教職員全員に公用スマートフォン(以下、公用スマホ)を導入することで教員の働き方改革と校務DXを同時に進めることができる。春日井市教育委員会では公用スマホを導入し、2025年2学期から活用が始まる。
DXハイスクール及びリーディングDXスクールに採択されており、独自の生成AIシステムを開発・活用している千代田区立九段中等教育学校(東京都)では2024年度から公用スマホを全教職員で活用。様々な効果が生まれているという。導入の経緯と効果について野村公郎統括校長と市川淳尉主任教諭に聞いた。
(左から)教職員PC(WindowsPC)と公用スマホを持つ市川淳尉主任教諭と野村公郎統括校長
公用スマホ導入のきっかけは昨年度の統合型校務支援システム更新です。これまでは専用回線を用い職員室で行っていた校務環境の一新を図りました。
まず、授業用・校務用端末を1台とし、セキュリティを担保して職員室外や自宅でも校務をできるように、多要素認証をそれぞれの教員のスマホで行う仕組みとしました。一般的な認証は個人スマホでも可能ではありますが、セキュリティと利便性向上のため、公用スマホを導入することとしました。
また、これまでは個人スマホを用いた業務連絡が必要な場面があり、セキュリティの面や業務改善の面から何とかならないかと教員からも声が頻繁に上がっていました。修学旅行を始めとする校外学習では、教員連絡用に携帯電話やスマホをレンタルすることもありました。校務DXの一環で公用スマホを導入することでこれらの問題も、共に解決することができます。
そこで校務支援システムを更新する際に公用スマホを用いた認証基盤の構築を仕様書に盛り込んだプロポーザル提案を千代田区教育委員会が公募。公用スマホはリースで調達しました。
仕様書は、本校の経営企画室と担当部署の教員が相談しながら作成しました。
導入後は予想以上に業務改善効果が生まれています。
公用スマホは小型の教員用端末のように利用でき、かつ外出時でも月20Gまでの通信を利用できます。
公用スマホと教員用端末(WindowsPC)は共にVPN接続により安全に通信できる仕組みとしており、学校外であってもスマホを用いて校務環境に安全にアクセスできます。保護者からの欠席連絡も公用スマホから閲覧でき、システムに反映できるためシームレスな運用が可能になりました。
それまでは個人スマホに学校からの通知が届いたり、学校に関する業務連絡を個人スマホで行ったりしている教員も多かったのですが、勤務時間外や休日には公用スマホをしまっておくだけで業務とプライベートを確実に分離できます。一方で業務中は公用スマホのみを利用することで、業務に集中しやすくなり、働き方改革に着実に役立っています。
台風など天候の影響があっても本校では臨時休業はせず、オンライン授業を行っています。公用スマホがあることで緊急の場合、教員用端末を持ち帰っていなくてもそれぞれの教員が自宅からオンライン授業を行うことができるようになりました。
出席停止の場合や不登校生徒を対象にした通常授業のオンライン配信も、教員用端末とは別に公用スマホがあることで、実施しやすくなりました。
スマホはマイクの性能も良く、音声も聞き取りやすいようです。
本校は独自の生成AIシステム「otomotto」(※)を開発し、教職員も生徒も利用しています。これには音声入力機能がありますが、スマホの集音機能は良好なため、使いやすいというメリットもあります。
公用スマホを導入したことにより、あるべき環境に近づいたと感じています。
(※)生成AI大賞2024で学校として唯一受賞。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年7月21日号