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教育ICT

【寄稿】次期学習指導要領に向けて~デジタルな探究を現実世界で「記号設置」する~東北学院大学 文学部教育学科 稲垣 忠教授

2026年1月2日

学校図書館は知の体系と探究をつなぐ


■AI任せの探究から意味ある探究に

東北学院大学 文学部教育学科 稲垣忠教授

東北学院大学 文学部教育学科 稲垣 忠教授

次期学習指導要領に向けて、児童生徒が課題を設定し、主体的にその解決に取り組む探究的な学びは、総合的な学習(探究)の時間だけでなく、教科の学びにおいても重視する方向性が議論されている。その際、1人1台端末やクラウド等のデジタル学習基盤や生成AIの活用は、探究をより質の高い学びへと導く可能性と、表面的な形だけの学びへと堕してしまう可能性の両側面がある。

現実世界の事象についてデジタルの写像をつくり、デジタル空間上のシミュレーション結果を現実世界にフィードバックする仕組みはデジタルツインと呼ばれ、製造業や都市開発などで活用されている。デジタル学習基盤を活用した探究において児童生徒は生成AIと壁打ちしながら課題をつくり、オンラインで検索し、授業支援ツールやスプレッドシートで情報を分析し、他者と協働し、プレゼンテーションや動画やレポートにまとめ、その過程はデジタルのポートフォリオに蓄積される。探究学習のデジタルツインがすでに出来上がっていると見ることもできるだろう。

AIと人間の思考の違いは「記号接地」の有無である。AIが扱う情報は文字や画像、音声すべてにおいて現実世界の具体的な事物に直接結びつき=記号接地をしていない(ロボティクスが発達し、AIが身体性をまとうことで解決していく可能性はある)。では、デジタル学習基盤上での人間の探究は、記号接地しているだろうか。

確かに児童生徒はデジタル学習基盤を活用することで、多くの情報を扱えるようになった。効率的に集めた情報を整理し、スライドにまとめることもできる。ところが、こうした一連の探究のプロセスをなぞるだけであれば、急速に機能向上が進むエージェント型のAIが丸ごと代行できてしまう。デジタルツインは現実世界の写像であるが、どこにも接地しないAI任せの探究はシミュレーションでしかない。このような探究に陥らないためには、デジタルな探究を記号接地させることが必要だ。


■デジタルと実空間を往還する学習環境とは

デジタルな探究を記号接地させるための現実世界は3つある。

一つは社会とつなぐことである。地域や学校の身近な課題にしてもグローバルな課題にしても、課題には当事者が実在する。既にその解決に取り組んでいる人々や組織があることも少なくない。ネット検索で終わらない当事者からの情報収集や、探究の成果を社会実装へとつなげる情報発信は、PBL(プロジェクト型学習)は、意味ある探究にするために欠かせない。

次に、学問分野とつなぐことである。探究課題に関してどんなデータや先行研究、関連事例があり、その課題の位置付けを知ることから情報収集は始まる。AIによるリサーチ支援が高度化する一方、偽情報や情報の偏りに気付くことは難しい。筆者らが開発している探究の情報収集を可視化するサービスである「レフナビ」では、図書や論文など実在する情報を児童生徒が効率的にデジタル上に蓄積し、教員や司書がアドバイスしやすい環境を提供している。研究者や専門家に安易に質問する「探究公害」を助長するのではなく、知の体系と探究をつなぐ基盤として学校図書館の役割は大きい。

最後に探究の成果を学習者の成長とキャリアにつなぐことである。デジタルのポートフォリオやアプリ・サービスのログは教育データではあるが、蓄積するだけで探究を通した成長を実感できるわけではない。バラバラの教育データを統合的に可視化するダッシュボードや、多様な資質・能力を測るアセスメントと照らし合わせたフィードバックが必要だろう。これは教員の見取りの支援や、児童生徒が成長を自覚する機会をつくることに役立つ。さらに、探究で得た経験や身につけた技能をオープンバッジのようにデジタルで学習認定することで、長期的なキャリア形成にもデジタル学習基盤を活用できるだろう。

これらの接地先は、探究課題の特性、学年や発達段階、あるいは総合と教科それぞれにおいてバランスが異なるため、探究のカリキュラムとデジタル学習基盤の活用を考える起点の一つになり得るだろう。

デジタル学習基盤を活かして情報活用能力を育むためには、デジタルの特性を理解し、情報技術を駆使して探究の質を高める情報活用能力とともに、デジタル空間と実空間を往還するための学習環境のデザインとリテラシーの育成が求められるのではないだろうか。

 

教育家庭新聞 教育マルチメディア 2026年1月1日号掲載

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