1月15日、千葉県内の先進事例を共有するため「EduNEXTちば~つながる学びの架け橋~見て、聞いて、学び合う。ちばの教育ICTのいまと未来」が開催され、校務DXや学習eポータル、ICT支援員の活用などをはじめとする実践が報告された。冒頭では千葉県教育委員会ICT教育推進室の生田勲室長がこの日の報告について説明した。
生田 勲 千葉県教育庁教育振興部 ICT教育推進室室長

ネットワークがつながりにくい学校に4つの設定変更を提案
DXとは、これまでの方法が劇的に変わることである。レコードやカセットがCDやMDになるのは「デジタル化」。視聴履歴からAIがお勧めをリストアップし、感想をリアルタイムでシェアするなど「生活の質や方法の変革」がDXであると考えている。
教育DX=教育の質や方法の変革は、第4期千葉県学校教育振興推進計画に盛り込まれている。教育DXを決定づけるものがデータ連携であると考えて進めている。
千葉県ではGIGA端末の共同調達を行い、うち36市町村がChromebookを調達。また、県立学校約9万人の生徒にはMicrosoftA5のアカウントを配布しており端末はBYODによる整備でWindowsPCが多いようだ。情報端末の更新は教育DX推進のきっかけになる。デジタル教科書も学習者中心の学びを拡張するために活用するという点を意識する必要があるだろう。
生成AI活用については、NoebookLMの使い勝手が良いと感じている。教科書本文を入力するとマインドマップを生成したり、選択式・記述式の問題や要約、解説を生成したりできる。テーマとプロットを示すと実験動画などの学習動画も生成できる(無料版では10秒程度)。
学習eポータルについてはL-Gateを県立学校すべてに導入済。Microsoft CopilotとCanva、Adobe Fireflyを活用できるようにしている。
文科省の示す当面の推奨帯域を参考に整備しており、つながりにくい学校については設定変更など4つの処方によりチューニングを進めた。2026年度からはつながりやすい環境になる。
また、文部科学省のデジタル活用推進事業債を利用して電子黒板の整備を進める。まずは県立学校及び特別支援学校各2校で検証しており、全県に広げる。なお市原市については市内全小中学校の普通教室に整備済である。
丸山 慧 柏市教育委員会 学校教育部指導課
教育DXはデータ連携により起こる可能性が高まる。柏市(小学校42校・中学校21校)では学習eポータル「L-Gate」により校務支援システムの名簿を連携したことにより生じたさまざまな効果について報告した。
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校務支援システムと学習eポータルの名簿を連携
かつてはそれぞれの学習アプリや連絡システム等のアカウントについて、学校から提出された名簿をもとに教育委員会が整理してアカウントを登録する必要があり、学校が利用を開始するまでに時間を要していた。
L-Gate導入後は、校務支援システムに入力された最新の学校名簿が各アプリと名簿連携できるようになり、転入生や進級処理、苗字変更、クラス替えの場合も翌日には各種アプリをシングルサインオン(SSO)で利用できる。2024年度は転入生と新入生合わせて約760人の登録が必要であったがすぐに名簿連携するため、始業式から各アプリの利用が可能だ。始業式までは「クラス表示オフ」設定ができるため、始業式前にログインしてもクラスがわかるということはない。
市内及び市外転入も自動で処理。翌日には反映される。
教育委員会内の他課との連携もスムーズになった。教育委員会に届いた国や県からの通知や資料は「ライブラリ」に格納し、各校には校務支援システムの「お知らせ機能」で通知している。
児童生徒課所属のSSWと各校の担任や管理職は校務支援システム上の「気付き機能」で情報を共有。過去記録も参照しやすくなった。
学校給食課では校務支援システムにより給食費の自動引き落としの確認が迅速になった。名簿と出席日数を連携して食数を自動で計算して自動引き落としを行っている。未納についても学校給食課が連絡して徴収している。
三平大輔 君津市立小糸小学校教頭
学習eポータル「L-Gate」と「MEXCBT」活用について、2024年度まで在籍していた君津市立清和小学校の取組を主に報告した。
