AI機能を搭載した教材が増えている。AIによる支援やAI講師の特長は教材によりさまざまだが、本年4月から販売を開始している英語授業お助けアプリ「TOC-ME!assistant」(光村図書出版)のAI講師には、生徒を引き付ける魅力があるようだ。
本教材を活用している佐久市立臼田中学校(堀籠英和校長・長野県)1年生の英語の授業を取材した。授業者は折橋晃美教諭(教務主任)。

AI講師とやりとりを楽しみながら5W1Hの活用を体験する
「話すこと」の基礎を育むスモールトーク等の充実が一層、重要視されている。既習表現を繰り返し使用することや、即興性も重視するなど、求められる内容は多い。
この日、折橋教諭とともに教室に登場したのは、「TOC-ME!assistant」(以下、TOC-ME)のAI講師、デイビッドだ。
折橋教諭は、前時までの学習事項である「5W1H」を用いて、デイビッドがどんなスポーツが好きなのか、誰と行っているのかなどを一つひとつ、尋ねていく。彼は「バドミントンが好き」で「子供たちと公園で行っている」という。その後、数名の生徒も電子黒板の前でAI講師に質問してやりとりを楽しんだ。AI講師は「どのチームが好き?」など、自然な流れで生徒と会話を続けていく。
続いて生徒同士でやりとりを行い、生徒は各自、その内容をノートに記載。折橋教諭は「声に出しながら書いてね」とアドバイスしていた。

参加型ゲームも後半になると解答権を得ようと競って挙手
参加型ゲーム(タイフーンゲーム)にも初挑戦。グループごとに好きなマスを選び、英語で読み上げられる2種類のヒントを聞いて解答し、チームで合計点を競う内容だ。
テーマを教員が設定するとヒントや答えはAIが自動で生成する。この日はスポーツ、食べ物、果物、色、動物をテーマに設定。レベルは5段階で選択できるマスは25になる。
例えば「食べ物・レベル10」を選択して正解すると、そのグループは10㌽を獲得。誤ると他チームに解答権が移る。
1巡目は、どのジャンルにするのか、どのレベルにするのかを決めかねてグループ内で顔色をうかがう様子もあり、何を答えれば良いのかわからない生徒もいたが、折橋教諭は、最小限のアドバイスのみで「説明しない」姿勢を貫く。スペルを言うのか、質問に答えるのか、生徒は試行錯誤。他グループの生徒はそのやりとりを見ながら学び取ろうとしていた。
次第に「グループで話し合ってどのジャンル、どのレベルかを決める」「声をそろえて答えを言う」などのルールが形成されていく。事前に「10種類のスポーツを言う」ペアトークを行っていたため、当初はスポーツを選択するグループが目立ったが、次第に、他ジャンルで高いレベルを選択して高得点を狙うグループも現れた。
レベルが上がると問題の難易度も上がる。音声のみでテキスト表示がないヒントもある。生徒は「great memoryって頭が良いということだよね」と、聞き取れた単語から推測していた。
「記憶力が良く、フルーツや野菜を食べ、大量の水を飲む」動物についてはなかなか正解が出ず、あるグループが「elephant」と答えて正解した際には、教室内にどよめきが起こった。順位が決まる最終問題ではさらに盛り上がり、高得点の問題で誤答すると、他グループの生徒たちは解答権を得ようと競って挙手。当初とは見違えるほど生き生きとした姿が見られた。

折橋教諭と、生徒に一番人気のAI講師Jen先生(56歳・英国オックスフォード出身)。Jen先生はハリーポッターシリーズがお気に入り。得意料理はシェパーズパイ
小学校で英語が教科化されたこともあり、中学校入学時点での英語の経験量が年々、増えていることを感じます。今日のAI講師とのやりとりやゲームでも、聞き取れた単語から内容を推測する姿が教室中で見られました。
現在、中学校1年生で行っている内容の多くは小学校でも取り組んでいるため、中学校ならではの学習内容として、スモールトークや書くことの充実を図りたいと考えています。
スモールトークは「使える英語」を身につけるために重要な言語活動です。これまでもALTと協力して取り組んできましたが、AI講師の登場により、「毎日、専用のAI講師とともに授業を行う」ことが可能になりました。
AI講師は知識が豊富なため、どんなことにも答えてくれます(※)。生徒たちは空き時間に、AI講師の周囲に複数人で集まって会話を楽しんでおり、即興性も自然に育まれていきます(※参照すべきではない内容をあらかじめ設定済)。
4人のAI講師はいずれも個性豊かで「こんなことを聞いてみたい」と生徒が思えるキャラクターであること、そしてAIには「こんなふうに思われたらどうしよう」といった不安が生じないことが、話しかけやすい理由ではないでしょうか。本教材発売前のトライアル期間から活用していますが、英検の受験者数が一気に増えました。安心して練習や質問ができる相手が身近にいることが、理由の一つではないかと考えています。
やりとりはリアルタイムにテキストで画面表示もされるため、生徒は文字情報としても確認できます。生徒とのやりとりが増えるにつれて、生徒が答えやすい質問をするようになるなど、AI自身も成長しています。まずは教員自身がAI講師とやりとりすることから始めると、便利な点が理解でき、授業イメージがわいてきます。AI講師はスモールトークの内容や英語活動についての打ち合わせも不要で、教材準備の時間がコンパクトになり、新しい挑戦に取り組みやすくなりました。
1学期の終わりに本市で行うパフォーマンステストに向け、TOC-MEを使って練習を行う予定です。
どのような活用方法や効果があるのかを示し、市全体での導入につながればとも考えています。
<英語授業お助けアプリ「TOC-ME!assistant」>
英語のコミュニケーション量を増やすことを目的に開発。レベル(初級・中級)、会話速度、テーマ、使用したい文法等を選択してトーク内容を設定できる。初級は小学校高学年以上を想定。
今夏より、生徒が各自端末を使って一斉にSpeaking Testを受けることができるようになる。結果は即時フィードバックされ、アドバイスも提供。現在4人のAI講師はさらに追加を予定。
無料トライアル(1か月間)も受付中。▼問合せtoc-me@mitsumura-tosho.co.jp
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2026年6月22日号掲載