文部科学省「GIGAスクール構想の下での校務DXチェックリスト」に挙げられているものの1つに、学校徴収金(※)のデジタル化がある。完全にデジタル化している学校は約4割、一部導入している学校は約4割(2025年3月時点)と徐々に活用が広がっている。
開校140周年を迎える八街市立朝陽小学校は八街北中学校と合同で学校運営協議会を設置して家庭・地域と連携した学校づくりに取り組んでいる。教員の働き方改革に資するため、2024年度から現金で徴収していた学校徴収金のデジタル化に着手し、段階的に進めているという。どのように進めたのかについて今年度より同校に着任した石綿賢教頭に聞いた。
(※)学校給食費、教材費、校外活動費、芸術鑑賞費、調査関係経費(学力・体力診断)、学年・学級活動費、児童生徒会費、修学旅行費、入学時一括購入品、卒業諸費、スポーツ振興センター掛金、部活動費、PTA会費など、学校教育活動上必要となる経費として児童生徒及び保護者から徴収する経費
石綿賢教頭・八街市立朝陽小学校
2024年度当時は八街市教育委員会に所属しており、学校徴収金を現金で徴収することの煩雑さについて事務職員などと共有しており、教育委員会として、学校徴収金は現金徴収ではなく振込等とする方策を学校と模索していました。朝陽小学校については学校徴収金システムを導入するという報告が届いており、他校から一歩進んだ取組であると感じていました。
本校の学校徴収金システムの導入は当初、前任の赤川教頭が中心になって進めました。学校で現金を取り扱うことに伴うリスクを回避し、教員や児童、保護者の負担を減らす目的で着手し、今年度から本校教頭に着任して引き継いだところです。
いくつかの仕組みを検討した結果、導入したものが学校徴収金システム「学校モール」です。本仕組みでは集金に加えて業者への支払いまで可能であること、それが実現すれば年度末の会計報告もすべてシステム上で可能である、という拡張性が評価されたと聞いています。
しかし初の試みであり、全校児童を対象に口座登録を行う必要があるなどの新たな作業や各教材会社との調整も生じることから、まずはドリル等「教材費」のみをシステム利用の対象とし、かつ「徴収のみ」をシステムで行うことから始めました。それ以外の徴収金のシステム化や機能の利用は、2年目以降に順次進めることとしたのです。
導入後は、子供が現金を学校に持って来ることがなくなり、未納者への通知もシステムが担うことから、担任の現金徴収に関する仕事が明らかに軽減しました。未納者には学校モールが振替失敗時にショートメッセージ(SNS)と毎週月曜日に未納者へのメールやアプリ通知を入金が確認できるまで継続してくれます。本仕組みにより回収率の向上に大きな効果がありました。
昨年度は、PTA会費は現金徴収、アルバム等は卒業対策委員会が徴収、修学旅行は旅行業者に振り込むなど徴収方法が別々でした。
回収率の高さなど昨年度の実績を踏まえて、今年度はすべての学校徴収金を学校モールで行う準備を進めているところです。
具体的には教材費のほかにPTA会費や校外学習、修学旅行、卒業アルバム等をシステム上で行うこととし、4~5月初旬までに必要な徴収金を把握して集金計画を立てました。
これにより今年度は現金を扱う業務から学級担任を100%解放することができる見込みです。
徴収は7月から始まり、2月までに全5回で行います。保護者には5月に、各月の徴収額について通知しました。
学校モールから提供される口座登録についての保護者への案内文もリニューアルされ、かつ2年目で口座登録が必要な対象者は新入生のみであることからスムーズに進行しました。
徴収金の納入状況はすべてPCの管理画面上で一覧できる点もシステム導入のメリットです。
様々な徴収金をすべて同じ仕組みで管理することは保護者にとっても利便性が高いと考えています。
今夏、取り組んでいるのは、本校に関わっている教材等関連業者5~6社への協力依頼です。
現在は学校モールの徴収の仕組みのみを導入していますが、業者への支払いも学校モールを通して行うことができます。そのためには教材会社等に学校モールに登録をしてもらう必要があります。
昨年度は初年度ということもあり、仕組みの構築に注力しましたが、1年を終えて回収率の高さや業務効率化などの効果も明らかになったことから、各社に協力を依頼しており、検討いただいているところです。
支払い業務までシステム上で一本化できれば、毎年度の会計報告書の作成も不要になり、見積書や請求書、領収書のやり取りや集約化という作業もなくなります。
また、一小一中の学区のため本校の児童がほぼ全員進学する八街北中学校にも同じ仕組みを導入することができれば、地域全体で同じ仕組みを利用することができ、保護者負担を軽減できると考えており、教頭会や事務職員の研修会で業務改善効果などを共有していきたいと考えています。
2年がかりとなりましたが、登録作業がオンラインでも可能になるなどシステムのバージョンアップ情報を保護者と共有しながら、さらに使い勝手の良い仕組みとしたいと考えています。
学校に現金を一切通さない集金業務システム。図工・美術の教材やアプリ等を販売するサンワが開発・提供。学校を介さず商品を購入することが可能で、学校での納品・請求・領収書作成業務が大幅に簡素化される。
「集金機能」と「希望品販売機能」がある。再販も可能。
同社は次の日程で製品紹介説明会をオンライン(Zoom)で開催する。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年9月15日号