でしたが、今では保護者負担によるBYODの導入が加速しています。
現時点で、公立高校においてBYOD方式を採用している都道府県は、全国47都道府県中27県と約57%に達しています。
すべてのBYOD実施県(27県)に対して弊社の端末を提案できているのは18県ですが、そのうち16県でASUSが選定機種に含まれており、かつ選定先において89%と高い採用率となっています。公立高校BYOD市場だけで10万台規模の販売実績となる可能性が見込まれており、大きな手応えを感じています。
実際に店頭で端末の実機を手に取り、操作感やサイズ感を確認したうえで購入できるという体験は、初めて学習用端末を選ぶご家庭にはもちろん、弊社にも大きなメリットであると感じています。
■鵜沼 2019年度は茨城県で、他の提案企業と同様に、ECサイトによる販売展開のみで、弊社制作のチラシを学校にお送りして端末を選択していただき、サイトからご購入いただく形でした。
しかしチラシにある弊社名を見て、「実機を見て端末を選びたい」と保護者やお子様が来店することも多かったのです。しかしGIGAスクール構想向けの端末は特別仕様の製品のため店頭にはありません。
そこで教育委員会と相談して急遽、法人営業部のある店舗に見本機を展示することとしました。すると次は、店舗で購入手続きをしたい、という要望が保護者から届くようになりました。そこで2020年度から教育委員会への提案に、ECサイトによる販売に加えて店舗展示・支払い等を可能にする内容も盛り込み、現在の形になりました。
生徒とともに家族が一緒に来店することも多いため、スペースを十分に確保していますが販売開始日直後は行列になることもあり、店舗で選択・購入する方は予想以上に多いと感じています。
■鈴木 GIGA端末は多くが学校向けの特別価格・仕様になっており一般店舗での取り扱いは難しい面があります。御社では法人営業部が窓口として管理しており、メーカーとしても安心です。
学校に配布される端末の説明を記載したチラシについても、通常からチラシを制作している御社ならではのノウハウが生かされており、とてもわかりやすいと感じました。このような販売・サポート体制は、全国に店舗網を持ち、地域住民からの認知度も高いヤマダデンキ様ならではの強みですね。
法人専用窓口のある店舗に県立高等学校新入生向け予約受付カウンターを設置
――ヤマダデンキではBYOD端末としてASUSの提案率が高いようです。その理由を差し支えない範囲で教えてください
■鵜沼 理由はいくつかあります。
最も大きいのは端末故障や初期不良が圧倒的に少ない点です。
昨年度は群馬県にASUS社の端末を約4500台納品しましたが、初期不良はわずか4台と圧倒的な少なさでした。故障も少なく、かつその理由も落下と水没で、端末そのものの不具合はほぼありませんでした。
初期不良や故障が少ないと、教育委員会に安心して提案することができます。
■鈴木 弊社では、出荷時の検品はすべて国内の修理センターで行っており、箱破損であっても交換するなど最善を尽くしています。
また、端末のバンパーに特殊素材を用いていることから落下や衝撃への耐性もあります。
米国国防総省軍用規格であるMIL-STD-810に準拠した耐久性テストを24項目以上クリアしており、教育現場で安心して使ってもらうことにフォーカスしていることが初期不良や不具合、故障の低減につながっています。
■鵜沼 水没については、端末とペットボトルをカバンに入れて通学する高校生も多いことから生じる例も多いようです。
■鈴木 あり得る状況ですね。PCケースやインナーバッグに入っていれば、故障率はさらに減りそうです。故障率を下げるためにも利用してほしいところです。
■鵜沼 端末の性能もGIGA2期では液晶画面も大きくなり、さらに進化していると感じます。Chromebook、WindowsPCともに、起動や作業時のレスポンスも良く、提案した教育委員会からは好評でした。
■鈴木 今期のラインナップはさらに充実を図っています。
学校からは、推奨端末や指定端末の見本機貸与の依頼を受けることが多くあります。しかし時期が集中するため、対応には限界があります。ヤマダデンキに行けば見ることができる、と紹介できる点は大きなメリットです。
――GIGA1期と2期で、BYOD端末についてユーザの選択傾向に変化はありますか
■鵜沼 スペック及び価格において複数種類を推奨している教育委員会や学校の場合、前回の販売実績を基に各端末の台数を用意していますが、今年度はミドルクラスの端末が予想以上に選択されています。
最初にミドルクラスの端末が売り切れる店舗もありました。
■鈴木 低価格の端末を選択する保護者や生徒ばかりではないのですね。興味深いです。端末のスペックに知識をもつ保護者や生徒が増えているということでしょうか。
■鵜沼 保護者のアドバイスによる場合もありますし、生徒が自ら選択する場合もあるようです。
■鈴木 高校に進学する生徒たちは、すでに小・中学校でGIGAスクール構想による端末活用を通じて、ICTに慣れ親しんでいる世代です。
しかしいつまでも小中学校を想定した、いわゆる「GIGAスクール標準仕様」のままでは、利用者である高校生にとっては物足りなさや不自由さを感じる場面も増えてくるかもしれない、学校や企業側がスペックの制限という形で“蓋をしてしまう”のは非常にもったいないことだと感じていました。