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児童はデジタルドリルに意欲的に取り組んでいたものの、成果について疑問に感じることもあった。そこで2021年度から5・6年生を中心にMEXCBT活用に着手。朝学習や家庭学習、授業での適用問題や復習として初めて取り組んだのが「ちばっ子チャレンジ100」だ。MEXCBTには全国学力学習状況調査をはじめ、自治体による学力調査やPISA、漢字・数学・英語検定、中卒・高卒認定試験、情報関係などさまざまな問題が搭載されており、子供も興味をもった。当時は実証用ポータルであったこともあり、システムの不備について見つけることに興味をもつ児童もいた。
実証用eポータルからL-Gateに変更した2023年度からは毎日の記録を開始。児童とともに独自問題の作成も始めた。動画や音声を用いたテストも作成でき、テスト結果は各自で確認できるなど、既存のデジタルドリルとは異なる効果やメリットを感じている。3・4年生の活用も始めた。
MEXCBTを全国学力・学習状況調査時に利用するのみの自治体も多いようだが、MEXCBTを日常使いすることで文字入力や端末操作、マイクの使用などに慣れ、様々なCBTに対応できるようになると考えて取り組んでいる。
児童の実態に合わせた独自問題作成機能も役立っている。
橋本一哉 印西市教育センター指導主事
3年前まで小学校教員を務め、現在はGIGAスクール関連を担当している橋本氏は「印西市のICT活用率が平均よりも高い理由は、ICT支援員にある」と話した。
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ICT支援員による授業支援に対する教員の満足度は高い
印西市(小学校18校・中学校9校)の子供の人口増加率は全国3位で2028年度まで増加が見込まれている。GIGA端末はChromebookだったが第2期はiPadを整備。2026年4月から活用する。
本市のICT支援員は4・5校に1人と国の目標値(学校のICT環境整備3か年計画)を若干下回るものの、本市のICT活用率は週3回が小中学校ともに100%。協働的な場面での活用は小学校55.5%、中学校44.4%と平均よりも高い。その理由はICT支援員の力にあると考えている。
本市のICT支援員は、授業改善の伴走者である。対話力を重視しており、授業改善の視点からサポート内容をカスタマイズして提供。ICT支援員の授業サポートについて教員の満足度も高い。教職員の「困った」を迅速に解決する仕組みとするため教育委員会に常駐している支援員が司令塔として機能しており、教職員が困った際のレスポンスも速い。研修も、夏季休業中に相談形式の個別研修を行っており好評だ。そのため教員も安心して新しいことに挑戦することができる。
印西市教職員支援サイトには授業資料や実践事例を格納。なお本サイトは次年度、改修を予定している。
岡松英雄 千葉県総合教育センター 主席研究指導主事
岡松氏は2025年4月から総合教育センター主席研究指導主事として教員研修と新たな学びの空間をテーマに報告した。
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数年先の教室環境を体験できる設備を教員センターに備えた
教員の力の向上は、2025年3月に新しくなった千葉県教育振興基本計画の3つの柱の一つであり、最も大きな柱である。
千葉県の教育ICT改革という特名を受けてアメリカを視察。シアトルでは1人1台端末は当たり前であり、保護者の要望により幼稚園から整備されていた。そこで数年先の教室空間を教員が体験できるように総合教育センターの設備を整えた。eスポーツ対応のディスプレイやチームプレイができる空間、映像配信やVR体験ができる環境とした。
研修観の転換も図っている。質の向上に役立つふり返りのためには履歴の管理が重要であると考え、研修履歴システムも整備。また、教員基礎コースを高等学校から設けている。次年度の研修も現在準備中だ。生成AI研修もレベル別に設置。セキュリティやデジタルシチズンシップなど、日々アップデートが必要な内容を網羅している。学校派遣にも対応するので声掛けしてほしい。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2026年2月16日号掲載