AIエージェントPCの実現により、「個人がローカルな環境でAIを開発する」「企業が自社データでAIを育てる」「日本文化を反映したAIが生まれる」といった新しい時代が始まろうとしている。この仕組みは、膨大なデータをクラウドに上げ続けることのコストや安全性の課題を解決する選択肢にもなり得るだろう。
マウスコンピューターの軣秀樹社長と、NVIDIA日本代表兼米国本社副社長の大崎真孝氏は、PCメーカーとGPUメーカーの立場から「AI PC=ハード」「ローカルAI=ソフト」「AIエージェントPC=体験」という3観点から、AI時代のPCの進化を語った。

マウスコンピューターの軣秀樹社長(左)とNVIDIA日本代表の大崎真孝氏(右)
大崎氏は、ここ半年のAI技術の進化を「大きな転換点」と語る。
「AIエージェント技術が一気に使いやすくなり、特化型アシスタントが誰でも利用できる段階に入った。これが最新トレンドだ」
軣氏も同意し、「AIが‘”脳”だとすれば、AIエージェントは”手足”。体験して初めて価値がわかる」と述べる。
AIエージェントPCとは、AI PC上でAIエージェントが常時動作するPC体験である。
大崎氏はエージェントPCの性能について「見た目はノートPCだが、スーパーコンピュータの約10分の1の能力を持ち、消費電力は10万分の1。個人が自分専用のAIを開発してAIエージェントサービスを提供する時代が到来した」と説明。
軣氏も、AI PCの次に来るのは、エージェントPCであると語り、「クラウド環境のセキュリティ懸念を踏まえると、ローカルでAIを動かせる環境には大きな価値がある。日本に最適なLLM(大規模言語モデル)をローカルで開発、活用できる環境も可能になる」と、今後の開発の方向性を示した。
大崎氏はローカルAI(PC内でAIモデルを動かす技術)の価値を次の3点であると説明した。
▼セキュリティ=データを外に出さずにAIを動かせる
▼スピード=クラウドを介さず高速処理が可能
▼コスト=クラウドAIは従量課金モデルだがローカルAIは固定費
さらに「日本の文化や価値観を反映した”日本のAI”が必要」と強調。
軣氏も、ローカルAIは日本企業に適していると語る。
「日本企業はデータを蓄積している。修理解析や品質改善など、ローカルAIならセキュリティを保ちながら活用できる」と述べ、中小企業から大企業まで最適なAI環境を提案したいと語った。
大崎氏は「グラフィックスをAIで高精細化する技術はすでに始まっている。AIはバーチャル空間で学習し、シミュレーションするようになる。スーパーコンピュータとパーソナルPCが融合する世界が来る」と述べる。軣氏も、AIによって”予測できない世界”が開けると期待を寄せた。
大崎氏は、日本のAIが遅れた理由を「ハードウェア中心の産業構造」にあると分析。
「AI PCの普及により、研究者やエンジニアがローカルAIやAIエージェントを活用しやすくなる。クラウドとオンプレミスの両方でAIを構築できる環境が可能になる。これは産業の競争力を左右する」とし、「ぜひAIマシンをパーソナルに届けて、日本産業のリーダーシップに関わってほしい」と、マウスコンピューターへの期待を語る。
軣氏は「NVIDIAとともに、GIGAスクール構想や、eスポーツに続く教育分野の次の成長領域として、AIエージェントやローカルAIを広げていきたい」と話した。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2026年7月27日号掲載