ミドルクラスの端末の選択が増えていることを聞き、その思いは間違っていなかったと思いを新たにしました。
弊社としては今後も、選択肢の幅を広げる意味で、高校生が自らの学びや創造性を存分に発揮できるよう、より高性能な端末も提案し、高校生活にとどまらず、卒業後も引き続き愛用したくなるような製品を目指したいと考えています。
もっとも、端末スペックの向上には一定のコストが伴うため、初期費用が現在よりも上がる可能性も否定できません。そうした点については、ご家庭の保護者の皆様にもご理解・ご納得いただけるよう、丁寧な情報提供とコミュニケーションを重ねていくことが必要です。
――教育委員会や高校生に向けたメッセージをお願いします
■鵜沼 BYOD端末の提案については、高校入学を迎えるタイミングで、親子の会話を通じて購入を決める特別な体験を提供したい--そんな想いから始まり、現在につながっています。
小学校入学時には祖父母がランドセルを贈る文化が根付いているように、高校進学時にも家族の絆を深める購入体験があっても良いのではないかと考えています。
ご両親とお子様がともに製品に触れ、悩み、話し合い、納得して選んでいただきたい--それが私たちの願いです。家族にとって特別な時間を演出しながら、安心して購入できる仕組みを作っていきたいと考えております。
現在は、DXハイスクール向けに、高性能PCや学校施設向け家具も提案しており、このほか各種通信機器や照明、太陽光発電や防災・ヘルスケア機器、セキュリティ対策、災害備蓄品管理代行サービスと学校向けに幅広い提案が可能です。
全都道府県179拠点において約900人の法人営業担当を配置しており、専任体制でしっかりサポートできる点、顔が見える安心感、直接商品に触れて選ぶことで納品後のトラブルを減らし、より満足度の高い購買体験を提供できる点が弊社の強味です。今後も「質の高い学びを支えるための価値ある提案と提供」にこだわっていきたいと考えています。
■鈴木 ASUSが文教市場向けの取組に本格的に注力し始めたのは、2014年10月からです。この時期に日本市場においてChromebookの販売が開始され、弊社も当初から関わっております。
ASUSといえば「マザーボードのメーカー」「コンシューマ向け製品に強いブランド」といった印象を今もなおお持ちの方も多いかもしれませんが、法人ビジネスに関わる専任の営業メンバーは既に20人を超え、全国各地の販売代理店の方と連携しながら、教育機関をはじめとする企業・官公庁などに提案しています。
私たちは、単にPCを作っているだけではありません。本当に届けたいのは「可能性」です。
今の高校生は、これまでにないほど多くの情報にアクセスでき、世界中の誰とでもつながり、自分のアイデアをすぐに形にできる時代に生きています。だからこそ、私たちは「挑戦する勇気」と「未来を切り拓く力」を、PCを通じて支えたいと考えています。
失敗を恐れず、自由に、柔軟に、自分の興味を深く掘り下げてほしい。そしていつか、自分らしい言葉や行動で、誰かの心を動かせる大人になってほしい。そんな未来を心から応援しています。
教育市場向けに複数のモデルラインナップを提供。搭載OSはChromeOS・WindowsOS。画面サイズは10.5インチ、11.6インチ、12.2インチと幅広く、端末スタイルはデタッチャブルタイプ・コンバーチブルタイプなど、学習スタイルや授業形態に応じて選択できる。
独自のサポートサービス「ASUSのあんしん保証」はメーカー標準の1年間保証の範囲内で、部品代金の20%のみで修理が受けられる。物損による故障も対象。国内展開のPCメーカーでは唯一のサービスだ。
幼小中高校期教育のニーズに合わせた幅広い用途のツールと機能を提供するASUS Chromebook CZ11 Flip(CZ1104F)。MediaTek Kompanion520(MediaTekによるArmベース設計のCPU)を搭載し電力効率の強化、高速性能などを向上。教育向けSTEAMアプリ等も高速に処理できる。
インテルN200(インテルのモバイルPC用CPU)搭載のWindowsPC。部品交換可能なモジュラー設計により端末の使用可能期間を延ばす。高精度のスタイラスペンも付属。15秒の急速充電で最大45分間使用できる。
WindowsPC「ASUS BR1104F」
ChromeBook、WindowsPCいずれの機種も米国国防総省軍用規格であるMIL-STD-810に準拠。本体の全面をカバーするゴム製バンパーにより落下時の衝撃を軽減。標準的な机の高さを超える120㎝からの落下試験などASUS独自のより厳しい品質テストにも合格している。
1回の充電で1日中使用可能な大容量バッテリーを搭載。Wi-Fi6に対応。4G LTEもオプションにより可能だ。
堅牢で柔軟なヒンジによりスムーズに360度回転する11.6型液晶ディスプレイを装備。TUV Rheinland(※)の目の保護認証も取得。目の保護に配慮した。(※テュフラインランド社による工業製品の安全試験・認証)
■鵜沼 智路
株式会社ヤマダデンキ法人事業部法人営業部理事。法人事業部下の営業部署を統括
■鈴木 真二
ASUS JAPAN株式会社 システムビジネスグループ コマーシャル事業本部 営業部 シニアビジネスデベロップメントマネージャー
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年5月19日号