津山工業高等専門学校は総合理工学科を設置し、先進科学系、機械システム系、電気電子システム系、情報システム系の4系をもつ。2016年度に、それまでの機械、電気電子、電子制御、情報工学の4学科に、生物・化学を含む基礎科学分野を加えて総合理工学科へと再編・統合。創設以降、専門分野を超えた分野横断的な融合力を育成してきた。津山高専によれば、全国の高専で理工学が学べるのは同校のみ。
同校が展開している分野横断的教育のなかから「全系横断演習」について紹介する。
全系横断演習は3、4年生の全学生が、教員から提示されたテーマ、あるいは自ら設定したテーマに、専門分野の異なる学生と数人のチームを組んで取り組む。学生は自分の専門性を活かしながら、他の専門技術を持ったメンバーとコミュニケーションを取りながら、解決に向けて創意工夫を行う。エンジニアリングデザイン能力やチームワーク力を身につけることが狙いだ。「本校の全系横断演習は、高専の実践的な教育を活かした演習型授業です。この演習では、すでに習得している技術・知識をさらに深め、また専門分野外の技術・知識を新たに習得できます」(総合理工学科薮木登教授)
全系横断演習のテーマは多岐にわたる。25年度は合計23のテーマが設定されている。
●人文・社会・スポーツ科学系(国語・社会・英語・体育など)・運動・スポーツに関する実践的研究・人間と社会に関する様々な問題、など5テーマ
●先進科学系・化学実験教室の企画・開発・実施・環境が生命現象に与える影響、など5テーマ
●機械システム系・発想力で勝負する!3DCAD・3Dプリンターを使ったものづくり・エコチャレンジカーを作ろう、など4テーマ
●電気電子システム系・オリジナルのカラクリ装置の製作・オーディオシステムに挑戦、など4テーマ
●情報システム系・レゴを使って校外ロボコンに挑戦・シルバーeスポーツによる地域支援活動、など5テーマ

レゴを使って校外ロボコンに挑戦
全系横断演習では、どのような教育がなされているのか。
例えば機械システム系の演習「エコチャレンジカーを作ろう」では「風上に向かって走るエコカーを作ろう」と「エコランカーを作ろう」の2コースを設置している。

エコチャレンジカーを作ろう
●風上に向かって走るエコカーを作ろうコース
3年生でクリアする第1次課題は、風上に向かって走行するウィンドカーを設計・製作し、製作したウィンドカーによるコンテストを行う。
4年生前期でクリアする第2次課題は、風上に向かって規定距離を走行後、スタートラインまで逆走して戻るウィンドカーを設計・製作し、コンテストを行う。第1次・第2次課題終了時に、設計書、CAD図面、作業日誌、取組概要の作成・整理・まとめを行う。
●エコランカーを作ろうコース
エコランカーを製作し、毎年6月上旬に鈴鹿サーキットで開催されるHondaエコマイレッジチャレンジ鈴鹿大会、および毎年9月下旬~10月上旬にモビリティリゾートもてぎで開催されるHondaエコマイレッジチャレンジ全国大会へ出場する予定だ。
両コースとも、3年生後期でポスター発表会、4年生前期で最終報告会を行っている。
16年度の改組によって、生物・化学が学べる先進科学系が誕生したことにより女子学生の割合が増加傾向にあるという。「最近の学生は、技術の説明のみにとどまらず、多角的なコミュニケーションが取れる学生が増えてきています」(広報委員長)
26年度からは高度情報専門人材育成プロジェクトをスタート。高度な情報技術が活用できる情報人材育成プログラムと、専門を深く学ぶエキスパートプログラムから構成され、2年生から学ぶ。
情報系分野の最先端技術を扱う企業や大学の講師による遠隔授業も導入する予定だ。技術分野横断的な融合力に加え、データサイエンス、AI、DXなどの情報技術を活用しながら、イノベーションを推進できる技術者の養成を目指す。
(蓬田修一)
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2026年2月16日号掲載