北海道教育庁オホーツク教育局では教育推進の重点の1つとしてICT活用による校務効率化(働き方改革の推進)を掲げている。
オホーツク管内の斜里町立斜里中学校では教職員の働き方改革の推進の一環で、学校徴収金システムを導入。2024年度は希望品販売のみ、2025年度からは集金機能と段階的に導入し、教育委員会の協力を得て斜里町のモデル校として成果を共有している。
同校の事務職員である松田浩斗事務主任に当時の課題と成果、教育委員会の協力を得た経緯について聞いた。
松田浩斗事務主任
2021年度から同校に勤務しており、校内の働き方改革推進委員会(教頭、教務、生徒指導部、各学年から1人、事務職員)に参加しています。ここで2023年度末の課題にあがったのが、学校徴収金業務の効率化です。
学年の会計担当の職員が集金袋に入った徴収金の額を確認したり、通帳に記帳して入金を確認したり、未収金について保護者に督促したりという業務の煩雑さに教員も限界を感じていました。現金を生徒が学校に持ってくる集金方法も時流に合わないという声も上がっていました。
情報収集をしていた際に見つけたものが学校徴収金システム「学校モール」(サンワ)です。同じオホーツク管内の学校でも導入されており、それならば本校もすぐに始めることができるのではないかと早々に検討を開始。教職員からも「現金徴収を止められるものならばすぐに止めたい」「次年度から始められるのであればそうしてほしい」と同意を得たのが3月上旬で、新年度が始まる数週間前でした。
学校モールには「集金機能」と「希望品販売機能」があります。
集金機能は全員が集金対象になるもので、本校ではドリルなどの教材費やPTA会費、生徒会費や同窓会費、部活動費がそれにあたります。
希望品販売機能は希望者のみが購入するもので、例えば音楽で利用するリコーダーや美術で利用するアクリルガッシュ(不透明水彩)などの教材関連や文化祭のDVD、卒業式のDVDなどです。
両方とも次年度からのシステム導入を検討しましたが、数週間の準備期間では難しく、2024年度は希望品販売機能のみ導入することになりました。
管理職の決断も迅速で、すぐに保護者にお知らせを発信。希望品購入では、クレジットカード支払いなども可能になり、システム導入により選択肢が増え、保護者の理解をスムーズに得ることができました。
希望品販売機能の活用が問題なく進み、本来の目的である集金機能を2025年度から活用できるように秋頃から準備を進めました。
集金機能は全員が対象となるためシステム利用料、振り込み手数料ともに保護者負担では導入が難しいと考え、斜里町教育委員会に予算措置を依頼。すると教育委員会でも学校徴収金について別の集金システムを検討しているところだったのです。
そこで、本校では既に学校徴収金システムを導入し、次年度は拡充を予定していることを報告。現金の取り扱いが生じずに保護者と業者間でやり取りできる、既存のシステムであればすぐに活用を始めることができるなど、本校が感じているメリットを伝え、斜里町のモデル校として予算を確保。無事に集金機能も導入することができました。
これまで希望品販売や各徴収金は集金時期も集金方法もバラバラでした。案内を配布して希望者をまとめ1製品ごとに集金する必要もありました。不定期に保護者に購入や支払いの案内が届いていたため、保護者も混乱しやすかったのですが、システム導入により情報が整理され、集金の流れが大変スムーズになりました。
学校は、それぞれの希望購入品や集金の入金状況をサイト上ですぐに確認できるため教員や学年会計とのダブルチェックも行いやすくなります。
集金袋で集めた小銭を確認する手間や金額が合っていなかった場合の担任への連絡、担任から保護者への連絡作業も不要になりました。これらの過程がなくなったことは教員にとって大きな変革です。
希望品販売では約3分の2の保護者がシステムを利用しており、保護者からは「つり銭がないように小銭を用意する手間がなくなった」「コンビニエンスストアで支払いできる点が便利」という声も届いています。
また、集金機能についてもほぼ全ての請求に学校モールを利用。8割の家庭が口座引落を登録し、その他も銀行振込やコンビニ払いを利用しています。
これまで必要だった通帳記帳と帳簿の整理、請求書の作成や業者への支払い、保護者への督促などの仕事がなくなり、事務職員の仕事もかなり減りました。
未入金の場合は学校モールが直接保護者に電話やショートメールで連絡してくれる点もメリットです。導入前と比較すると、未入金が約10分の1になり効果が上がっています。
保護者への督促を学校が行うことに限界を感じていたのですが業者に直接払う仕組みであること、情報が整理されわかりやすくなったことが未入金率低減の要因ではないかと考えています。
当初狙っていた成果は出せたため、まだ現金徴収を行っているPTA会費についても本仕組みの導入を検討中です。生徒が学校に現金を持ってくることをゼロにしたいと考えています。
現在、モデル校として活用状況を他校に情報提供をしているところですが、町内の学校(小学校2校、中学校1校、義務教育学校1校)で今後導入したいという声もあり、各校の管理職や事務職員で検討を進めているようです。オホーツク管内の他町からも問い合わせが届いています。さらに希望があれば広く情報提供できればと考えています。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年7月21日号