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教育ICT

1人1台PC時代のデジタル教科書・教材活用~東北大学大学院・堀田龍也教授(デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議 座長)

2020年10月5日
東北大学大学院 堀田龍也教授 デジタル教科書の今後の在 り方等に関する検討会議座長

東北大学大学院 堀田龍也教授 デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議座長

文部科学省の8月末時点の調査速報値によると、今年度中に99・6%の自治体が1人1台PC配備を完了する見込みだ。新学習指導要領を踏まえ、学習者用デジタル教科書の活用を制度化する「学校教育法等の一部を改正する法令」も施行され、学習者用デジタル教科書の発行数が増えている。文部科学省「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」では、2020年度からデジタル教科書の導入拡大が始まると共に、次の改訂にあたる2024年度に、学習者用デジタル教科書の本格導入を想定している。1人1台PC時代のデジタル教科書・教材はどのような役割を担っていくのか。「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」(以下、検討会議)で座長を務めている堀田龍也教授(東北大学大学院情報科学研究科)に聞いた。

デジタル教科書・教材はこれからの学校のデフォルト

大きな社会の変わり目が来ており、変革後の社会に生きる子供を育てている、という視点が求められています。

GIGAスクール構想を始めとした環境整備が進み、これまでとは異なる教育環境が整備されており、現在中堅以下の教員が現役のうちに、間違いなく学習者用デジタル教科書の活用が、デフォルトになっていくでしょう。

整備を進め、活用していく中で「ICTで学力が上がるのか」「ICTを使わなくても学べる」という議論は必ずどこかで起こるようです。

しかし、いまや日常的にスマートフォンを活用して予約をしたり、わからないことを調べたり、地図で行先を確認したり、チケットを購入しています。

これらもすべて「ICTでなくてもできる」ことですが、ICTを使うことで確実にスピードアップし、便利になり、楽になり、情報量も増えています。ICTを使って対応できない人は便利な仕組みを利用できない時代であるということを認めた上での議論が必要です。

30分後の天気が地域ごとにわかるのは、ビッグデータの収集と分析が迅速かつ的確になったからです。

スマートフォンは位置情報を提供してそれに適合した情報を提示しているだけです。クラウドに接続していない端末は意味がないということです。

クラウドで提供されるサービスや大量の情報をどう現実に活かしていくかが求められています。

学習者用デジタル教科書は便利な機能の集大成

デジタル教科書・教材も同様で、少し楽に、少しわかりやすくなる積み重ねの1つの形です。

さらに、利便性を提供することにどまらず、クラウド接続を前提とすることで、1人1台PC時代のデジタル教科書・教材の可能性がさらに広がっていきます。

学習者デジタル教科書・教材から学習データの分析が拡がる

デジタル教科書は、拡大や白黒反転、音声読み上げ、リフロー等の便利な機能を提供することができます。特別支援教育の子供だけではなく、多くの子供がこれらの機能を活用して、自分に読みやすいように、紙面の見え方を変更していることが報告されています。

今後は、誰がどんな書き込みをしているのか、どのページをどれくらい見ているのか、どんな機能を主に使っているのかをデータとして収集し、学びに活かす分析をしていく仕掛けの1つになることが予想されます。

スタディログの分析はカリキュラムの見直しにもつながります。国では、学習指導要領をコード化して、教科書や教材、テストのデータと接続し、データを収集・分析できる仕組み作りの検討を始めています。国としてどう分析していくのかが問われることになります。同時に学力テストのCBT化も準備が進んでいます。試行的に次年度は一部の学校で行う予定です。

子供が主役で学ぶためのICT

今回の学習指導要領はもともと、11台のPC活用を前提として作られており、11PC配備が急に起こったわけではありません。

デジタル教科書を始めとするICTは、これまで、教員が教えるために使うことが多く想定されていました。しかし新学習指導要領は「教員が教える」ことを中心に据えておらず、授業の主役は「子供」にあります。自分が何をすべきかを理解して学びに向かう力を育むこと、教員はそれを伴走することが求められています。指導者用デジタル教科書を中心とした授業から、学習者用デジタル教科書・教材を中心とした学びに変わっていくことになる、ということです。

環境整備の後は情報活用能力の育成

ICT環境整備のゴールと、各教科で効果的に活用することには、大きな隔たりがあります。ICTを整備しても学力が上がらない、という議論もどこかで起こるでしょう。学力観そのものも変わります。

これを埋めるものが情報活用能力の育成です。

実感を伴った理解を前提に、レポートをまとめ、皆の考えを一覧で見て確認し、刺激を受けてさらに深く考え、自分の考えをブラッシュアップしたり自分なりに要約したり分類したり、分析することを日常的に行うことで情報活用能力を鍛えていくこと。大人が知っていることを理解して覚える学習ではなく、情報をどう扱うかを大事にするという学習です。そのときの大前提が、PCがクラウドにつながっていることです。これがなければ成果は出ないでしょう。

教員の役割は、教えることではなく、子供が自分で判断できているのかどうかを判断し、できない子供をフォローすることとなります。学習者用デジタル教科書も、見通しを持って自分の学びを自ら組み立てていく自己調整学習や協働的に学ぶためのスキル育成を視野にした活用が求められています。

各発行者で異なるビューア

前年度発行された小学校デジタル教科書同様、中学校デジタル教科書のビューアは各社様々です。検討会議では、異なるビューアを使っている場合でも、児童生徒や教員が使用しやすいよう標準的な機能や仕様等が必要であるという意見がある一方で、教科特性に対応したり、各教科書発行者が研究して開発してきた現行のビューアの良さを生かしたりできるよう、インターフェースを統一する方法は慎重に検討するべきという意見もあります。今後はコンテンツとビューアを切り離し、ビューアも教育委員会や学校ごとに選択できるような仕様にする可能性も模索されています。

デジタル教材との連携、アクセシビリティの課題、標準的な機能等など、デジタル教科書の標準化については、技術の発展も踏まえつつ専門的に検討し、ガイドライン等を取りまとめることになります。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年10月5日号掲載

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