食育へのICTの活用が進んでいる中、東京都中野区立江古田小学校主幹栄養教諭の菅野幸氏は「ICTを活用した食育」をテーマに同校での実践を紹介した。
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東京都中野区立江古田小学校主幹栄養教諭 菅野幸氏
ICTを教育に活用する目的は以下の3点。①興味・関心の喚起=デジタル教材を活用することで、食に関する情報を「目と耳」に届けられる、②理解を深め、実践力につなげる=文章だけでは理解につながらない知識でも写真や絵、図・表等を見せ、ビジュアルで刺激することで知識の定着を促進する、③連携と効率の両立=食育に関する情報や教材を共有フォルダで保存すれば、教員間で互いに使用し準備の効率化につながる。
同校では給食だよりを毎日発行し、その日の給食の献立や食材などを紹介。担任は同たよりを給食の時間に共有フォルダから電子黒板に映すことで児童に情報を提供できる。その日の給食を通じて栄養教諭が何を伝えたかったかを児童が知り、毎日の給食が「教材」に変わるという。
「給食室のバーチャル見学」では調理の様子などを動画で紹介。普段は見ることができない給食室が見られ、残菜率を減らすことにもつながっているという。
遠隔授業では、給食に使用する食材を作る生産者や産地と結ぶオンライン交流を実施。食材を給食に提供するまでの苦労や工夫など生産者の声を聞き、食材に込められた思いを知って感謝の気持ちが育まれる。
同校では食生活に関するアンケートをGoogleフォームで実施。従来の紙のアンケートでは回収・集計に時間がかかっていたが、ICTの活用で食生活の状況の見える化を実現した。
教員もICTを活用することで教材や資料をデジタルで共有するなど効率化が図られ、チームで食育を推進できるようになった。保護者や地域の住民にも変化が見られるようになり、ホームページ等を通じて学校給食への理解・関心が深められ、家庭との連携も図りやすくなった。
ICTを活用することで手軽に学べる一方、収穫体験など実際に食材に触れることも貴重な体験。今後は実体験とのバランスを大切にしながらICTの活用を進めていきたいと語った。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年8月11日号掲載